読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

北陸徘徊人

福井・石川・富山を中心にゆるーい旅を満喫中

男2人、奈良の大仏を見に行く2 〜紀勢本線ロングシート紀行〜

JR

f:id:fukuitabi:20160818080901j:plain

 

紀伊田辺を13時11分に出発した2両編成の電車はまさかのロングシートだった。

車内は適度に席が埋まるほどの乗車率で、

一見したところ地元の方半数、観光客が半数、そんな感じ。

 

あきらかに戸惑っているような表情を浮かべているのは観光客であろう。

お弁当を手にしていたり、

ビニール袋にビールやつまみを入れている方の姿も多い。

 

僕らの並びにいた中年男性のうち1人が缶ビールをプシュリとやった。

そのお連れさんらしき男性もプシュリとやる。

それが何かの合図のように、

僕らの斜め前にいた若者が弁当を食べ始めた。

ロングシートの車内ではふだんあまり見かけない光景である。

 

どういう意図があって紀伊半島の先端部の区間に、

こんなロングシートの通勤形の車両を入れているのか、

通りすがりの酔っ払いにはさっぱり理解不能だ。

 

無理やり身体をひねって車窓を楽しむ。

体勢的に辛いけど、こうするしか方法はない。

JRにしてみれば、紀伊半島へは特急列車でどうぞ、

てな感じなのかもしれない。

 

13時28分、白浜駅に到着。

後続の特急くろしおを先行させるため、しばらく停車。

我らが普通列車からも半数程度の客が降りていった。

 

f:id:fukuitabi:20160818081006j:plain

 

0番線にはかつての「しらさぎ」がひなたぼっこをしていた。

もうあんな豪雪地帯を走ることはないと、

ホッとしているように見えなくもない。

 

f:id:fukuitabi:20160818080946j:plain

 

駅員さんたちはアロハシャツを着ていた。

何とも爽やかでいい光景である。

こうやって観光地気分を盛り上げてくれるなら、

ぜひとも普通列車でも観光気分を味あわせてほしいものである。

 

13時35分、

隣のホームに新大阪を11時15分に出た9両編成のくろしお9号が到着。

びっくりするくらいお客さんが降りるのが、

車両を通した窓越しに見ても分かる。

 

サンダーバードとくろしおの乗り継ぎなら、

福井を9時5分に出てもこの時間に白浜に着けるのかと

時刻表を眺めながらぼんやり思う。

 

くろしお9号は後ろ3両を切り離し、6両編成になって新宮方面へ出発していった。

 

13時40分、

我らが普通列車も後を追う。

 

f:id:fukuitabi:20160818081357j:plain

f:id:fukuitabi:20160818081423j:plain

 

紀伊田辺以南は単線になることもあってか、

かつての鹿児島本線の八代以南を旅しているような気分になってくる。

本州最南端の駅、串本を過ぎて進路が変われば、

今度は日豊本線を北上しているような気分になってくる。

 

f:id:fukuitabi:20160818081451j:plain

 

僕は無理やり身体をひねり、

車窓を満喫していたが、

相棒はもはやめんどくさくなったのか、

ずっとスマホをいじっている。

 

僕は時刻表と地図を眺めつつ、

「このトンネルを抜けると海が見えてくる」

だのいちいち相棒に伝えていたが、

そのうち面倒になってきてやめた。

 

行き違いのための長時間停車、

特急列車の通過待ち。

かつてはどこでも見かけた日常の光景が、

今やすっかり懐かしい。

 

国鉄時代の運転士や車掌は、

こんな行き違いの時間を利用して、

ホームに降りて一服していたよな、なんて思う。

今の運転士はただ行儀よく運転席に座っている。

 

15時34分、紀伊勝浦着。

かなりのお客さんが入れ替わるが、

紀伊田辺からずっと乗りっぱなしの方もちらほらお見受けする。

恐らく同好の士であると思われる。

 

果たして彼らは何処まで行くのだろう。

 

新宮駅手前の海岸沿いの区間は、

個人的には紀勢本線で最も好きな区間だ。

本当なら新宮側から乗れば、

街なかを走っていていきなり海岸線という変化を楽しめるもので、

最初は逆周りも考えていたが、

接続的に厳しかったので諦めた次第であったりする。

 

f:id:fukuitabi:20160818081522j:plain

 

16時09分、新宮着。

3時間近くロングシートに揺られ、

次の多気行きの出発時刻は16時13分。

向かい側に真新しいJR東海気動車が止まっている。

 

f:id:fukuitabi:20160818081552j:plain

 

この先3時間半は快適に過ごせそうだ、

そう思ったのもつかの間、

こちらのJR東海気動車もまた

ロングシートなのだった。

「・・・」

 

熊野市を過ぎてトンネルを抜けると、

波田須という小さな駅に着いた。

線路から海に向けて狭い棚田が広がっており、

ご夫婦だろうか、稲刈りをしている様子が見えた。

それも何とも懐かしい稲架掛けをしている。

 

さらにトンネルを抜けると美しい海岸が姿を現し、

多くの方々がキャンプをしている様子が見えた。

列車は新鹿(あたしか)駅に到着。

 

f:id:fukuitabi:20160818081621j:plain

 

そして二木島駅付近の小川の澄んだ美しい水!

