北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

福鉄電車で武生にとんかつを食べに行く

その日の僕はイマイチ体調もよろしくなく、

外を眺めれば雨も降っていたもので、

朝から何をやる気力も起こらず、

家の中に引きこもっていた。

 

ただ、じっとしていても腹だけは減る。

 

冷蔵庫を覗けば豆腐やら豚肉やらはあったもので、

よし、今日は豆腐チャンプルーでも作って一杯やろう、

こんな日は酒飲んで寝るに限る、

と、準備を始めた瞬間に相棒から

「飯でも食べに行こう」と連絡があった。

 

「何を食べに行くのだ」と問えば

「とんかつ」との答え。

「天膳か、かつ義か?」

僕は相棒が好きな福井のとんかつ屋の名前を挙げた。

「今日は武生に行く。気になるとんかつ屋があるのだ」

と、相棒は告げた。

 

「何でわざわざ武生までとんかつを食べにいくのだ」

僕はごくまっとうな意見として言った。

「いつもわざわざ電車に乗って武生まで飯を食べに行っているのはおぬしではないか」

相棒は言った。

「・・・」

 

で、結局僕は相棒と車に乗って武生までとんかつを食べに行ったのだけど、

これが予想外に絶品であったもので、

すっかり満足して帰ってくることになったのだった。

 

それから数日間、

冗談抜きで寝ても覚めてもその店のとんかつをもう一度食べたいと

ずっと思っていた。

 

で、早速実行することにした。

 

 

 

福井駅前で空を見上げると、

どんよりとした暗い雲が空を覆っていた。

天気予報では夕方から雨なんて言っていたが、

いつ降り出してもおかしくない、そんな気がする。

 

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急行列車に乗るために市役所前駅へ向かう。

西武の前にはおなじみのクリスマスツリーが姿を見せていた。

もうまもなく12月なんだなアと思う。

僕は年が明けると直に誕生日を迎えるもので、

クリスマスツリーやらクリスマスソングを耳にしただけで、

少しばかり憂鬱になる(笑)

 

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誕生日が楽しみだったのはせいぜい20歳までだったか、

あれからはや二十数年、、、

 

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市役所前駅の新しいホームは完成間近、

かつて地下道へとつながっていた階段はきれいに埋められていた。

 

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それにしてもこの新ホームが完成すると、

ヒゲ線から出てきた越前武生行きの電車はどんな動きとなるのだろう?

田原町方面のホームでの乗車となるのか、

はたまたヒゲ線の複線部分から逆走してくるのか、

あれこれ想像するのは完成までの楽しみの一つ、と言える。

 

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前武生行きの急行「ki-bo」に乗車。

電車に乗り込み、走り出すと、

みるみるうちに体調がよくなっていくのが分かる。

ここしばらく体調がすぐれなかったのは、

単に「テツ分」が足りていなかっただけなのかもしれない。

 

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「ki-bo」は淡々と福井平野を南下し、

定刻に越前武生駅に到着した。

 

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駅を出るなり雨が降り始めた。

一応今回は傘を持っては来ていたが、

徐々にテンションが下がってくる。

目指すお店は日野川を渡った先の村国山の麓で、

武生の駅からは少しばかり距離がある。

 

何もこの雨の中を歩いて行く必要があるのか?

武生なら駅周辺に幾らでも美味い店があるではないか、

しばしそんな感じで自問自答。

 

しかしながら

「いや、俺は今日はとんかつを食べるために武生に来たのだ」

そう自分に言い聞かせ、傘をさして歩き出した。

 

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雨は冷たく、冬の雨だなアと思う。

そして、それなりに着込んではいたが寒い。

鼻水ばかり出てきそうになる。

 

20分近く歩いて、目指すお店「えびす庵」さんの看板が見えてきた。

身体はすっかり冷え切っていた。

しかしながら回転灯がついていない。

この時点で11時15分。

11時30分からの営業か、まさかの定休日か。

 

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店内を覗くと電気はついている。

扉を開けて声をかけると店主さんが「どうぞどうぞ」と言ってくれたもので

カウンターの端に座った。

ちょっとフライングだったかも(汗)

 

厚切りロースかつ定食160グラムを注文。

巨大な竹の湯呑みに暖かいお茶が配された。

 

