読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

北陸徘徊人

福井・石川・富山を中心にゆるーい旅を満喫中

金沢・第七ギョーザの憂鬱

石川

DSC06121.jpg

能登からの帰路、

新湊で一杯引っ掛けてホテルで一泊、

そんな淡い願いが吹き飛んだ私は、

車を金沢市内に向けて走らせていた。

  

「腹減ったな」

私は言った。

助手席でツムツムをしていた相方が

「そやね」と言う。

 

これが富山だと、

中華なら何処、麺なら何処、居酒屋なら何処、

といくらでも思いつくが、

石川に関しては私は無知である。

 

相方はかつて金沢で暮らしていたが、

「うーん」と言ったきり先が続かない。

 

「金沢名物と言えば?」私は問うた。

「世界で2番めに美味しいメロンパンアイス、すしべん、八番らーめん、まいもん寿司、おでん、宇宙軒、ハントンライス、、、秋吉でも行く?」

「秋吉といえば福井やろ」

「そうや、ダイナナ行こうよダイナナ」

 

ダイナナか、、、

 

「行ったことあんの?」私は訊いた。

「ない。けどこの時間ならすいてるかもね」

 

金沢で「ダイナナ」と言えば「第七ギョーザ」をさすらしい。

山側環状という道路沿いにあり、

昔から有名であるし、一度は食べてみようと思っていたが、

何せ何時いってもそこそこ広い駐車場が一杯なのだ。

さらに1時間待ちなんてザラであるとのこと。

 

私は餃子と言えばかつて富山駅前にあった

餃子会館本店の餃子がこの世で一番ウマイ餃子であったと

未だ頑なに信じているし、

わざわざ金沢で並んでまで餃子を食べる必要があるのか、

そう考えてしまうと結局スルーしてしまう店であった。

 

「せっかくだし行こう」相方に押し切られるカタチで、

第七ギョーザに向かうことにした。

のと里山海道を白尾ICで流出し、

159号線のバイパスへ入る。

 

こちらも里山海道と同様、

信号のない高架道路が延々と続き、

福井・富山と石川の格差をしみじみ感じる(笑)

 

山側環状に入り、Uターンして第七ギョーザに到着。

20時前という時間に関わらず、

駐車場はごった返していた。

空きを見つけ、すかさず車を突っ込む。

 

 DSC06122.jpg

 

第七ギョーザの店の特徴として、

まずその建物が挙げられる。

私はこの店の前を通るたび、

3階建のマンションの1階が店になっていると思っていた。

 

ところがこの3階建の建物全てが店であるらしい。

店のリニューアルを報じた金沢経済新聞によると 

 敷地面積約800坪に3階建て。1階は35席のカウンター席、2階は28部屋の個室、3階は洋室(85人まで)と和室(35人)の2部屋の団体用個室を設ける。

とのこと。さらに個室は有料(1時間あたり300円〜)とある。

 

さて、入ってみる。

店の前に行列はない。

扉を開けるとベンチがあり、

10人程度座っている。

 

「何だ、すいてるではないか」と思いきや、

店員さんが「列の後ろへどうぞ」と手を差す。

振り返るとざっと30人、いやそれ以上並んでいる。

 

「どないする?」

私は相方に訊いた。

「ま、せっかくだし」

と列の一番後ろへ。

 

店内はコの字形のカウンターとなっており、

金沢経済新聞の数字を借りれば35人が黙々とギョーザを食している。

そして、この「コの字」に2辺の背後に行列が出来ていた。

これが何とも異様な光景なのだ。

 

「このカウンターで食事をするのは根性がいるな」

私はそんなことを思った。

常に背後に「腹をすかせた」人が待っている、

いや、「監視している」訳だ。

 

この状況でビールを飲みながら

餃子を食べるなどという行為は

気の弱い私には出来そうもない。

 

さらに違和感がある。

IMG_5763.jpg

静かなのだ。

 

単純にカウンターに35人座っていると仮定して、

背後に50人ほど並んでいて、

スタッフが10人いればこの場には100人近い人がいるはずだ。

 

にもかかわらず、静か。

 

繁盛店にありがちな「せわしなさ」が一切ない。

注文をとる店員の声、ギョーザの焼き上がる音、

待っている客が「こそこそ」程度に話をしている。

  

見ていると、

席についた客は慣れた様子で中のスタッフに注文し、

ラー油や醤油で好みのたれを作り、

餃子の到着を待っている。

 

カウンター内にはIH調理器が設置されており、

フライパンで次々とギョーザが焼き上げられていく。

ほぼみんなが「ホワイトギョーザ」なるものを注文しているようで、

直に提供されているようだ。

 

スマホでギョーザを撮っている方もいるが、ごく僅かだ。

真っ白なごはんの上にタレをたっぷりつけたギョーザをのせ、

一気にかきこんでいる方が多い。

そのうち「焼きギョーザ」や「蒸しギョーザ」が届く。

 

それらをみんなして黙々と食べる。

連れとわいわい賑やかに、なんて方は誰もいない。

老若男女、誰もが黙々と食べている。

 

食事を終えるとみんなそそくさと席をたつ。

食後の会話なんぞを楽しんでいたら

背後から「どけ」と言われそうである。

そんな訳で回転率も良いのではないか。

 

カウンターの外にいる店員が1人だけというのも珍しい。

 

彼は入ってきた客を列の最後尾に誘導し、

空いた席の皿をカウンター内のスタッフに渡し、

列の先頭の客を案内する。

一人だと大変なような気もするが、

彼は淡々とマイペースで仕事をこなしている。

 

ひとつでもテーブル席があればこうはいかない訳で、

全席カウンターというのは

何と素晴らしい仕組みなんだろうとただただ感心する。

 

