北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

新快速の行き先「長浜」で「赤穂」のことを考えた

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つい先日まで雪が降ってたような気もするが、

気づけば季節は春を通り越し「初夏」を感じる今日この頃。

 

自分が根っから「汗かき」というのもあるが、

帰宅するとすぐシャワーとなってしまい、

どうも夏になると湯船が遠ざかる。

 

で、週末はどっかの風呂に行こう、

というのが我が家の暗黙のルールと化している。

 

さて、何処へ行くべか。

この行き先を決めるにあたり、

私はいくつかの案を相方に「プレゼン」する。

 

たいがい私がしゃべっていたところで、

相方はスマホでツムツム(最近は違うゲーム?)をやっており、

ほぼ反応はない。

気になったところがあると、

ちょっと顔があがってニンマリ笑ったりする。

 

今回は「あみーシャン大飯」と小浜散策、

「みかた温泉きららの湯」と三方五湖

などいくつかの案を出したかいずれも反応はない。

 

そのうち「いいよ好きなところ行けば」なんて言われてしまう。

どうも今回はお出かけに「乗り気」でない、そんな様子が見受けられた。

なら「極楽湯の朝風呂でも行って一人で乗りバスでもしてくるわ」

と言えばそれは気に食わないらしい。

 

私は再び地図を眺めた。

そして今まであまり出かけたことのない滋賀県の湖北地区に目が行った。

湖北で温泉を検索すると「マキノ白谷温泉」が出てきた。

サイトを見てもなかなか良さげな施設である。

 

そして湖北に行くなら以前から気になる存在であった

「長浜鉄道スクエア」にも足を伸ばしてみたい。

こんな話をするとようやく相方に反応があった。

どうも県外に行きたかったようだ。

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国道8号線を西へ。

武生から国道365号線に入った。

さらに国道476号線木の芽峠トンネルへ敦賀へ出て、

国道161号線でマキノへ抜けるというのが予定したコースだ。

 

まっすぐ8号線で敦賀に出ないのは、

単に武生〜敦賀の8号線が嫌いなだけです(汗)

 

今庄の街を抜けるまでは快適そのものだった。

ところがその先でいきなり渋滞に巻き込まれる。

何が起きたのかと思えば

この先のスキー場で「そば祭り」をやっているらしい。

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渋滞に巻き込まれてから

「この先そば祭りのため渋滞します」なんて看板も現れる。

それなら国道365号線の入り口に掲げてください(笑)

せめて今庄の手前にそんな看板があれば北陸線廃線跡でも経由したのに。

 

いらいらする私とは対照的に、

相方は心ゆくまでゲームを楽しんでいるようであった。

たかだか2キロ程度に40分以上要してしまい、ぐったりしてしまう。

 

今庄365スキー場を過ぎると渋滞から解き放たれた。

もし私がそば祭りを訪ねるなら、遠回りしても敦賀経由で行くだろう。

どうもあの交通整理はいろいろまずい(笑)

南越前町さん、再考の余地があると思われますぞ。

 

マキノ白谷温泉に到着。

小奇麗な建物で期待が高まる。

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入浴料金は500円。

脱衣場のロッカーは大型のもので使いやすい。

浴室も露天風呂も小ぶりだが、清潔感に溢れ実に気持ちいい。

駐車場に10台ほど車があったが、

半数は福井ナンバーだった。

福井の方にはお馴染みの温泉なのかな?

 

入浴を終えて長浜へ向かう。

本当なら長浜に着いてから何か食事でもしようと思っていたが、

先の渋滞のこともあり、妙に腹が減っていた。

道路沿いにはやたらと「ラーメン屋」が多い。

 

で、非常に客の入りが良さげな店があったので入ってみた。

 

私は醤油ラーメンを、相方はつけ麺を注文。

で、つけ麺はなかなかインパクトがあった。

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相方は悶絶してました(笑)

私が食した醤油ラーメンは「来来亭」に近い味だった。

よく考えれば「来来亭」も滋賀が本店か。

関西人が好む味なのかもしれない。

 

腹を満たして長浜の街へ。

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大変恥ずかしい話をすれば、

私は長浜に「城」が存在していたことを知らなかった。

(この建物は城を再現した歴史博物館です)

さらに「観光地」であることも知らなかった。

黒壁スクエアなど観光客で溢れかえっていた。

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2010年(平成22年)の日経新聞にこのような記事がある。

長浜市の集客を支えているのは、黒漆喰(しっくい)の和風建築で有名なガラス工房や世界のガラス芸術作品の展示館など複数の観光・商業施設が集まった「黒壁スクエア」と呼ばれる旧市街の一角だ。これらの施設の多くは市の三セク「黒壁」が運営する。 かつては人通りがほとんどない、といわれた長浜市中心部。だが、1980年代後半に「黒壁銀行」と呼ばれた旧百三十銀行支店の解体問題が浮上したのを機に、伝統的な建物を生かして街を観光地化する再生計画がスタートした。 市の三セク「黒壁」が運営する施設の来場者は着実に増加し、2006年度には233万人を記録。県のまとめでは黒壁のエリアは08年まで8年連続で県内観光地のトップだ。だが最近、その勢いに陰りがみえている。景気低迷も響き、09年度の「黒壁」施設の来場者数は180万人と3年連続で減少した。

