年の瀬も押し迫ったその朝、
僕はJR武生駅前にいて、
夏に一緒に野球観戦に行った
富山時代のテツ仲間である連れが来るのを待っていた。
空はどんより重く、
いつ雨が降り出してもおかしくない。
前もこの連れが福井に来た時は雨だった。
今回はちゃんと折りたたみの傘をカバンに入れている。
今回、連れの目的は「フェニックス田原町ライン」で、
電車に乗って風呂入って、酒が飲めればそれでよい、
とのこと。
この日は平日だったものでえち鉄も福鉄もフリーきっぷはなく、
さらにJRの特急で来ると言うもので、
あれこれ思案した結果、
待ち合わせを武生にした次第である。
8時50分、名古屋行きの「しらさぎ4号」が到着し、
連れが姿を見せた。
富山ー金沢は「当然」新幹線であるらしい。
「リッチやのお、あいの風と18きっぷで来ると思ってた」
僕が正直に言うと、
「富山は日本で二番目に18きっぷが使えない県になったのだ」
と謎掛け風に言う。
はて、一番使えない県は何処なのだ、と思ったら、
「沖縄っしょ、次いで富山、だから18きっぷは買ってない」
確かにそうかもしれない(笑)
9時14分発の鷲塚針原行きに間に合う時間であったが、
早々に電車に乗ったところで酒を飲む時間が長くなるだけなので、
武生の街をぶらりとまわり、
北府駅まで歩く。
目的は12月29日から運行開始する
「さくら色のフクラム」であったが、
車庫の奥の方にひっそりと姿がみえただけだった。
ただ留置線には200形とレトラムが並んでおり、
連れは満足気であった。
再び武生駅前に戻り、
アルプラザでコーヒー飲んで、
酒買って(笑)越前武生駅へ。
窓口であわら湯のまち駅までの連絡乗車券(920円)を購入。
まともに田原町で乗り継げば400円+620円で1020円だから
140円得な計算になる。
連れはフクラムに初乗車。
とはいえ富山市内でも
特に目新しくもないだろうと思っていたら、
「広い」とひと言。
へ?と思ったら、
「席がちゃんと2−2人掛けの配列になってる。富山は2−1.5くらいしかない」
たまにはテツ仲間と乗ってみるもんですな。
今まで全然気づかなかった(汗)
10時14分、出発。
連れは「内装も明るいし、走りは落ち着いてるし、いい車両だなあ」と言う。
何だか自分が褒められてるようで嬉しくなる。
しかしながら乗客は少なめで、多い区間でも10人いたかどうか。
市役所前を過ぎると僕らを除けばあと1人となり、
田原町で早くも貸し切りになった。
「ところで鷲塚針原には何があるのだ」
連れが言う。
「特に何もない。ちょっと先に免許センターはあるけど」
「何で鷲塚針原までなんだろ」
「分かんない。一応そこまで福井市で、その先が坂井市だからじゃないの」
途中駅からの乗車も誰ひとりおらず、
次の三国港行きまでは約20分。
待合室で缶ビール(ミニ)をプシュリとやって再会を祝す。
ついでにワンカップもぐびり。
うーむ、この男といれば朝から完全に駄目人間モードだな、、、
とはいえ一人だと寂しい乗り継ぎも、
連れがいるとあっという間だ。
ほろ酔いになったところで三国港行きの電車に乗車。
こちらもざっと20人も乗っておらず、
いささか寂しい。
そのうちぽつぽつと雨が降り始めた。
「おぬしはいつも福井に雨を連れてくる」
前回の野球観戦も雨天中止になったもので、
たっぷり皮肉を込めて言ってみた。
若かりし頃、一緒に北海道に行った時も、
帰りは日本海側を辿って帰ってくる予定であったが、
大雪に見舞われダイヤがメチャメチャになり、
えらい目にあったこともある。
「まあ、お互い様だ」
連れは笑いながら窓の外に目をやった。
