住宅地はすぐに途切れ、 のどかな農村の光景が広がる。
アンダークロスしたあたりからにわかに山深くなった。
竹田川の水の音が心地よい。
登り一辺倒ではあるが勾配はさほどでもなく、
交通量も少なくありがたい。
ゆっくりゆっくりと高度を上げていく。
役場から40分ほどで竹田の集落に着いた。
どことなく懐かしくなるような山村だ。
少し走ると水車があった。
立派な売店もあるのに、 客は誰一人いない。
状況が一変するのは谷口屋さんに到着してからだ。
平日の11時すぎにも関わらず、
すでに駐車場には多くの車が止まっていた。
とりあえず恐ろしく腹が減っていたのでレストランへ。
幸いにもまだ席は空いており、 窓縁の席についた。
油揚げ半分と越前そばの定食を注文する。
食事を待つ間にも続々と車が入ってくる。
そう、 平日であれ何であれ、
人気スポットには人は集まるのだ。
私は先日行ったとある場所を思い出していた。
誰一人現れなかった越前大仏だ。
ここにいる1割でもいいから、
越前大仏に足を運んでもらえないのか。
切に願わずにはいられなかった。
しばし待って定食がやってきた。
おすすめの食べ方云々書いてあるが、
ショーユぶっかけてアツアツを頬張るのが一番旨い。
次回来たら油揚げ一枚とご飯の定食にする。
それだけは間違いない。
谷口屋を後に、福井方面へ向かった。
しばらく走り、大きな勘違いをしていたことに気づく。
私はすぐに下りに差し掛かると思っていた。
しかしいけどもいけども上り坂である。
それもかなりの急勾配だ。
いよいよ漕げなくなり、仕方なく押して歩いた。
やがてトンネルが見えてきた。
待望の下り坂だ。
トンネルを抜けると、 遠くに福井の町並みが一望できた。
こんなところまで登ってきたのかと思う。
「やるじゃん、俺」
誰もほめてくれないので、 自分で自分をほめてあげた。
一気に下り坂を駆け下りる。
九頭竜川まで出ると、帰ってきたなとホッとする。
しかしにわかに風が出てきた。
こげでもこげども先に進まない。
弱ったことにまた急激に腹が減り始めた。