敦賀駅の窓口で私は冬の関西一日パスなるきっぷを購入した。
JR西日本のいわゆるアーバンネットワークの普通列車が一日乗り放題、
特急券の追加購入で特急も利用できるというものだ。
しかしこの駅からは使わない。
私は駅でソバをすすり、
11時40分発の敦賀市コミュニティバス愛発線、杉箸行きを待った。
太川さん一行は近江今津〜小浜〜敦賀というルートをたどったが、
私が考えたのは旧北陸線の「柳ヶ瀬超え」である。
11時40分のバスで刀根に行けば12時06分着、
県境のトンネルを徒歩で抜けた先に雁ヶ谷なるバス停があり、
12時43分発の余呉バスに乗り継げると考えたのだ。
11時33分、早めにバスが横付けされた。
寒空の下で待つより有り難い。
11時40分、5人の乗客をのせて出発。
白銀町からは10人近く乗り込んできた。
お婆さんが「いっつもガラガラやねんけどなー」と驚いている。
さて、私は何となく柳ヶ瀬トンネルが何キロあるのかを調べるため、
スマホに「柳ヶ瀬トンネル」と入力したのである。
するとウィキペディアには「歩行者の通行禁止」などと書いてある。
なぬ、と思い他のサイトも見たがやはり駄目なようだ。
それどころか自転車の通行も駄目であるらしい。
どうするか、強行突破してやるか、とも思う。
しかし地元では「お化けトンネル」と呼ばれていることや、
蒸気機関車の噴煙で乗務員が死亡したなどという記述を見ると、
そんな気も失せた。自分がお化けになる訳にはいかない。
さて、こうなると予定変更だ。
探せば他のルートもあったのかもしれないが、
大阪での待ち合わせを考えると余計なことは出来ない。
なくなく私は降車ボタンを押した。
疋田というバス停で下車する。
琵琶湖の東へ向かう国道8号線と西へ向かう161号線の分岐点だ。
新疋田駅まで歩く。
大型トラックの往来が激しく生きた心地がしない。
前から大型カメラをぶら下げた若者が歩いてきたので脇にそれて進路をゆずる。
すると彼は「ありがとうございます、トワイライトですか?」などと言う。
何のこっちゃと思い「いいえ」とその場を離れたが、
よくよく考えればこのあたりは鉄道写真の名所なのだ。
書籍などでも北陸本線を走る列車が紹介されると、
この地で撮影されたものが数多くある。
私も鉄道ファンであるが「乗り鉄」であり、
写真も記録程度にしか撮らない。
そんな訳でこの地に降り立ったことは今までなかった。
新疋田駅に着いてさらに驚く。
駅舎内は鉄道ファンが撮った多くの写真で埋め尽くされていた。
ここは本当に「聖地」なのだと思う。
眺めているだけでこんな写真を撮れたら楽しいだろう、
とは思う。
しかし私はじっとしていることが出来ない。
カメラをもって待つなどということが不可能だ。
そんな訳でこんな写真を撮れる方々を尊敬している。
最近は色々問題のある方も多いようであるが(笑)
立派なカメラを構えた方が2人、ウロウロしている。
いったいあのレンズはいくらするのだろう、
そんなことも考える。
この日は平日であったが、
週末はファンで埋め尽くされているのかもしれない。
何本かの特急列車が轟音と共に通過していき、
その度にカメラが向けられる。
私は12時33分発の姫路行き新快速に乗り込んだ。