その後は滋賀県の資料によると平成23年には265万人、平成25年は163万人とのこと。

一時期のブームは落ち着いた、とも読めるが、

そもそも私も相方もこんな美しい街並みが広がっていること「すら」知らなかった。

お店も多数あるが何処も「出しゃばって来ない」ので

「居心地」がいい。

さらに散策エリアが実にちょうどいい「広さ」だ。

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しばし街を散策した後、待望の長浜鉄道スクエアに。

私より少し年代が上のお父さんたちが、

みんないい表情になっていた。

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すっかり満喫し、

港近くの駐車場へ向かいながら

私はかなり「悔しい」気分でいた。

 

どうしてももうひとつの「街」を思い出してしまう。

 

今回、長浜には「また来よう」と思った。

相方も同様だった。

「今度は電車で来てビール飲みながら食べ歩きをしよう」

「今度は水陸両用車に乗ろう」

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「今度は竹生島も行こう」

「今度は1000円のパスを買おう」云々。

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長浜浪漫パスポート2015 

 

ところがもうひとつの街は、

観光客に「もう一度来よう」と思ってもらえるのだろうか。

 

隠すことでもないので先に述べますと、

私、北陸徘徊人の出身地は兵庫県赤穂市です。

 

兵庫県の西の端、すぐ隣は岡山県

南側は瀬戸内海、

三方を山に囲まれた人口5万人ほどの静かな街。

 

赤穂市長浜市には共通する点がある。

それは

共に関西を貫く新快速の「行き先」だということだ。

近くに神戸・大阪・京都の方がいるなら、

播州赤穂」や「長浜」を知ってるかと聞いてみてください。

恐らく「ああ、新快速の行き先の」みたいな反応があるかと思います。

行ったことはなくても関西人の頭に刷り込まれています(笑)

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さらに私は自己紹介をする時「赤穂の生まれです」と添えるのですが、

「あー、あの忠臣蔵の」と、ほぼ間違いなく言われますから

赤穂市はそこそこ知名度はあると思います。

市内には赤穂浪士ゆかりの神社や寺、城跡、巨大な海浜公園、

瀬戸内海を望む温泉なんかもあります。

 今はどうか知りませんが、

昔は「水道料金が日本一安い」街としてテレビで紹介されたこともあります。

 

交通は、

高速道路のインターはありますが

新幹線の駅はありません。 

市内を東西に貫くのは国道250号線ですが

岡山側にも姫路側にも峠があります。 

 

国道2号線とJRの山陽本線は市の北部をかすっています。

 

鉄道は赤穂線という路線が市内中心部を走ってます。

岡山方面は1時間に1本、

姫路方面は1時間に2本程度列車があります。

 

こんな田舎町ではありますが、

市民の自慢は「新快速」が乗り入れてくることです。

 

以前は朝・夕だけの乗り入れでしたが、

平成17年から日中も新快速電車が乗り入れてくるようになり、

格段に利便性が向上、

大阪までも1時間40分ほどで行けます。

  

そして、

日中も新快速が乗り入れてくるようになって、

目に見えて増えたのが「おばちゃん」のグループです。

赤穂へ「観光」しに来てくれているのです。

一応観光地として売りだしてますので。

 

ところが、おばちゃんたちは駅前に降り立つと

決まってこういいます。

「なーんもあらへんね」

この言葉を聞いたのは1回や2回ではない。

10回や20回でもない。

私がバスや迎えの車を待っていると、必ず聴こえてくる。

 

これは赤穂を訪れる大半の観光客が感じることだと思う。

 

大阪から直行列車が毎時乗り入れる駅前とは思えない。

それなりに名の知れた観光地であるにも関わらず、

華やかさは一切ない。

幾つかマンションが建ったがデザインに統一性がなく、

何もかもバラバラな印象しか受けない。

 

新快速の行き先である長浜と赤穂、

大阪からの所要時間は共に1時間40分程度。

 

街の規模は全く違うにせよ、

観光という面において

どうしてこんなに違うのかと暗澹たる気分になる。

 

一応赤穂市も城付近の町並みの雰囲気を整えたりしてはいる。

駅も恐ろしく立派になりました。

ところが何処もかしこも閑散としている。

で、私の出した結論は行政と市民の協力、気合いです(笑)

 

赤穂市は「忠臣蔵」というブランドに上にあぐらをかいて、

何もしてこなかった。

いや、正確には色々やったのだが

見事に的はずれなことばかりやってきた。

 

長浜は(私が知らなかっただけだが)それほどメインとなる

観光の目玉はもともとなかった。

だから行政と市民が一丸となり作り上げた。

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長浜は鉄道の路線図でみれば東海道本線から外れた「北陸本線」上に存在する。

 