特急列車に乗っていると気づかないような、

息を飲むような美しい光景につい見とれてしまう。

相棒は寝てしまったけれど(笑)

 

小さな駅に娘でも送ってきたのだろう、

いかにも漁師風の中年男性が缶ビールを片手に立っている。

隣には老夫婦。

穏やかな顔で手を振っている。

 

一日に僅かな本数しか止まらない駅にだって、

その地に暮らす方にはいろんな物語があるだろう。

 

16時54分、尾鷲着。

部活帰りだろうか、

よく焼けた坊主頭の高校生たちが大勢乗り込んできて、

車内はにわかに賑やかになる。

 

スマホをいじっているわけではなく、

みんな陽気におしゃべりを楽しんでいる。

にわかに山深くなり、トンネルを抜けると土砂降りの雨になっていた。

「傘ねえぞ」なんて高校生たちが笑っている。

 

その時、あ、この辺りって関西弁じゃないンだな、

なんてことも思う。

尾鷲駅で乗り込んできた高校生たちの大半は次の相賀駅で

雨の中を駈け出して行った。

 

f:id:fukuitabi:20160818081703j:plain

 

18時2分、紀伊長島着。

20年ほど前になるが、

僕は冬の間愛知県の自動車工場で期間工として働いたことがあり、

2人非常に仲良くなった方がいた。

 

1人がこの紀伊長島の方で、

「すんげー田舎でさー」は口癖みたくなっていた。

その方は車を持ち込んでいたもので、

週末ごとにいろんなところへ連れて行ってもらった。

 

もう1人が富山の高岡の方で、

週末はいつも3人で過ごしていたが、

何年かしてからたまたま入った愛知県内のショッピングセンターの

旅行会社のカウンターにその方がいて、

ずいぶんぶったまげた記憶がある。

お2人とも元気にしているだろうか。

 

f:id:fukuitabi:20160818081729j:plain

 

18時45分、三瀬谷着。

ここで30分停車。

駅舎と反対側に、大きなスーパーが見える。

何か腹に入れたい気分だったけど、

どうやって線路を渡ればよいのかわからず、結局断念。

 

f:id:fukuitabi:20160818081752j:plain

 

列車は暗闇の中を進み続ける。

相棒はスマホのゲームにも飽きたのか、

寝息をたてている。

 

考えてみれば、自分がいろんな仕事をしてきた、

ということもあるけれど、

その場その場でいろんな方とめぐりあい、

全国各地、いろいろ行ったよなーと思う。

 

僕の場合、あんがい一人旅って少なくて、

地図を眺めればその時その時の旅の相棒の顔を思い出す。

みんないいオッサン、オバサンになっているであろう。

窓ガラスに映る僕も、

すっかり白髪が目立つ年になった。

 

19時48分、すっかり暗闇になった多気駅に到着。

向かい側には名古屋行きの快速みえ26号が停車中。

わずか2分の接続ですぐに出発。

 

御坊以来の転換クロスシートはやはり快適そのものだ。

「何か特急列車みたいやなー」

と相棒が笑っている。

 

20時13分、快速みえ23号は津駅に到着した。

福井を4時48分に出発して15時間25分。

これだけ乗って1人2370円か。

青春18きっぷって偉大だわ(笑)

 

f:id:fukuitabi:20160818081832j:plain

 

もはや僕の脳裏には「生ビール」しかなかった。

宿は津の駅前にとってあったが、

近鉄に一駅乗って津新町駅へ。

 

今回、宿を決めるにあたり、

相棒に訪ねたのは「餃子とみそ焼きうどんならどっちがいい?」

ということだった。

みそ焼きうどんなら亀山に宿をとるつもりだったが、

答えが餃子だったもので津にした。

 

津には津ぎょうざなる名物があるとのこと。

ぎょうざ好きとしては抑えておきたい。

目指したのは氷花餃子さん。

 

f:id:fukuitabi:20160818081909j:plain

f:id:fukuitabi:20160818081934j:plain

 

生ビールを注文し、

津ぎょうざの他にも色々注文。

最後に出てきたのが津ぎょうざだった。

 

f:id:fukuitabi:20160818081957j:plain

 

笑えるほどに巨大な上げ餃子だ。

そしてかぶりつけば肉汁たっぷりのあんが

火傷しそうなくらいに熱く、

かつウマイ。

 

すっかり満足して店を後にした。

「それにしても福井から奈良って遠いな」

相棒が笑った。

 

忘れかけていたが、僕らは奈良の大仏を見ることが目的だったのだ。

その奈良県の周囲をぐるっと回って、

三重県の津にいる。

 

ま、旅の醍醐味なんて目的地より、

その道中にあるもんだろう。

それでも疲れきっていたのか、

宿に入った僕はいつになく少ない酒量で朝まで爆睡していた。

 

広告