北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

JR山陽本線・姫路駅 〜エロ坊主とモノレール廃線跡と展示室〜

たまには実家にでも帰るべかと

青春18きっぷを片手に

福井駅8時05分発、敦賀行きの普通電車に乗り込んだ土曜の朝。

 

これが便利というのか何というのか知らぬが、

時刻表の上では敦賀で一度乗り換えただけで

兵庫県の西端にある我が地元まで達することが出来る。

 

敦賀には定刻8時56分着。

ここで9時23分発の播州赤穂行きに乗り換える。
 

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湖西線に入った近江今津で8両を増結。

堂々12両編成になった新快速・播州赤穂行きは

10時12分に近江今津を出た。

 

すると強いブレーキがかかり急停止。

車掌のアナウンスが流れたが、

背後の無線がわめき声をあげており、

なかなか聞き取れない。

 

どうも前を走るサンダーバードで「異音」が発生したらしく、

安全点検を行っているとのこと。

その場で5分ほど停車して、

出発したがノロノロ運転が続く。

 

近江舞子を出てようやく本来の走りを取り戻し、

堅田出発の時点で遅れはちょうど15分となった。

ここでふと思った。

はて、山科から先はいったいどうなるのだろう。

 

新快速は日中15分間隔、片道あたり4本の運転となっているが、

それは山科〜姫路間に限られており、

滋賀県内は1本が湖西線から、

3本が東海道線草津方面からやってくる。

 

5分や10分の遅れならこの湖西線発の列車が遅れている「だけ」で

すみそうな気もするが

15分だとぴったり後続の新快速に被る訳で、

果たしてどのようなダイヤになるのか

非常に興味深いものがあった。

 

京都駅でのアナウンスを聞いていると、

「この後すぐに次の新快速が参ります。そちらもご利用ください」

なんて言っていたから東海道線側も全て遅れた模様。

出発表示を見れば乗車している新快速は15分遅れとあり、

他は全て8分遅れと出ている。

 

さらに、大阪駅を出発した時点で、

「この列車は行き先を変更して姫路行きとなります」

そんなアナウンスが流れた。

「・・・」

 

別に慌てて地元に帰る必要もないや、

そう考えることにして姫路で途中下車した。

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実家に帰るのも2年ぶりだから、

姫路駅で下車したのも2年ぶり。

再開発工事も一段落して駅周辺はすっかり綺麗になり、

正面に見える白鷺城はあまりにも白すぎて、

発泡スチロールに見えなくもない(すみません)

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僕は何となく姫路の街を歩き始めた。

 

真っ先に気づいたのは駐車料金の安さだ。

福井駅前で一日停めれば最低でも1000円はするが、

人口50万人の街の中心駅周辺にも関わらず、

一日500円などザラで400円なんてのもある。

 

僕が何処へ行っても駐車料金が高く感じるのは、

若い頃から姫路の駐車料金を見てきたからだと思う。

都市の規模にしてはかなり安いと思うがいかがなものか。

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人口5万人の街に生まれ育った人間にしてみれば、

人口50万人の姫路は昔から最も身近な大都会だった。

小学生の頃、親に連れられて姫路へ行くだけでワクワクした。

 

駅のホームでまねきの「えきそば」を食べながら、

「特急はまかぜ」や「急行みまさか」といった

ディーゼル列車を見ているだけで楽しかったし、

赤穂には当時1本しかなかった

新快速の117系が日常的に見れるのも嬉しかった。

 

駅前に出れば幅の広い通りがまっすぐ姫路城へと伸びていて、

両側にはビルがずらりと立ち並び、

山陽百貨店の1階にあったバスターミナルから

次々とバスが出発していく様子を眺めているのも好きだった。

 

さらに山陽電鉄のホームに行けば

自動改札機などという見慣れぬものがあり、

その向こうには「阪急六甲」や「阪神大石」行きといった

聞き慣れぬ街への電車が発着していた。

 

駅前の商店街は人であふれ活気があったし、

赤穂になかったマクドナルドがあったのも嬉しかった。

さらに姫路には映画館もたくさんあった。

 

赤穂には何もないけど姫路には何でもある、

そんな風に思っていた。

親と行けば帰りに御座候も買ってもらえるし、

嬉しくて仕方なかった。

 

これが中学に進学すると多少変わってくる。

要するに思春期であり、

「親と一緒に出かけるなんて格好悪い」なんて考える時期である。

姫路は友人と行く街になった。

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ただ、当時の赤穂の中学生にとって、

友人同士で姫路に行くのはなかなか大変なことであった。

かつて赤穂の男子中学生は一律坊主頭であったし、

それだけで「田舎者っぽくて格好わるい」なんて意識があっただけでなく、

さらに「制服着用」が義務付けられていたのである。

 

