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北陸徘徊人

福井・石川・富山を中心にゆるーい旅を満喫中

山陽本線苦行列車 〜JR秋の乗り放題パスの旅・その1〜

土曜日の早朝4時30分、

僕と相方は福井駅にいた。

10月の三連休の初日ということもあってか、

こんな時間に関わらず予想外に人がいる。

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駅前のコンビニで食料を調達し、

ホームへ上がるとちょうど2両編成の電車が入線してきた。

4時50分発の快速・敦賀行き。

福井駅で見る「快速」の表示が新鮮だ。

驚くことに、ほどなく席は埋まる。

海外にでも行くのか大きなキャリーケースを持った方々も多い。

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僕らの手元には「秋の乗り放題パス」なるきっぷがある。

全国のJR線の普通・快速列車、BRT、宮島フェリーが3日間乗り放題となるもので、

発売期間は平成27年9月19日〜10月16日、

利用期間は10月3日〜10月18日の連続する3日間で

大人1人あたり7710円。

 

4時50分、快速・敦賀行きは定刻に福井駅を出発した。

途中停車駅は鯖江・武生・南条・今庄のみ。

「昼より混んでる」と相方が笑う。

実際、武生から乗車した方々などほぼ立っていたのではないか。

 

とても夜明け前の北陸線の車内とは思えないが、

サンダーバード2号より京都や大阪に早く着けるのだから

それなりに利用価値はあるのだろう。

 

さて、僕らが何でこんな早朝の列車に乗っているか?

 

遡ること一週間前、

僕が仕事を終えて帰宅するなり相方が

「次の3連休、何処行く」なんて言い出した。

「何処行きたいンだよ」と問えば、

富士急ハイランド」と言う。

 

「やだよ」僕は言った。

「こんな連休に行っても待ち時間ばっかりやん」

「ならどっか行きたいとこあんの?」

相方は言った。

 

「何かさ、船とか乗ってゆっくりしたいな。バスで仙台行って、フェリーで名古屋行ってバスで帰って来るなんてどうよ」

僕は力説したが、

富士急を拒絶されてご立腹なのか、

相方はスマホでゲームを始めていた。

 

この時、テーブルの上にはとあるチラシがあった。

僕が福井駅から持ち帰ってきたもので

これが「秋の乗り放題パス」のものだ。

裏面には「JR西日本一日乗り放題きっぷ」の案内が印刷されている。

こちらはJR西日本エリアが一日乗り放題で3000円。

 

乗り放題は魅力だが、

青春18きっぷと同じで特急利用も不可となれば

その魅力は半減する。

 

スマホに夢中になっていたと思われた相方が

安芸の宮島に行きたい」なんて言い出した。

「一回も行ったことがないし」と続ける。

「はあ」と僕は言って地図を見せた。

「言っとくけど広島ってめっちゃ遠いンやで。宮島なんてほぼ山口や。金もかかるし時間もかかる」

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正直言って乗り気ではなかった。

相方は行ったことがなくても、

僕は添乗員をやっていた頃に何度か行っている。

 

サンダーバードに新幹線乗り継いでも4時間以上かかる」

僕はヤフー乗り継ぎ案内の画面を見せた。

「それに、片道1万5000円もする。往復3万円、これで1泊すれば・・・」

 

「でも、このきっぷだと行って帰っても6000円だよね」

相方はチラシを手に恐ろしいことを言い出した。

 

「あのさ、これだと特急も新幹線も乗れないぞ」

「それでもいい」

「半日電車に乗りっぱなしだぞ。行けば帰ってこないといけない。腰が痛くなって特急に乗れば乗車券も買わないといけない。指定席がある訳じゃないから延々と立ちっぱなしになる可能性だってある」

半ば脅しの意味も込めて僕は言った。

 

「宮島に行きたい」

相方はそう言い残して先に寝た。

 

参ったな、と正直に思う。

福井から宮島なんぞざっと550キロ。

福井から普通列車を乗り継いで行く、

そんなことを考えただけでゾッとした。

20代の若い頃なら青春18きっぷをフル活用してあっちゃこっちゃとでかけたが、

40代の今となってはせいぜい兵庫の実家に帰るくらいが限界だ。

 

しかし富士急を拒絶し、

宮島も拒絶すれば2人の関係に修復不可能な亀裂が入ることも考えられた。

僕は焼酎をチビリとやりつつ時刻表を開いた。

 

で、今に至る。

福井を4時50分に出る快速に乗れば、

とりあえず14時13分に宮島口駅に到着できるのだ。

その時間なら充分厳島神社の参拝もできるだろう。

 

