飯でも食いに行くべかと
出かけようと思った瞬間に雨が降りだした。
何だかなー、てな気分で引き返す。
しばし待っていると雨もやんだので、
自転車に乗って福井駅に向かった。
きっぷを買おうとして「?」となる。
財布を、忘れた。
いい年こいたおっさんが何をやっているのだろう。
仕方なく家に帰る。
出かける気力を失いつつあったが、
再び福井駅へ。
目指すは三国。
三国はちょくちょく訪れているが、
ちょっと気になる「そば屋」を見つけていた。
三国神社も参拝してみたい。
三国へ向かう電車は2両編成で車内に余裕もあったが、
すれ違う電車はいずれも恐ろしく混んでいた。
福井駅前にハピリンがオープンしたからであろうか。
西春江付近でまた雨が降りだして、
何だかやりきれなくなったが、
三国に着く頃には青空も広がっていた。
出発前にゴタゴタしたので、
散策前に飯にしたい。
そば処「大はら」さんは、
手前に看板がなければ気づくことはないであろう、
路地を入った先にある。
玄関には盛り塩。
扉を開けばまっすぐに廊下が伸びている。
そこはまさに民家だった。
奥から作務衣姿の旦那さんが出てきた。
靴を脱いでお邪魔する。
案内された先には4人がけのテーブルが2卓。
奥に座卓もある。
「どちらからおいでですか」
旦那さんは言った。
「兵庫県です」と応える。
「またえらい遠くから」
会話する相手にあわせて
兵庫県民になったり福井県民になったりするのは僕の得意技だ(笑)
この店にしかない一品とのことで
旦那さんがおすすめしてくれた「桜塩」を注文。
改めて店内を見渡す。
よく雑誌やブログなどで
「古民家を改造したカフェ」
「古民家風の〜」なんて表現を見かけるが、
このお店は「民家」そのものである。
お店らしさを感じるのはスピーカーから音楽が流れていることと、
真ん中の部屋の事務机上にあるレジくらいのものか。
時折ネコも姿を見せるが
カメラを向けると姿を消す。
しばらく待つとそばが運ばれてきた。
白い器に入った出汁がそのまま桜色である。
「まずは出汁を飲んでみてください」
口の中に「春」が広がる。
思わず笑みが浮かぶ。
旦那さんも嬉しげだ。
添えられた薬味をそばにのせ、
出汁をまわしかける。
「ずずーっと出汁と一緒にどうぞ」
言われた通り、
ずずーっとすする。
最初は物足りないかな、なんて思ったが、
この出汁そのものが香り高くて味わい深いし、
「そば」そのものがコシもあり、
のどごしも良く、しみじみウマイ。
ずずーっと。
こちらの旦那さんが、ずいぶん話好きで楽しい方である。
随所に「そば」に対するこだわりを感じるのだが、
全然高圧的ではないし、
いかにも「福井の父ちゃん」てな感じ。
後から入って来られた女性の方も含めて
2時間近く楽しい時間を過ごさせてもらった。
ちなみに会計は500円である。
何とも商売っ気がない。
500円でこんなそばが食せる三国の方々がつくづく羨ましい。
ごちそうさまでした。
三国の街なかをぶらぶら歩いて三国神社を目指す。
すると色んなお宅の軒先に、
さまざまな俳句が掲げてあることに気づき、
つい見入ってしまう。
「つまずいて 足元見れば 何もなし」
「青信号 渡りきれたら まだ若い」
「運動会 撮った写真に 孫いない」
「老いるとは こういうことか 老いて知る」
「粗大ゴミ そう言う妻は 不燃物」
「オイ・ほら・アレ」聞き返さない 妻天才」
なかなか秀逸だなー(笑)
三国神社に到着。
随臣門をくぐり境内に入ると、祭りの日の喧騒が嘘のような静けさ。杉の老木がうっそうと茂る様はまさに神域を思わせる。
延長5年(927)編の延喜式には、すでに式内三国神社の名があるのだから、歴史はかなり古い。祭神は、治水工事で有名な継体天皇とその子、椀子皇子。椀子皇子は三国公の祖とされ、その後えいたちが、氏神としてはじまりだろうといわれている。
各駅停車全国歴史散歩 福井県より抜粋
すぐそばに海があるとは思えぬ
うっそうとした杉木立。
そんな中に新緑が鮮やかだ。
静かに合掌。
ここから三国神社駅を目指して適当に歩いていたら、
何故か三国駅の近くに出てしまった。
そしてちょうど福井行きの電車が出発していった。
時間つぶし、と思ってみくに龍翔館を見学したら、
想像以上に充実した展示内容で、
結局福井に帰る電車に乗ったのは1時間半後。
福井といえば開館したばかりのハピリンである。
とても福井の駅前とは思えぬほど賑わっていた。
詳しくはまた次回に触れようと思うが、
3階と4階の使い方がもったいなーというのが率直な感想。
エスカレーターに乗っていたら、
後ろの女子高生?が
「福井は絶対に都会になれないっていうのがよく分かった」
と憤っており、思わず吹き出しそうになる。
そして広場にいた男子高校生かな、
5人組も「何もなかったなー」とそっけない。
帰宅してから聞いた相方ンとこの若い社員は
ファッション系のテナントが全く入っていなかったことに
愕然としていたとのこと。
街づくりって、当然のようオッサンの視点で考えてしまうけど、
これからを担う若い世代は案外というか、
冷静に見ているし考えているのだ。
地方の再生なんて、
オッサンたちがあれこれ考えるより、
その子供や孫の世代が何を求めてるか、
何があればその街で暮らしたいと考えるのか、
そういったことを考える必要があるように思ってしまった。