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北陸徘徊人

福井・石川・富山を中心にゆるーい旅を満喫中

愛宕坂と足羽神社

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わたしがいつもお詣りしている黒龍神社と同じ、

足羽山に「愛宕坂」はあった。

石畳のゆるやかな坂が山上に向けて伸びている。

あの子、よく見つけたな、と感心する。

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数日前のことだ。

19時過ぎに帰ってくる夫が、

20時を過ぎても帰ってこなかった。

夕食はアジの干物、

一応作ってみたひじきの煮物、

水菜と油揚げ、ベーコンのサラダ、

「モト」を使った炊き込みご飯。

 

30代手前の夫婦の食卓としては

我ながら地味だとは思う。

でもわたしのメニューの考え方なんて、

スーパーで半値になっているかなっていないかだけだ。

その日はたまたまアジが半額だっただけ。

 

待っていると夫から電話があった。

「悪いけど、新入社員連れて行くから」

夫が誰か連れてくるなんて珍しいことだ。

でもよりによってこんな地味なメニューの時に、、、

わたしは夫の間の悪さを呪いつつ、

急遽鍋に湯を沸かし、冷凍餃子と野菜を放り込んだのだ。

 

夫はこの新入社員が配属するまで、

精神的に追い詰められていた。

ところが彼が来てから一転した。

夫曰く「あまりに変な奴すぎて支店長も怒れなくなった」らしい。

職場の雰囲気もよくなったらしいし、

夫がこの新入社員を可愛がっているのはよくわかった。

 

そんな彼が我が家にやってくるのだ。

さすがにアジの干物だけという訳にはいかない。

 

23歳、体育会系、

タカシ君はまさにそんな言葉がピッタリ来る子だった。

彼はよく食べ、よく笑い、よく飲んだ。

 

冷凍しておくつもりで5合炊いた炊き込みご飯はカラになり、

普段は毎日私だけが1本だけ飲むビールは

2人で10本以上、ついでに隠していたワインもあけた。

わたしは久しぶりに楽しい時間を過ごした。

酒を飲まない夫は呆然としていたが。

 

「休みの日は何してんの?」

 

わたしはタカシ君に聞いた。

「俺、まだ車持ってないンでこの辺うろうろしてますよ。

 あとは映画見に行くか、風呂行くか」

「じゃ、この辺でおすすめの所ある?」

「そおっすねー」

 

10秒ほど間を置いて彼は言った。

「ここからちょっと行った先にね、

 アタゴ坂っていう石畳の坂道があるンすよ。

 途中に展望台があって、

 まあ眺めもいいですし、その先には神社もあるし、

 たまに行ってボーッとしてます」

そう言うと白い歯を見せて笑った。 

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「本当においしかったです。ごちそうさまでした」

そう言い残して彼は帰っていった。

 

社交辞令なのはわかってる。

けど夫の口から「おいしかった」なんて言葉は

長らく聞いたことがない。 

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足羽神社に着いた。

静かな境内は凛とした空気が満ちていた。

立派なしだれ桜もある。

春は間違いなく見事だろう。

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わたしは満開のしだれ桜を想像した。

隣にいるのは夫ではなく、

何故かタカシ君だった。

 

何考えてるンだろ、わたし。

 

ま、想像くらいは自由だろう。

わたしは石畳の坂道を下った。

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