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北陸徘徊人

福井・石川・富山を中心にゆるーい旅を満喫中

国道45号線 3.11

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最初から無理があったのだ、と思う。

 

19歳、僕の手取額は10万円。

コミコミ300万円のクルマをローンで買った。

月の支払いは5万円。

住み込みだったし何とかなるかと思っていたが、

実際は何ともならなかった。


二年後、

泣く泣く友人にローン残高で買い取ってもらうことにした。

でも、クルマがないと富山などどうしようもないような土地柄。

四国に暮らす叔父が、手を差し伸べてくれた。

「クルマ買い替えるから、やるわ」

 

おんぼろのマークⅡ、国道を走ってる分には調子が良かったが、

高速に入った途端にハンドルが震え始めた。

こんな調子で岩手まで持つのか、と思う。

ま、何とかなるか、とも思う。

 

男四人を乗せたマーク北陸道を北に向かっていた。

目的地は岩手県にある民宿だ。

18歳の時に初めて訪れて、やたらめったら居心地が良くて、

二泊の予定が一週間も滞在してしまった。


そんな話をしたら「俺らも連れてけ」と、そんな話になった。

メンバーはみんな山の仲間。

リーダー格のフトシ、阪神大震災を乗り越えたシン、

ヤッチン、そして、僕。

 

富山から北陸道を北上、

新潟から国道を経由して福島へ。

東北道をさらに北上。

早朝にインターをおりて、

コンビニの駐車場で歯を磨いた記憶だけが、

やけに鮮明に残っていたりする。

 

岩手県の山中で三泊。

英気を養った僕らは、海岸線に出た。

最初に寄ったのは、宮古にある魚菜市場だ。

フツーの市場みたく魚屋さんが並んでいたりもするが、

それに混じって地元のおばちゃんたちがゴザを敷き、

自分たちで作った野菜なんかを売っていた。


フトシが「すんげえ安い」とイクラを大量に買った。

「今日の晩はこれと白いゴハンがあればいいな」

おばちゃんたちにもおまけしてもらいながら色々買い、

米も買い、ホームセンターに寄って鍋とカセットコンロも買った。

 

マークは国道45号線、三陸の海沿いを南に向かう。

ひっそりした印象の釜石でラーメンを食べ、

さらに南へ。


夕方、美しい松林が広がる海岸の駐車場にマークを入れた。

 

今、思えば陸前高田になるのだろう。

突然雨が降り出して、

公衆便所に避難して米を炊き、存分にイクラを載せた。


「うめー!!」


ヤッチンだけが酒を飲まなかったもので、

運転は彼にまかすことにして、

ぐでんぐでんに酔っぱらう。


ただ、この時ヤッチンは免許をとったばかりで、

その後みんなの酔いもふっとんだ筈だ。

 

寝床を探してマークはさらに南へ。

南気仙沼駅の裏にあったサウナに泊まることになり、

地元のおじさんたちの話を聞きながら更に飲んだ。

 

やたらと朝日がまぶしくて、

目を細めたら「志津川」という文字が見えた。

宮脇俊三さんのエッセイに、

気仙沼線の開通を祝う地元の喜びが描かれていたことを思い出す。

今の、南三陸町

 

マークは奥の松島へ。

少しは観光らしいことをしよう、

そんな話になって観光船に乗った。


この辺りで一泊していこうとなり、

観光案内所で民宿を紹介してもらった。

ヤッチンだけが、もう少し先に進みたげだった。

 

紹介してもらった民宿は、随分立派な日本家屋だった。


「あたりやな」

僕とフトシは顔を見合わせてにんまり笑ったが、

出て来た女将さんはそのまま僕らを家の裏へ連れていった。


海苔か何かの加工場があり、

その二階へ。

「すんません、急だったンでここしかあいてなくて」

女将さんが申し訳なさそうに言った。

「・・・」

 

この部屋で四人でもめ事が起こったりしたが、

今となっては憶えていない。

ただ牡蠣を中心とした夕食はボリューム満点で、

さっきまでもめてたことも忘れて四人で食べて飲みまくった。

 

朝食はその民宿が経営するスナックで出された。

何だか不思議な気分であったりしたが、

すんごいたくさんお土産ももらって宿を後にした。

宿を出てすぐに駅があった。

野蒜駅、のびる、と読む。

 

高速に乗って更に南へ。

東海村の原電を横目に、

夕方に鹿島に。

成田を経由して、

我孫子に暮らす仲間の家に着いた頃にはヘロヘロになっていたが、

すぐに飲みに出た記憶がある。

 

2011年3月11日。

僕はその時、富山にあるスキー場にいた。

平日で、客は皆無といっていい状況だった。

そこで私が何をしていたかと言えば、

リフトの改札である。

 

恐ろしくヒマだった。

同じ顔の面々しか来ないので、

もはや一日券の確認すらしていなかった。

 

監視をしていた同僚が「さぶー!」と入ってきた。

多分そんな瞬間だったと思う。

 

14時46分、富山も揺れた。

 

リフトの点検を終えて小屋に戻ると、

スマホでテレビを見ていた同僚が呆然としている。

そこには信じられない光景が映し出されていた。

 

スキー場のお客さんたちは

さきほど揺れたことなど忘れて

至ってフツーに

スキーやボードを楽しんでいる。

 

「ういーっす!」

若いボーダーたちがもはや顔パス状態で、

券も見せずに僕の前を通過していく。

 

スマホの画面では、

僕がかつて訪れた街が、

津波に飲まれていっていた。

 

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