さらに観察を続けていると、

中で空いた皿を受け取ったスタッフは皿を足元に置いている。

そこには回転寿司店のようなコンベアが設置されており、

勝手に洗い場に流れていくようである。

 

カウンター内もフロアも空き皿を持ってウロウロする必要もなく、

スタッフの動線も必要最小限ですんでいるのだ。

 

客が席をたった一、二分後にはもう次の客が座っている。

スタッフが足りず、

空いたテーブルにいつまでも空いた皿が残っている、

そんなことが一切ない。

 

スタッフもこれだけ大人数の客を相手しているにも関わらず、

切羽詰まった感じが一切ない。

 

ただ、

時折スピーカーから上階の注文らしき女性の声が聴こえるが、

その声には切羽詰まった感じがあった(笑)

 

50分ほど待ってようやく席につく。

注文したのはホワイトギョーザ、焼きギョーザ、水ギョーザ、蒸しギョーザ、

小ライスとノンアルコールビール

 

「ビールはギョーザとご一緒がよろしいですか?」

ささいなことだが、

この一言がない店はわんさとある。

「一緒でいいです」私は言った。

IMG_5764.jpg

さて、待ちに待った「ホワイトギョーザ」が登場。

店員が「どうぞ」とだけ言って置いていったので、

皿に載ったギョーザの個数を数え、

これが「ホワイトギョーザ」であると判明(笑)

 

それにしてもまったくもってギョーザとは程遠いビジュアルだ。

IMG_5765.jpg

一般的な餃子はフライパンに面した一面だけが

「カリッ」としているが、

ホワイトギョーザは全面が「カリッ」としている。

 

店員さんの動きから推測するに、

蒸し焼きにしたギョーザのフライパンに、

巨大なお玉で油を投入しているように見えた。

最後に油を切ってから皿に盛っている。

 

要するに「揚餃子」ということか。

その割には不思議と油っぽさがない。

 

そして皮が分厚い。

肉まんを素揚げしたらこんな感じかもしれない、

そんなことをぼんやり思う。

 

続けて「焼きギョーザ」が登場。

IMG_5767.jpg

似たようなタイミングで席についたカップルの男性が、

「何だかんだで焼きの方がウマイよな」

なんて言っている。

 

この2人は私達の後ろにずっと並んでいたカップルで、

さらに私達と同じく初来店であることは

待っている間の会話から伺えた。

 

たまたま一斉に4席空いたもので、

食べる時まで同じ順序で並んで座っている。

 

さて男性は「焼きギョーザ」の方が美味いと言った。

これに対して女性は

「いやー、ホワイトだって」と言っている。

 

この考えは私達も一致していた。

私は「焼きギョーザ」の方が美味いと思ったが、

相方は「ホワイトギョーザ」の方が美味いと言った。

 

正確に言えば、

「ホワイトギョーザ」も「まあ」美味かったが、

「焼きギョーザ」を食べて、

いやー、これぞ餃子だよなーとホッとしたのだ。

 

思うに、

男はいつまでたっても、

故郷の味やお袋の味に哀愁を抱く。

 

だから嫁が作った味噌汁ひとつにしても、

「あーおかんの方が美味かったよな」

と常に過去を比較対象として

美味い、マズイを判断しているのではないか。

 

「あの店のラーメンの方が美味かった。

 あの店の定食より美味い」などなど。

 

それに対し、女性は純粋にその食べ物を評価できる。

少なくとも、私が過去に接してきた女性はそうであった。

そのものが美味しいか、まずいか。

過去と比較しない。

 

冷静に考えたら、

男の友人なり同僚に勧められて行った店で

「ウマイ!」と思った店は一度もない。

それに対し、女性が勧めてくれた店は

かなりの高確率で「ウマイ」ような気がする。

 

さて「水ギョーザ」が来た。

本当に湯の中に「ギョーザ」が浮かんでいる。

IMG_5766.jpg

あっさりしているが何とも味気ない。

私も相方も無言になった。

 

三種類食べて、それなりにお腹が満たされた。

だがもう一品、蒸しギョーザがまだ来ていない。

 

私達の両隣の客は食事を終え、会計へ向かった。

しかし、注文したものが来ていない以上、

席を立つわけにはいかない。

 

まして、私は最後の蒸しギョーザのために

ノンアルコールビールをまだ半分程残した状態だ。

そして、目の前には空いた皿しかない。

 

私が仮に後ろに並んでいる客なら、

「何ちんたら飲んでンだよ、早く席空けろよ」

と思ってしまうシチュエーションである。

 

ま、たまたま私達が座ったのはコの字のカウンターで

唯一後ろに人が並ばない一辺であった。

これだけが救いだった。

 

店員さんは、

すべて出し終えた時点でカウンターの上に伝票を置いていっている。

 

こまめにチェックしているようであるから、

私達が何も食べるものがなく

カウンターでじっとしている様子を見て、

「あれ?」てな顔を浮かべ、奥の方へ。

 

私達の視線の先には蒸し器が見える。

中にはせいろが入っており、

頻繁に蒸しあがっているのだが、

いずれも奥のエレベーターで上の階に運ばれていく。

 

21時を過ぎても尚、

行列は伸びていく。

両隣の客には「ホワイトギョーザ」が届く。

だが私達の「蒸しギョーザ」はまだ来ない。

 

待ってる皆様、

私達は決してチンタラ食べている訳ではありません!

ただ、注文したものが来ないだけなんです!!!

 

やがて、

「お待たせしましたー」と蒸しギョーザが運ばれてきた。

 

すっかり神経をすり減らしていた私達は、

むさぼるようにしてたいらげた。

そして会計をすませ、

逃げるように店を後にした。

広告