以前から「徘徊してみたい」などと思いつつも、
なかなか行く機会に恵まれなかったのが、
南越前町の「今庄」という町だった。
しょっちゅう車や電車で「通って」はいるが、
未だに町を歩いたことはない。
いつか行こう、いつか行こうとは思っていたが、
どうしても休みは福井鉄道やえちぜん鉄道を優先したくなるもので、
なかなか今庄に行く機会がない。
そんな矢先、今庄のお隣の駅がちょっとしたニュースになった。
同じ駅で1日に3度オーバーラン
福井県南越前町南今庄のJR北陸線南今庄駅で24日、福井発敦賀行き普通列車が計3回、約60~170メートルにわたりオーバーランしたことが分かった。3件とも別の男性運転士だったが、いずれも「いつもより手前からブレーキをかけたが、滑った形で思うようにブレーキが利かなかった」と話している。乗員乗客にけがはなかった。
あまりよろしくない話題ではあるが、
福井からみれば北陸トンネルの手前に位置する南今庄駅も、
これまで利用したことはない。
現場に対する好奇心、でもないけれど、
南今庄駅まで行って今庄駅まで歩いてみよう、
そんな気になってぶらりと家を出た。
福井駅で運賃表を眺めたら、
今庄駅までは580円なのだが、
南今庄駅になると670円に跳ね上がる。
ケチな僕は手前の湯尾から今庄まで歩くことに変更するか、
などとも一瞬考えたが(笑)
次の敦賀だと970円だぞ、それに比べりゃ近いし安い、そう言い聞かせ、
南今庄駅までのきっぷを買った。
隣できっぷを買ってた4人組の若者が
と券売機の前でブツブツ言っている。
来年の夏には使えるようになるからね(笑)
さらに「エリアまたぎ」もできるようになるからね(涙)
「ICOCA」エリア一体化へ 近畿圏から北陸、山陽までの利用も可能に JR西日本 | 乗りものニュース
ラッシュの時間帯も過ぎて車内には余裕があった。
余裕があった車内は武生でさらに余裕ができて、
9時49分、南今庄駅の所定の停車位置に無事停車した。
以前にも書いた話であるが、
僕が北陸本線に初めて乗車したのは中学生の春休みで、
部活の顧問がいきなり「金沢に行くぞ」と言い出して、
何故か2人で金沢まで青春18きっぷで行くことになったのだが、
北陸トンネルを抜けたこの南今庄駅周辺は随分雪が残っていて、
ふだん雪に縁がなかった僕は
「ずいぶんとんでもなく遠いところに来ちゃったなあ」
なんて考えていた記憶がある。
南今庄駅に降り立ったのは僕1人。
まもなく福井方面の電車がやってくる時間ではあるが、
反対側のホームにも待ち人はいない。
先の福井新聞の記事を見ると、
夕方の1本だけ下車客がいたらしい。
と、いうことは乗車は誰もいなかったということだろうか。
道路を挟んで流れているのは「鹿蒜川」。
昭和26年までこのあたりから西方は「鹿蒜村」という自治体であったらしい。
この鹿蒜川沿いの県道を上流に向かえば、
北陸トンネル開通前の北陸本線の線路跡となり、敦賀へ抜けることができる。
かつては静かな道だったけれど、
今は北陸新幹線の工事が真っ盛りで、ダンプがひっきりなしに行き来している。
今庄の町を目指す。
この看板、いったい何年前からあるのかな。
これを見ると「福井に来た」って気になるのよな(笑)
先日の台風の爪痕だろうか。
県道を避けて集落の中を歩く。
それにしても誰もいない集落だ。
歩いている人はおろか、車すら走ってこない。
集落を抜けた先で、ようやく農作業の合間、みたいな感じのご婦人方がいた。
1人が「誰だ?」みたいな表情だったもので、
恐る恐る「おはようございます」と言ったら、
みんな一斉に「おはようございます」と言ってくれて、
何だかホッとした。
今庄の集落は思いのほか近かった。
このあたりだけ新しい家が建ち並んでいる。
その手前を左折。
すると「今庄宿」とあった。
今庄宿については観光マップに以下のように紹介されている。
古くから幾重にも重なる南条山地は北陸道の難所で、山中峠、木ノ芽峠、栃ノ木峠、湯尾峠のいずれかの山越えの道を選んで今庄に至り、京・江戸へ行き来する人々が最初に宿泊したのが、今庄宿です。今庄は江戸時代を通じて、宿場として越前で最も繁栄したところです。
(中略)
北国街道(栃ノ木峠越え)は江戸参勤には最短路で、越前各藩は必ずといってよいほど、今庄宿を利用しました。 江戸時代中期以降は、商用や京への寺参り、伊勢参り等の旅人の宿泊が急増し、宿は繁忙を極めました。
(中略)
天保年間(1830~44 年)には戸数が290余り、うち旅籠屋55軒、茶屋15 軒、娼屋2軒、縮緬屋2 軒、鳥屋15軒などがありました。 今も昔風の家屋が軒を連ねる町並みは、その長さや道の形や短冊型の屋敷 割がほとんど変わっていないこともあって、当時の宿場の面影をとどめています。
集落を歩いていると山肌に赤い鳥居が連なっているのが見えた。
その名もずばり「稲荷」とある。
せっかくなので登ってみたが足元が悪くてびしょびしょに(涙)
そしてここにも台風の爪痕が。
稲荷神社から降りてきて、
再び集落の中を歩く。
