北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

東尋坊☓三国港駅

DSC03322_fotor.jpg

脱サラして店を始めようとしたのはいいけれど、

実際には開店することすらできず、

夜逃げ同然で軽ワゴンに荷物を積んで街を飛び出した。

 

断崖絶壁の国道で僕は事故を起こした。

自分が無傷でいるのが不思議なくらい、

乗っていた車はくしゃくしゃになっていた。

 

僕の手元には何もなくなった。

見事なまでに何もなくなった。

 

 

 

10月某日。

僕は電車を何本か乗り継いで、福井に来ていた。

JRの福井駅前に私鉄の駅舎がひっそりと建っている。

窓口で僕は「三国港まで1枚」と言った。

 

駅員の女性は「お客さん日帰り?」と聞いてくるもので、

思わず「はい」と答えてしまえば、

「今日は週末だから乗り放題のきっぷがあるよ。 三国港まで片道780円だけど800円で乗り放題」 などと言う。

 

片道でいい、とは言えなかった。

 

三国港へ向かう電車はわずか1両編成だった。

窓に背を向けて座るタイプの車両で、

出発までまだ時間があるのかまだ空いていた。

席に座った瞬間に僕は眠っていた。

 

気づけば電車は動いており、

稲刈りの終わった田んぼの中を コトコト走っていた。

僕は再び目を閉じた。

女性の係員に起こされて目をさますと、

電車は三国港に着いていた。

 

ホームに降り立つと磯の香りがした。

 

東尋坊行きのバスが来るまでは30分以上あった。

僕はぶらぶら歩くことにした。

 

先を急ぐ必要はない。

 

左手に日本海を眺めながら、

僕はいささか拍子抜けしていた。

空はどこまでも青く、 海も穏やかで静かだった。

思い描いていた日本海とはあまりに違っていた。

DSC03283.jpg

DSC03293.jpg

DSC03295.jpg

DSC03301.jpg

遊歩道では誰にも会わなかったが、

東尋坊は観光客で大賑わいだった。

ここは一大観光地なのだ。

僕は何だかおかしくなってきて先へ進んだ。

DSC03320.jpg

DSC03327.jpg

DSC03333.jpg

DSC03351.jpg

DSC03355.jpg

DSC03358.jpg

先にあった島を一周して帰ってきてもなお、

東尋坊は賑わっていた。

このあたりを歩いてわかったことは、

断崖絶壁の部分には必ず大勢の人がいて、

誰もいない断崖絶壁はないということか。

 

僕は途方に暮れた。

日が沈むのを待とうと思った。

ひどく腹が減っていた。 朝から何も食べていない。

 

一件の食堂に入り、

イカ焼きをつまみながらビールを飲んだ。

DSC03321.jpg

支払いをすますと、

僕の所持金は1000円を切った。

外に出ると、まもなく日が沈もうとしていた。

他の観光客と共に、 僕もじっと夕暮れを眺めていた。

DSC03401.jpg

ポケットをさぐると折れ曲がったフリーきっぷが出てきた。

そうか、福井までは帰れるンだな、

僕はぼんやり思った。

その先に、帰れる場所はあるのかな、 とも思った。

 

なければ、作ればいい。

 

僕は再び駅へと向かうことにした。

 

DSC03407.jpg DSC03405.jpg