東海道本線は直流、北陸本線は交流という電化方式の違いで、

両方の電源に対応した一部の車両しか乗り入れることができなかった。

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そのため、彦根草津といった県内の街へ出るにも、

県都の大津に出るにも当然京都・大阪に出るにも必ず「乗り換え」が必要だった。

せめてここが「直流」なら便利な新快速電車が乗り入れてくるのに、

市民の皆さんにとっては切なる願いであったといえる。

 

これを地元が費用を負担して交流電化だった米原〜長浜間を

直流化したのが平成3年のことだ。

私にはこれだけでも凄まじい地元の熱意と覚悟を感じる。

 

その結果、ベッドタウンとして発展しただけでなく、

「黒壁」を中心にした街づくりを進めて多くの観光客を

呼び寄せることに成功している。

これは行政と市民が一緒に盛り上げないとできないことだと思う。

では赤穂はどうか。

新快速の誘致は以前からしていたが、

「姫路まで来とるねんからちょっと赤穂まで伸ばして」程度だ。 

いろんな噂はありますが、何故かJRは叶えてくれた。

 

それに伴い日中の相生乗り換えもなくなり、

姫路へ出るのも大阪に出るのも格段に便利になった。

当然観光客も「増える」筈だった。

 

ところがこの新快速日中乗り入れの少し前、

赤穂市では「事件」が起きていた。

 

播州赤穂駅は平成12年に橋上化され、

プラット赤穂という駅ビルもできたのだが、

これらの建設・運営にまつわるゴタゴタです。 

 

地元の恥をさらすのは気がひけるが、

平成20年の神戸新聞の記事を紹介。

赤穂市第三セクター「赤穂駅周辺整備」の経営破たんで多額の損害を招いたとして、同社社長の豆田正明市長が、前任の北爪照夫前赤穂市長ら元役員二人に約四億八千万円の損害賠償を求めた裁判で、最高裁は十七日までに、北爪前市長らの上告を棄却した。約一億三千万円の賠償を命じた一審判決が確定した。一審判決は、同社が二〇〇〇年開業の商業施設を買い取る際、消費税の還付手続きを怠ったことについて「注意義務違反があった」などとした。これに対し、北爪前市長らは「事実誤認があり、取り消しを求めたい」と控訴、大阪高裁で棄却され、最高裁に上告した。 

駅周辺の開発をめぐり第三セクターが設立されたのですが、

これのやることがめちゃくちゃでして

オープン前からテナントが集まらず、

なら「内装の工事費はウチで持ちます」「光熱費も結構です」と

恐ろしいバラマキをやったんですね。

 

で市内唯一の映画館も併設して華々しくオープンしたものの

数年後には負債総額33億7000万円で経営破綻、、、、

そんな過去があるもので、

行政と市民の間には大きな溝が生まれた。

駅前を再開発してバラバラになったといえる(笑)

 

その後は全然まちづくりも進まない。

城の周辺をちょこっといじりましたが、

それで終了。

 

新快速が乗り入れるようになったけど、

市内の移動に車は欠かせないからみんなクルマ利用。

したがって年々市内を走るバス路線は衰退。

唯一まともに走っているのは

赤穂駅と観光地である赤穂御崎を結ぶ路線だけだ。

 

以前、私の実家と赤穂駅は1〜2時間に1本程度のバスで結ばれていたが、

いまや一日2往復だ。

私の母は車の運転が出来ないので

バスの大事な客なのだがが「いつも貸し切り」と笑っている。

 

ではクルマの移動は便利かと言えば

先述の通り市の両側に峠がある地形であり、

特に東側の「高取峠」など、

私が現在付き合いのある同級生のおよそ三分の二は

大なり小なりこの峠で事故を起こしている。

(あ、友達少ないんで)

 

で、この峠を下ってくる地点は道路の構造が悪く、

四六時中渋滞している。

不便云々より「劣悪」そんな言葉がぴったりなのだ。

 

てなもんで、

新快速なんていう便利な電車が乗り入れてきているのにも関わらず、

赤穂市の人口は着々と減っている、

関西では珍しい街だと思われる。

 

これから「街づくり」を考えている市町村の担当者は、

新幹線ができたら街が潤うなんて考えている方にも

一度「赤穂市」を訪ねてみることをオススメします。

せっかくなので全国の皆様にもご覧いただければ幸いです(笑)

 

ただ、食べ物はウマイです。

 

「赤穂のみかん」はめっさ甘いです。

私は地元を離れてから「みかん」を食べなくなりました。

「坂越の牡蠣」なんてサカナにうるさい富山の方に送っても大絶賛していただけます。

「かもめ屋」のステーキは(値段を考慮すると)日本一ウマイと思う。

あと、赤穂で「お好み焼き」を食べると大阪で食べるのがアホらしくなります。

 

うう、思い出しただけでよだれがでる。

久々に帰省でもするかな。

地元のことを考えていると駐車場に着いていた。

 

それにしても暑い一日で、

私はすっかり汗をかいていた。

 

「今度から散策してから風呂に行こう」

 

私は言った。

「普通はそうだよね」

相方は呆れたように言った。

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