いつしかすっかり肌寒くなり、
今年は「残暑」なんてものを感じぬまま秋になってしまったなあ、
と感じる今日このごろ。
ただ、根本的に暑さに弱い僕にはありがたいとも言え、
街を徘徊するにもいい季節と言えた。
ここしばらく福井の私鉄ともご無沙汰してるし、
えちぜん鉄道に乗るか、
いや、代行バスを介して武生から三国まで行くのもいい、
そんなことを地図や時刻表を眺めつつ、
あれこれ考えるのは至福の時間であったりする。
さて、週末はどうするかと思っていたら、
相棒が「福井鉄道に乗りに行くぞ」などと言う。
僕は驚いた。
これまで相棒は特定の場所に行きたいと言ってきたことはあれど、
具体的に鉄道名や路線名を挙げたことはなかったからだ。
「お主もすっかり鉄ちゃんになったのお」
そう言ったら「それはない」と断固否定され、
「ゲームやってるだけだ」とのこと。
「・・・」
秋晴れの空が広がる午前9時半の福井駅前。
この日は福井鉄道の併用軌道部分が工事中なもので、
駅も閉鎖されていた。
相棒は「これから菊人形もあるし、平日に工事すればいいのに」なんてことを言う。
普段電車に乗らない相棒は、
福井鉄道の利用客の大半が学生であることを知らないのだ(笑)
平日に運休なんてやれば間違いなくパニックに陥るであろう。
それでも週末の朝の福井鉄道というのは何だかんだでそこそこお客さんがおり、
こりゃ代行バスも混むかもしれないな、
そんな思いで代行バス乗り場に行けば、
待っていたのはご婦人が1人のみ。
出発直前になって女の子3人組が現れた。
言葉を聞くと、中国語を喋っている。
赤十字前で降車ボタンが押され、
中国語を喋っていた女の子たちが下車しようとする。
ただ、彼女たちは電車に乗り継ぐようで、
車掌の説明を聞いて再び車内に戻ってきた。
彼女たちは電車が赤十字前から走っていることは分かっていたとも言え、
異国の地でたいしたもんだなあ、と関心する。
僕なら仮に台湾で代行バスなんて言われたら、
パニックに陥ってしまうかもしれない(汗)
福井鉄道の踏切を超えて再び左折し
福井駅方面に戻るような形で花堂駅に到着した。
相棒がスマホをいじりはじめる。
彼がやっているのは「駅メモ」とかいうゲームらしく、
公式サイトによると以下のような説明が。
全国9,000ヶ所以上ある駅を対象とした位置ゲームです。 個性的なパートナーキャラ「でんこ」と一緒に、 毎日の通勤・通学、おでかけを楽しんでみませんか?
僕がゲームに疎いというのもあるが、
こんなのもあるのね(笑)
しばらくホームで待っていると、
赤十字方面から電車が現れた。
元名鉄の880形なる車両である。
「なあ、この時間はフクラムって言っていなかったか?」
相棒が冷たい目で僕を見た。
相棒は「せっかく福井鉄道に乗るならフクラムに乗りたい」と言っていて、
一応僕はサイトで時間を調べていたのだけど、
完全に勘違いをしていたようである。
「30分待てばフクラムになるけど」僕が言ったら、
「別にこれでいいや」と相棒は言った。
しっかしまあ、悔しいのは、
すれ違った電車がいずれもフクラムだったことか(笑)
サイトを確認すれば、この日のフクラムは、
オレンジ、グリーン、さくら色3本が大方一日中走っていた。
それで30分間隔での運転とあれば、
単純に車両は4編成あれば事足りるということになる。
要するにフクラム以外の車両にあたるのは「4分の1」と言えた。
「これはある意味大当たりとも言える」
僕は言ったが、相棒からの返事はなかった。
それにしても、、、
僕が勝手に次男坊と呼んでいる「ブルー」のフクラムはどうしちゃたのだろう。
サイトを確認してみれば7月13日から動いていないようだ。
ついでに「レトラム」も心配であったが、
よくよく考えれば週末に福井市内が運休とあれば走る余地がないとも言えた。
電車は越前武生駅に到着した。
相棒のゲームは終了したらしく、
