北陸徘徊人

福井・石川・富山を中心にゆるーい旅を満喫中

越前大仏に自転車で

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相方が「おなかぷにゅぷにゅしてきたね」などと言う。

中年の領域に差し掛かれば腹は出るものだ、

そう割り切っていたものの、

言われればやはり気になってしまう。

日頃の不摂生と運動不足を反省し、

自転車を買うことにした。

 

大和田に最近できた「サイクルベースあさひ」へ。

最初は「ママチャリ」を買うつもりでいた。

しかし、店内を一周すると、

やけに目につく水色の折りたたみ自転車が。

 

私にはその自転車が

「僕を買ってください」と言っているように感じた。

 

試乗させてもらう。

自転車なんて実に久しぶり。

店員のお姉さんに「よくお似合いですよ」などとおだてられ、

結局私はその自転車を買った。

 

自転車を買えば無性に出かけたくなるのが人間の性。

最初は市内をぶらつくつもりであったが、

どうせなら行ったことがないところに行きたい。

そんな訳で勝山大仏を目指すことにした。 

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福井市内から片道2時間半ほどかけて到着。

結論から言えば普通の自転車で勝山は遠い(笑)

電車か車の利用をおすすめする。

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門前街には誰一人なかった。

 

500円支払い中へ。

すべての建物が巨大すぎてただただ圧倒される。

そして広大な敷地には誰一人いない。

いよいよ大仏殿の中へ。

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私は越前大仏を見上げた。

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この越前大仏を建立したのは多田清さんという方である。

1905年に大野郡荒土村(現在の勝山市)に生まれる。

しかし家業の造り酒屋が衰退し3歳の時に大阪に移住。

裸一貫で関西トップのタクシー会社を築きあげた。

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1965年、彼は「人生借金返済論」を発表する。

 

「私が今日あるのは、あらゆる人たちに有形無形に迷惑をかけ

 借金をしてきたからだ。残された人生で ”無形の借金" を返済して

 しまわなければ私の人間のしての価値はないのではないか」

 

彼は戦前から多額の寄付活動を行ってきていた。

側近曰く「一千億円は超す」とのこと。

「人生借金返済論」を公にした彼が

故郷、勝山に対する郷土愛の象徴として、

私財380億円を投入して建立したのが

この越前大仏だ。

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その高さは17メートル。

奈良・東大寺の大仏を上回り、

建物の中に鎮座する大仏としては日本一の大きさを誇る。

 

一個人が、私財を投入して、

これほどのものを建立できるのか。

私は息を飲み、しばらくその場から動けずにいた。

震えていた。

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開眼落慶が行われたのは昭和62年。

私は北陸で暮らし始めて20年になり、

有名な観光地はそれなりに訪れていた。

しかし縁がなかったというか、

避けていたのがこの「越前大仏」だ。

 

理由は参拝料にあった。

建立当初の拝観料は何と「3000円」であった。

そのため参詣者数は当初から伸びなかったらしい。

周囲は値下げするよう打診したが、

多田氏は精魂込めて作った大仏だから、と

応じなかったという。

 

拝観料が値下げされたのは彼の死後だ。

2500円、1000円となり現在は

 

500円。

 

その昔、

良くも悪くも一時期マスコミが「越前大仏」を

取り上げていた頃もあった。

どういう訳か私は「金持ちの道楽」と

思い込んでいた。

拝観料が高いと思っていたのも、

その頃のイメージが強すぎるからだ。

 

私は大いに後悔していた。

越前大仏は

「金持ちの道楽」などではなかった。

生まれ故郷を愛した一人の男の、

夢の象徴だったのだ。

 

もっと早く来るべきであった。

何度も福井を訪れていた人間として、

今現在暮らしている人間として、

いや、日本人として。

 

値下げしたのは知っていた。

だが1000円くらいだろうと思い込んでいた。

今回行ってみようと思って調べて、

はじめて500円まで下がっていたことを知った。

当初の6分の1。

 

比較しても仕方ないが、

永平寺の拝観料と同額である。

東尋坊タワーの入場料と同額である。

 

にもかかわらず、

もはや何処の旅行会社も見向きもしない。

旅人すら、訪れない。

一度すりこまれた「高い」というイメージは

そう簡単には覆らないだろう。

 

平日ということもある。

しかし、

私は2時間近くいた。

にもかかわらず

誰一人現れることはなかった。

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大仏殿にも、

五重塔にも、

門前街にも。

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大仏様は参詣者が少ないことを気にすることもなく、

その場に鎮座している。

「いいんだよ、静かで」

そう言っているようにも感じる。

 

ただ、大仏様は無言でこう語りかける。

「もし貴方が巨額の富を得たなら、何をする?」

 

 

越前大仏を独り占めした私は

すっかり満足してその場を後にした。

すると雲行きが怪しくなってきた。

 

同じ道を往復しても面白くないもので、

大野を経由して帰ることにした。

 

風が出てきて、

さっぱり前に進まない。

私は無心でペダルをこいだ。

 

さらに大野から福井など延々と下り坂だと思っていたが、

峠が存在したのが予想外だった。

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翌日、私は朝から立ち上がることすら出来なかった。

 

参考書籍:福井新聞社「20世紀ふくい群像」

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