雨は「ぽつぽつ」から「しとしと」に変わっていった。
あわら湯のまち駅に到着。
小雨の中を駆けてセントピアあわらへ。
こちらの入浴料は普段から500円と格安だが、
この日は風呂の日とのことで300円。
旅先で風呂に入るのはビールを飲むため、であり、
風呂上がりには350円と格安の生ビールをぐびり。
飲んでばかりいるが、
この男と出かけるといつもこんな感じである。
福井への帰路は福鉄福井駅までの乗車券(680円)を購入。
10円増しで福井鉄道の電車にも乗れることになる。
当然、というわけでもないが、
鷲塚針原で再びフェニックス田原町ラインの電車に乗り継いだ。
やはり田原町までは貸し切りだった。
西川知事さま、どうぞ現実を見てくだされ。
現状はあまりにも寂しすぎる。
市役所前で下車してヒゲ線に入る電車に乗り継ぐ。
連れが繊協ビルを見て、
「昔はここがバスターミナルだった」
などと言う。
よお知ってるなあ、と関心。
福井駅に到着。
とはいえまだ2時半前で、晩飯という時間でもない。
駅前周辺をぶらぶら歩く。
今回富山の連れといるから、という訳でもないが、
富山の駅前にあって、
福井の駅前にないもの、
そんな視点で考えたとき、
便利だったなあと思えるのが
「献血ルーム」だ。
何せ時間つぶしに最適で、
かつ人様の訳にたてる(笑)
富山にいた頃は仕事が定時に終わった時や、
平日休みで退屈な日なんかに寄っていた。
僕みたいな酒飲みの血を提供されても迷惑なだけかもしれぬが、
センター長さんからも「助けてください」と、
そんな電話がたびたびかかってきていたから、
多少はお役にたてていたのではなかろうか。
駅前という立地の良さから、
学校終わりの時間など、
学生の姿も多々みかけた。
だから富山の学生にとっても、
僕みたく駅を利用するサラリーマンにとっても
献血ってかなり身近にできるボランティアであったように思う。
今回の連れも然りだけど、
職場の同僚もかなり行っていた。
福井の血液センターは赤十字病院のさらに先で、
ちょっと立ち寄る、そんな場所ではない。
ハピリンかアオッサにあれば、
こんな酒飲みの血でよければもう少し協力できますが、
いかがなものでしょうか?(笑)
たぶん、学生さんたちも大いに協力してくれると思うけどなあ。。。
駅前をぐるりとまわったところで、
残念ながら雨である。
ちょっとどころかかなり早いが居酒屋タイムにすることにした。
何と、福井駅前に24時間営業の居酒屋ができている。
チェーン店であるが、
朝でも昼でも酒のことばかり考えている僕には
ありがたい限りである。
午前中からいいペースで飲んでいるが、
まあ、年末だし、たまには良かろう。
ビールから熱燗に移行して、
2人してぐでぐでになるまで飲んだ。
店を出た頃にはようやく陽が暮れて、
まわりの居酒屋が開き始める時間になっていた。
酔いざましがてら片町まで歩くと、
武生方面に向かって福井鉄道の610形電車が出発していくところだった。
現役で動く姿を見れるのもこれが最後かな、
そう考えると何だか寂しくもなる。
再び特急+新幹線で富山に帰る連れを福井駅で見送った。
「次は何処行くよ」と問えば、
「宮崎海岸でタラ汁とビール、で温泉入ってまたビール」
と連れが言う。
うーむ、それはなかなか魅力的だ。
冬の間に実行しよう。
雨は降ったりやんだりであったが歩いて帰る気力もなく、
バスに乗って帰宅することにした。
ただ、残念ながらバス停から我が家までは多少距離がある。
バスを降りて傘をさそうとしたら、
やっぱりというか何処においてきたのか傘がみあたらない。
僕は冷たい雨に打たれながら
家に帰った。