さらに冗談みたいな話だけど、

僕が在籍していた中学校では、

中学生同士で姫路に行く際は学校の許可が必要であった。

 

そんなもので友人たちと姫路に行く際は、

まず担任に申請する訳である。

ちゃんと書類を書いて提出だ。

僕の記憶に間違いがなければ親の署名捺印も必要だったはず。

 

黙って行けばバレそうにもないような気もするが、

週末の姫路など先生方もそれなりにウロウロしていたし、

許可もとらずに私服姿で出歩いているのを見つかれば

翌日学校でこっぴどくやられちゃうのだ。

そんなものでわりとみんな真面目に申請していたと思われる。

 

そこまでして姫路に行く理由は何かと言えば、

無論「マクドナルド」があったり映画を見たりというのもあったが、

そんなものは上っ面の理由に過ぎぬ。

目的はただひとつ、

「エロ本」を買うこと(笑)

 

とりあえず昭和の時代、

坊主頭の男子中学生の頭の中の大半は「エロ」で

しめられていたと言って良い。

 

パンツの穴 [VHS]

 

当時の姫路には、やたらとエロ本が充実している、

小さな書店があった。

 

僕の記憶に間違いがなければ

「おっちゃん」がレジにいると僕らにも売ってくれたのだが、

「おばちゃん」がレジにいるとダメだった筈で、

店を覗いて「おばちゃん」だとがっかりして退散していたような気もする。

(あくまでおぼろげな記憶です)

 

携帯もネットも無い時代、

エロに対する欲求を満たす、

ただそれだけの為に往復1000円以上の電車賃を払い、

わざわざ姫路まで出てきていたのだ。

 

今思えば何とも健気な話ではある。

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ぶらぶら歩いていると建物の上に橋脚が見えた。

昭和41年に開業したものの、

わずか8年でその使命を終えた姫路モノレールのものだ。

 

僕が物心ついた頃にはとっくに廃止されていたし、

今なおJRの車窓からも軌道の一部は見えるのだが、

あまりにも「普通」にそこにあったもので、

それほど意識して見たことはなかった。

 

せっかくの機会であるし、

モノレールの軌道に沿って手柄山を目指してみることにした。

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大将軍駅跡が見えてきた。

車から眺めたことはあったが、

改めて見れば摩訶不思議な建物だ。

 

集合住宅の建物の中をモノレールの線路が貫いている。

1階には「釜ぶろ温泉」との表記もある。

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何とも斬新な駅であるような気もするが、

姫路駅からの距離など数百メートルであろうし、

終点が遊園地とあれば果たして利用客はいたのだろうかとも思う。

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山陽本線、新幹線との交点部で軌道は途切れていた。

軌道撤去工事は着々と進んでいるようで先に進めず、

大通りに戻って再び先を目指す。

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再び軌道が現れ、

途切れた先には水族館の建物が見えた。

はて、かつての駅は何処にあったのだろう。

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駐車場の誘導をしていた方に聞いてみれば、

まさにその水族館の場所に駅があり、

駅そのものが再現されていると言う。

駅が再現されているとはどういうことなのか。

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言われた通りに坂道をのぼれば、

小洒落たレンガ造りの建物が見えた。

エレベーターがあり、

その脇に「モノレール展示室」のポスターが貼ってある。

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実際に足を踏み入れてみれば、

そこには昭和41年の手柄山駅が再現されていた。

車両には「祝・開通」の飾りがついている。

運転士さんはよっぽど忙しいのか、

ちょいとお疲れ気味だ。

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やってきた少年が、

「お父さん!電車、電車」

なんて歓声をあげている。

その後に出てきたお父さんは30代半ばか、

 「へえ、こんなん走ってたんや」と興味深げである。

 

その後に続いた老夫婦は

「懐かしいなー」と顔をほころばせている。

 車内ではモノレールが走行している映像が流されていた。

無論初めて見たものでついつい見入ってしまう。

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ホームには須磨浦公園の案内板、

駅名票、時刻表に至るまで忠実に再現されていた。

車両も美しく、時折放送も流れ、

今にもこのモノレールが姫路駅に向けて動き出しそうな気がした。

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しみじみ眺めているとポケットにいれたスマホが震えた。

「いつ帰るんや」と一行メール。

まさに小・中を共にした幼なじみからである。

 

「今、姫路でモノレール眺めてるねん」

と返信すれば、

「姫路にモノレールなんかあったんか。はよ帰れ。飲むど」

とすぐ返ってきた。

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どうやら地元に帰っても

日の高いうちから飲むことになりそうだ(笑)

僕は姫路駅へと急いだ。

 

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