丸岡の街に入っても、
城らしき建物が見えない。
私はそれほど「城」が好きな訳ではないが、
見かければ「おっ」と思うし、
「ちょっと寄っていこうかな」
程度には思う。
今まで8号線を何度も走っているにも関わらず、
立ち寄ったことがなかったのは、
目立つ城ではないのかもしれない。
看板に従って住宅街に入ったが、
何処にあるのかさっぱりわからない。
そもそも私は地図すらもっていない。
しばしウロウロしていると、
突如として城が現れた。
300円を支払って天守閣へ。
観光客も多かったが、
課外学習の多くの小学生がいた。
みんな「おはようございます」とあいさつしてくれる。
私もそれなりに笑顔を作り、
「おはようございます」と、
多分100回くらいは言った。
さて、予想外に丸岡城が近かったこともあるが、
この先はまったくもって未定である。
何か見るところはないかと思い、
ぶらついていると役場があったので入ってみた。
窓口の女性にこのあたりの見どころを訪ねてみる。
たくさんパンフレットを出して、
いろいろと丁寧に教えてくれる。
「竹田もいいですよ」
彼女は言う。
竹田、にはピンと来た。
「すごい山奥のイメージがあるンですが」
私が聞くと、
「いや、この道通ると10分か15分くらいですね」
「自転車なんですけど行けますかね」
私が聞くと彼女は「えっ」と絶句した。
「しばらくお待ち下さい」彼女は奥へ。
すると30代なかばの男性が現れた。
うまく言えないが女性の好感度が高そうな感じである。
要するにイケメンな訳である。
「行けなくは、ないですよ。ずっと登りですが」
にこやかに彼は言った。
「ママチャリっていうか、普通の折りたたみの自転車なんですが」
「私は行ったことがありますよ。高校生の時ですが」
彼は笑った。
目の前のイケメンに対する
無意味な対抗心みたいなものがあった。
「なら行ってみます」
私は礼をいい、役場を後にした。