5時21分に北陸トンネルに突入。

5時32分、定刻に快速電車は敦賀駅の6番線に到着した。

福井駅からの所要時間は42分。

日中も運転して欲しいな(笑)

 

向かい側の7番線には新快速電車の播州赤穂行きが待っている。

対面乗り換えができるのがありがたい。

5時35分、4両編成の新快速電車は敦賀駅を出発した。

少しずつ空が明るくなってきた。

 

長いトンネルを抜けて滋賀県へ。

近江塩津駅のある山間の集落はうっすら霧に覆われていた。

開いた扉から冷気が漂ってくる。

乗車している新快速電車は湖西線ではなく、

このまま北陸本線を南下する。

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虎姫を過ぎたあたりでようやく太陽が姿を見せる。

しかし伊吹山の背後は赤く染まっていた。

この後天候は崩れて行くということか。

6時1分、長浜を過ぎると車内は立ち客も出るほどになった。

 

米原駅の手前で2度ほど停車。

「前に8両連結します。連結の際には揺れますのでご注意ください」

扉が開いたのが6時28分。

予想外に下車する方が多く、車内はガランとなる。

 

僕は当初、ここで前の8両編成に移動するつもりでいた。

敦賀播州赤穂行きの新快速、なんていうのは名ばかりで、

敦賀駅からきた4両編成は姫路までしか行かない。

播州赤穂まで行くのは米原で連結した8両編成だけだ。

今回は姫路の先の相生で乗り継ぐつもりでいたから、

ここで移動しておけば後がラク。

 

しかし隣で口を開けて寝ている相方を起こす気力もなれず、

まあいいやとそのまま座っておくことにした。

隣に大垣発姫路行きの快速電車が入線。

6時32分、12両編成となった新快速・播州赤穂行きは米原駅を出発した。

空は薄曇り。

 

新快速電車は琵琶湖の東側を淡々と走る。

近江八幡草津あたりからはまとまった乗車もあり、

大津を過ぎれば「混雑している」といってもいい状況になった。

相方は起きたと思えばスマホでゲームをやっている。

7時30分、京都着。

 

8時27分、京阪神間で息苦しくなるほど混んでいた車内も

神戸を過ぎると余裕が出てきた。

通路を挟んだ隣には中年の男女が座っており、

ひとつの駅弁を2人で仲睦まじく食べている。

 

僕らはと言えば5時前にコンビニのおにぎりを食しただけだった。

だんだん腹が減ってくる。

 

9時3分、姫路着。

前の8両編成に移動する。

ホームの売店で何か買おうと思っていたが、

下り7・8番ホームの売店は3月末で閉店となっていたようだ。

「・・・」

 

竜野駅を出発すると相方を促し、

右側のドアの前で待機した。

次の相生で山陽本線の岡山行きに乗り継ぐ。

この時、8両編成の車内は立ち客もいる状況だった。

 

県境を超える区間はとんでもない短編成であることも考えられる。

「ダッシュするぞ」僕は言った。

相生駅到着のアナウンスが流れると一斉に乗客が席をたつ。

 

9時29分、相生着。

気合を入れてダッシュして向かいの車両に乗り込む。

出発まで少し時間があったのでホームで確認したら、

7両編成という豪華版だった。

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車内は転換クロスシートに改造されており、

快適といえば快適だが慌てて確保した席は

窓割りと合っておらず、枠が視界を遮る。

9時33分、定刻に相生駅を出発。

 

9時54分、トンネルを抜けて岡山県へ。

初めて乗った区間という訳ではないが、

妙に景色が新鮮だ。

僕は地元が赤穂なので、このあたりは基本的に赤穂線を経由する。

 

そして、腹が減った。

とにかく腹が減った。

 

これまでも青春18きっぷを使った普通列車の旅なんぞ、

それこそ何度もやっているが

ほぼ「一人旅」だった。

一人なら数分の待ち時間で駅そばをかきこむこともできるが、

相方がいる以上はそうもいかない。

 

空いた車内で駅弁を食べることに抵抗はないが、

混雑した車内ではためらいもある。

まして混んでいるか空いているかなど

乗ってみるまで分からない。

 

今回、旅の計画をたててみて「参ったな」と思ったのは、

朝飯を食べるのに「ちょうどいい」乗り継ぎがなかったことだ。

福井を4時50分に出発し、

敦賀に5時32分着、5時35分発で

相生に9時29分着、9時33分発。

 