「どっか面白い所連れて行ってよ」などと言う。
はあ、と僕はしばし考え込んでしまった。
日頃から僕は武生の街の雰囲気が好きでたびたび訪れてはいるものの、
第三者の目から見て面白いかと言われれば、
何とも答えようがない。
先日、福井駅前のとあるお店で、
観光客らしき2人組が店員さんに
「この辺でちょっと観光するところないですか」と訪ね、
店員さんが非常に困ったような顔をした揚げ句、
「特にありません」などと答えたもので、
思わず吹き出しそうになってしまったことを思い出す。
自分ならどう答えただろう、
後々自問自答してみたが、日頃からウロウロしている割に、
観光客が満足できる答えが出せるかと言えば全然自信がない。
福井の市長さんならどんな答えを出すのだろうか。
これは今回も言えたことで、
しばらく悩んで夏の初めに行った宝円寺を目指すことにした。
ぶらぶら市街地を歩く。
宝円寺には謎の石像が多数並んでおり、
相棒は「何やこれ」となかなか楽しげであり、ほっとする。
スマホのカメラで写真を撮りつつ、
「これはインスタ映えしそうだ」などと言うもので、
「インスタなんてやってんのか」と聞いてみたら、
「やっていない」とのこと。
「腹減った。武生のおすすめは」と相棒が言う。
「越前そばにボルガライス、中華そば、渋い食堂もいっぱいある」
相棒のリクエストは中華そばだったもので、
無難に若竹食堂を目指す。
道中でリニューアルされたばかりの武生中央公園に寄ってみたら、
家族連れで溢れかえっていた。
ここは「たけふ菊人形」の会場でもあり、
今年は10月5日から開幕、さらに入園料は無料になるとのこと。
昨年、この相棒と菊人形に来てからもう1年たつのか、
そう考えると背筋が寒くなった。
40過ぎてから時間が経つのがのが妙に早く感じる。
しばし歩いて若竹食堂に到着。
ちょうど僕らの前に入った夫婦で席が埋まり、
しばし待っていると奥の座敷に案内された。
相棒は「中華そば」を、
僕は「中華そばとカツ丼のセット」を注文。
こういった注文の違いが、僕らの腹回りの違いに露骨にあらわれているのだが、
いちいち気にはしないことにする。
こちらの食堂、とても便利な所にあるとは言えないが、
入れ替わり立ち替わりお客さんが現れる。
そのうち幼い子を連れた家族連れが現れた。
店員さんが座敷あくまで待ってね、なんて言っている。
ちょうどテーブルが空いた瞬間、
店員さんと目があった。
グラスを持ってそそくさと移動する。
移動して間もなく中華そばが運ばれてきた。
澄んだスープを見つめるだけで何だか幸せな気分になってくる。
セットのカツ丼はふわとろの卵に覆われており、
一般的にイメージする「卵カツ丼」とは若干違う。
このタイプの卵カツ丼は福井のお店でしか見たことがないような気がするが、
出汁が効いててこれまた幸せな気分になってくる。
相棒は無言のまま「箸が止まらぬ」そんな感じで中華そばを食していく。
スープの最後の一滴まで飲み干すのに、
3分もかからなかったのではなかろうか。
食べ終えた相棒は満足気な表情を浮かべ、
「大盛りにしとけば良かった」と言った。
それは同感(笑)
腹も満たされ北府駅まで歩く。
一応来る時に確認はしていたが、
610形はいつもの場所に放置されていた。
変化があったとすれば、
側線に放置されていた200形と600形の位置が変わっていたことか。
200形は長らく600形の後ろに留め置かれていたもので、
久しぶりに顔を見たような気がする。
さて、ここで次の電車を調べてみたら、
何と「フクラムではない」ことが判明した。
行きも帰りも4分の1の確率で大当たり、とも言える。
「今日はハピリンで宝くじでも買って帰ろう」
僕が言ったら、相棒は「フクラムで帰りたいのだ」とだけ言った。
僕らは赤十字前行きの電車を見送り、
いったん越前武生までオレンジのフクラムに乗り、
再びオレンジのフクラムに乗って福井へ帰った。