再び神社らしきものが見えたので、さて、どおするかと悩んでいると、
回覧板らしきものを手にしたご婦人が現れた。
「どちらからおいでですか」
「福井市内からです」
「あれ、また遠くから」
このあたりだと福井市内も「遠い」という感覚なのかな(笑)
ちょっとお話してたら先日の台風は凄まじかったとのこと。
集落の中を歩いていると、
時折コミュニティバスのポールが立っているのだが、
いずれも「時刻表」がないことに気付いた。
利用者はみんな地元の方だから時間など把握しているのかな、
なんて思っていたら、マジックで書いてあった(笑)
どうみても一般家庭の敷地の中にあったり(笑)
一度利用してみたいな。
さらにぶらぶら歩いていると、再び北陸本線の踏切に行き着いた。
ロクに地図すら見ずに歩いたもので、
今庄駅を通らず、随分行き過ぎてしまったようだ。
ぼちぼち腹も減ってきたので、方向転換して国道沿いを歩く。
確かこの先に食堂らしきものがあった、はず、、、
今庄駅の裏手あたりに、目指していた食堂が現れた。
「真琴」とある。ちゃんと営業しているみたいでホッとする。
建物はレトロな感じであったが、
店内は小奇麗で、長いカウンター席に幾つかのテーブル、座敷もある。
何となく「ドライブイン」という言葉を思い出した。
メニューを眺めると今庄名物の「そば」だけでなく、
ラーメンから定食から酒のツマミまで何でもある。
今庄なんだから「そば」にしようと思っていたが、
結局誘惑に負けて「カツ丼」を注文した。
愛想のいい奥さんが「卵でいい?」という。
選べるのかどうか定かではなかったが、
「それでお願いします」と答える。
改めてメニューを眺めてみると、面白い一言が添えてある。
「消費税全品50円増でお願いします」
そんな案内が壁にも張ってある。
僕が注文したカツ丼は850円だから、
本来なら消費税が68円で918円の支払いとなるはずだけど、
900円ってことでいいのかな?
しかしながら500円のおろしそばなら本来540円だけど、
これも550円になるのだろうか。
ほどなくしてカツ丼が配された。
フタを開けた瞬間に「おっ」と声が出そうになった。
これぞ至って「普通の」カツ丼ではないか。
長らく追い求めていた、僕にとって「普通の」カツ丼!!
福井のお店のカツ丼は、卵がソースを選べることが多いのだけど、
卵の場合、「卵ソース」状になっていたり、「ふわたま」になっていたり、と、
わりと何処も特徴的なものが多い。
それはそれでまた美味であったりするのだけれど、
「実家で食べるカツ丼」みたいなのを長らく欲していたのだった。
出汁はちょっと醤油の効いた濃い目のもので、
卵のとじ加減も申し分なし。
カツも揚げたて、いやはやたまらん。
いやはや、満足。ごちそうさまでした。
ちなみに会計は900円だった。
数品頼めばどうなるのか、ちょっと気になるところであったりする。
腹も満たされたので駅を目指す。
しかしながら、このあたり、まさに駅の裏手にあたる。
いったいどこで駅舎側に行くことができるのだ、、、
と思った先に線路をまたぐ道路が現れた。
今庄駅は、今のダイヤは分からぬが、
かつては特急の通過待ちをする列車があって、
一服がてら駅前の灰皿まで走った経験が何度がある。
その時の記憶と比べると、すっかりリニューアルされて美しくなっていた。
観光案内所に売店、展示室みたいなものまである。
今庄駅を「起点」にして歩けばよかったかな、、、、
帰路の福井行きは2両編成のワンマンカーで、
そこそこ席は埋まっていた。
しばらく補助席に座っていたが、武生で正席が空いたので移動。
武生を出てすぐに、オレンジのフクラムが越前武生駅に止まっているのが見えた。
どうもJRの往復だけだと愛想がないのよな、
武生で乗り継げば良かった、なんてことを思う。
六条駅まで行って県立図書館まで歩き、
フレンドリーバスに乗るか、なんてことも考えた。
調べてみれば運賃は同じだし、ちょうどいい列車もある。
けど隣に座った大きな荷物を抱えたおじさんは、早々に寝入ってしまい、
どうも起こさない限りは僕の短い足では出れそうにない。
ま、いいか、おとなしく帰るか、、、
スーパーに寄って帰宅したら、
こんなニュースがあったことを知った。
福井県南越前町南今庄のJR北陸線南今庄駅で24日に計3回、普通列車が約60~170メートルにわたりオーバーランした問題で、この3回以外にも約400メートルにわたってオーバーランした列車があったことが25日、JR西日本金沢支社への取材で分かった。停車駅を大幅に越えて車両を制御できない状態にあったことになり、同支社は、再発防止策を検討するとしている。
(中略)
南今庄駅で停車位置を約400メートル行き過ぎたのは敦賀発芦原温泉行き普通列車(2両編成)で、午後3時50分ごろ発生。他の3回と異なり下り線で、踏切を越えていなかったためバックしてホームに戻った。乗客約20人のうち1人が降り、9分ほど遅れて出発した。
400メートル過ぎてバックとは。。。
いったい、あの日、南今庄駅では何が起きていたのだろう、、、、