あまりにも接続が良すぎる。

 

かといって姫路駅で「まねきのそば」でもすすれば、

兵庫と岡山間の県境を超える列車が少なすぎて後々の行程に支障をきたす。

普通列車の乗り継ぎである以上、

席を確保するためにもできるだけ「始発駅」から乗りたい。

 

僕は時刻表を開いた。

岡山以西は何だかんだで本数がある。

「岡山でおりて早めのお昼にしよう」

僕は言った。

「お腹すいた」

相方は言った。

 

10時39分、岡山着。

当初の予定では10時50分発に乗り継ぐつもりでいたが、

空腹には勝てなかった。

 

何か食べようと駅前に出た。

空はそんよりと厚い雲に覆われており、

今にも雨が降り出しそうだ。

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駅前の商店街を歩いていたら、

渋い食堂を見つけた。

相方は「ここに入るン?」といった顔をしたが、

「こういった店にハズレはない」と断言して中へ。

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11時前にも関わらず、

ビールを飲んでる客が数人。

何て素敵な光景なんだろ(笑)

僕はカツ丼を、相方は焼き飯を注文。

本当はビールも頼みたかったが時間がないのでパス(涙)

 

届いた濃い目のツユに長ネギたっぷりの卵とじ。

これぞカツ丼だよなーと一気にかきこむ。

 

岡山駅のコンビニで缶ビールを買って、

11時29分発の三原行きに乗り込む。

適度に席が埋まった電車は定刻に岡山駅を出発した。

それにしても岡山の電車、

いつの間にこんな黄色一色ばかりになったのか(涙)

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12時18分、並行する国道の標識で広島県に入ったことを確認。

「ついに広島県だ!」

嬉しくなって相方を見れば

先程までスマホをいじっていたはずなのに、

いつしか爆睡していたりする。

「・・・」

 

広島県に入ったとはいえ、

目的地の宮島まではまだ3時間近くかかる。

12時19分、大門着。

高校生たちがごっそり乗ってきて車内が賑やかになる。

 

スマホを見ている訳でなく、

友人との会話を楽しんでいる子たちが多い。

 

12時27分、福山着。

ごっそり客が入れ替わる。

 

尾道の街が近づくと車窓に瀬戸内海が広がった。

島々も近く、山陽本線の中でも好きな車窓のひとつだ。

尾道ってよく聞くけど何が有名なん」

いつしか起きていた相方が言った。

 

「ラーメン、しまなみ海道、千光寺、因島大林宣彦

僕は言った。

「誰それ」

相方は言った。

eiga.com

12時57分、電車は糸崎に着いた。

岡山から乗ってきた電車はこの先の三原行きであるが、

この駅で5分間停車し、

広島行きの電車が先発する。

 

車内にいた大多数が乗り継いだようで、

12時58分に広島行の電車は糸崎駅を出発した。

三原で呉線と別れると山陽本線の電車は山間へと入っていく。

相方は気づけば寝息をたてている。

 

岡山で腹は満たされていたものの、

手元のビールは既に空である。

景色は単調で何度かあくびが出る。

そしてぼんやり思う。

 

「タバコが吸いたい」

 

今の相方と一緒になってから、

めったなことではタバコは吸わなくなったけど、

時折猛烈にニコチンを欲する時がある。

それは1人で退屈な時だ。

 

この時がまさにそうだった。

隣の相方は爆睡中。

単調な景色。

空っぽの缶ビール。

 

吸いたい、吸いたい、吸いたい。

 

一度生じた欲求などそう簡単には消えない。

 

13時31分、電車は白市駅に着いた。

この電車は広島行きなもので、

宮島口までは行かない。

そんな訳で13時40分に白市駅を出る岩国行きに乗り継ぐことにしていた。

 

降りた向かいには岩国行きの電車が止まっていたが、

乗り継いだ客は皆無だった。

ボックスシートに荷物を置き、

「ちょいビールでも買ってくるわ」と僕は言った。

 

あー、すっげータバコ吸いたい!!

跨線橋を駆け上がる。

 

時刻表を見ると白市駅から先は広島の都市圏に入るようで、

本数も倍増している。

そんな訳でもっと街なかの駅を想像していたのだが、

山間の静かな小駅である。

 

駅に売店くらいあるかと思っていたが、

そんなものはなかった。

駅前にコンビニくらいあるかと思ったが、

そんなものはなかった。

 

結局ビールもタバコも買えぬまま、

僕は岩国行の電車に乗り込んだ。

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