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さて、このえびす庵さん、店内はかなり独特な雰囲気で、

全然とんかつ屋さんにいるという気がしない。

棚は雑誌やら漫画で埋め尽くされ、

カウンターの上には焼酎がずらり。

さらにカウンターの椅子は背もたれがついたもので、

座り心地がかなりいい。

 

小上がりには小さなテーブルが3つほど並んでいるが、

ここもお店の中というよりは、

店主さんの秘密基地にお邪魔したような、

そんな摩訶不思議な空間となっている。

 

「えびす庵」さん、店主さんのひょうひょうとした雰囲気とあいまって、

実に居心地のいい空間を作り出しているのだ。

それがつい先日来たにも関わらず、

すぐにでもまた来たいと思った理由のひとつ。

 

しばし待つと厚切りロースかつ定食が配された。

熱々の味噌汁が冷え切った身体に染み渡る。

そして見事な揚げ具合の美しいとんかつを一口。

「ああ、武生まで電車に乗ってきて、雨の中を歩いてきた甲斐があった」

そうしみじみ思える一品。

 

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多くのとんかつはパン粉の存在が「とんかつ」であることを主張しているが、

えびす庵さんのとんかつの場合、

パン粉はあくまで肉を引き立たせるための脇役にすぎず、

油っこさもないもので幾らでも食せそうな気がする(笑)

 

先日一緒に来た相棒もすっかりハマってしまい、

「これはいいや。来週も来よう、今度はお楽しみ5種盛りを試そう」

なんていう話をしていたのだが、

その来週すら待ちきれず、来てしまったのだった。

すまぬ相棒、先走る俺を許しておくれ、、、

 

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えびす庵さんには塩もいろいろあれば、

ソースもあり、

一切れごとにあれこれ試してみることができるのもまた楽しい。

あっという間に胃袋に収まった。

 

厚切りロースかつ定食の通常価格は1300円だが、

平日のランチタイムは1100円とのこと。

いやはや満足、ごちそうさまでした。

 

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えびす庵さんを出ると雨はやんでいた。

帰路は北府駅を目指す。

 

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行きは深く考えずにJR武生駅に近い万代橋を経由したが、

後から地図を眺めればかなり遠回りをしていたようで、

帰路に使った豊橋経由の方がはるかに近かった模様。

 

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北府駅の目的は無論610形電車。

昨年の今頃はまだ現役で走っていたのだよなあ、と思う。

この車両に乗りたくて、

いったい何度武生や鯖江に来たことやら(笑)

 

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引退後もこの車両が恋しくて

いったい何度武生まで来たことやら(汗)

この冬もずっとこの場所に居続けてくれるのかな。

 

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帰路の鷲塚針原行き急行はグリーンのフクラムだった。

やはり中年のオジサンには可愛い「ki-bo」より、

フクラムの方が落ち着く。

 

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ただ、フクラムで気になっていたのが、

以前も書いたかもしれないけれど、

整理券の出るタイミングが微妙に遅いということで

扉が完全に開いてからほんの少し間があって出て来るのだ。

 

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乗り慣れた方々は整理券が出るまでの一瞬立ち止まるのだけど、

週末なんかはわりと取り損ねて慌てている方もお見受けする。

 

770形や880形だと車内に入るのにステップがあるもので、

ほとんど気にならないのだけど、

フクラムの場合、低床で乗車しやすい分、

ほんの0コンマ何秒の世界なんだろうけど、

調整した方がいいのでは、と思う。

 

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帰路も市役所前で下車。

福井駅まで歩いた。

 

ハピリン前の広場では畳やこたつが並んでいたけど、

いったい何をやるのだろう(笑)

 

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福井鉄道に偏りつつあるもので、

えちぜん鉄道福井駅の様子も見に行く。

新駅舎の工事は着々と進んでいて、

東口のロータリー側からもその姿を見ることができるようになった。

 

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個人的にはシックでいい色だなあ、

なんて思っているのだけど、

先日一緒に京都に言った連れは「何だあの色は」と酷評していた(涙)

福井駅周辺は全体的に白過ぎるから、

これくらいの色でもいいような気がするんだけどなア、、、

 

ま、感じ方は人それぞれか。

 

また雨が降ってきそうだったし、

バスで帰ろうと思ったら、

バスはまさに出発した直後だった。

「・・・」

 

おとなしく次のバスを待っていたところで酒が飲みたくなるだけ、

とも言えた。

 

僕はぶらぶら歩いて家へと向かった。