土曜の朝、相方が仕事で名古屋にJRで行くというもんで、
「一応、動いているか確認した方がえんでないのかい、昨日も運休あったみたいだし」
と言ってみたら、
「そうよね」となり、
しばしスマホをいじっていたのだが、
「運行情報休止中になってる」と笑う。
僕もパソコンを叩いてみたら、確かに運行情報が休止中になっている。
相方は福井駅に電話してみたらしいが、
「9時からだって」みたいなことを言う。
「もし動いてなかったら車で名古屋まで連れてってね」
そんな恐ろしい一言を残して相方は出かけていった。
僕はその後駐車場の除雪をしていたが、
特に連絡はない。
無事に動いていたということか。
ならば自分も飯でも食べて風呂にでも入るべと家を出た。
いかんせん、除雪というのはすぐに腹が減って弱る。
最初はおとなしく福井市内の徘徊にとどめておこう、
そんな考えでいたが、
福井鉄道が特に問題なく動いていることを知り、
ハピリンのチケットセンターで休日フリーきっぷを買った。
「午後から代行バスになりますので」
と窓口のお姉さんは言い、
「了解です」と応える。
さて、どこまで行って何を食べるか
電車を待ちながらしばし考える。
腹はすでにぐーぐー鳴っており、
何かガッツリしたものを、
つうことはカツ丼だな(笑)
随分前に武生に美味いカツ丼があるとpoptripさんが書いていた、はず。
記事を読んだ際に調べた記憶をたどる。
家久駅とスポーツ公園駅の間だったっけ、
スポーツ公園駅と北府駅の間だったっけ、、、
越前武生行きの普通電車は予想外に混んでいた。
ざっと20人近くいたか。
しかしながらベル前までで大半が下車してゆき、
鯖江市に入った頃には車内には数人しか残っていなかった。
そして、急激に天候が荒れ始めた。
うーむ、どうするか。
おとなしく駅に近い食堂で済ませた方がいいのかな。。。
鯖江市内では雪が降り続いていたが、
越前市に入ると雪はやみ、晴れ間も見えてきた。
スポーツ公園駅で下車。
しばし悩んだが北府駅方面へ向かってみることにした。
仮に間違っていたとしても、
麻婆豆腐が美味しい四川菜さんもある。
しかしながら駅前で僕は行く手を阻まれてしまった。
何にって「融雪装置」に、である。
バルブの具合でも悪いのか、まるで噴水のように降り注いでいる。
おまけに歩道の除雪はされていない。
「・・・」
やはり電車に乗って武生まで行った方がいいかな、
なんてことも考えたが30分後である。
よくよく見ると道路の反対側の歩道はあいていたもので、
傘をさして車道を渡った。
線路沿いの道を北府駅方面に向かって歩いていると
それらしいお店が現れた。
「つる庵」とある。
開いているか不安であったが車道を渡っていると
店内からお客さんらしき方が出てきた。
完全に最近腹回りの中年化が著しくなっているもので、
絶対にカツ丼単品にしようと心に決めていたが、
注文を取りにきたお姉さんに
「卵カツ丼単品で」と言いかけて、
「やはりセットでお願いします」と言ってしまう。
麺はあったかい「そば」にした。
僕が入った後に次々とお客さんが入ってきて、
小さな店内はまたたく間に席が埋まった。
相席になった年配の男性はメニューも見ずに
「賑わいうどん」とやらを注文している。
先客のもとにソースカツ丼が配された。
ちら見してみたらなかなかボリュームがありそうだ。
僕は隙間から見える厨房の店主さんたちの様子を眺めていた。
丼が仕上がる。
順番から行くと次は僕かな。
読んでいた新聞を片付け、姿勢を正す。
すると丼はソースカツ丼を食べていた男性の元へ運ばれていった。
どうやら彼はソースカツ丼と卵カツ丼をダブルで食べるようだ。
「・・・」
しばし待つと僕のもとにも卵カツ丼が運ばれてきた。
わくわくして蓋をとる。
おお、何つう美しい卵カツ丼なんだ!!
相席になった男性が「ここ、本当に美味しいよ」と笑う。
一口食す。
後から確認してみると、poptripさんは
「僕の求めていたものがすべてここにはちゃんとあるのです!」
と評されていたが、すべて納得である。
まさに王道の卵カツ丼と言っていい。
そして、相席の男性のもとに「賑わいうどん」が配された。
これまた天ぷらやらもちが入った豪華版だった。
カツ丼もそばも最後の一滴までぺろりとたいらげる。
いやはや、満足、ごちそうさまでした。
勘定をすませて店を出ると、
先程までとは一転して雪が降り始めた。
恐らく北府駅まではたいした距離でもなかろう、
そう考えて駅を歩く。
途中に、福井鉄道の本社がある。
その駐車場ごしに、北府駅が見える。
いつも通り、そこには愛すべき610形が雪に埋もれている、
はずだった。
いや、しかし、何か様子がおかしい。
僕は北府駅に急いだ。
除雪車の向こうに見える610形は、いつもと変わらないように見える。
駐車場の雪山ごしに見える610形も、
正面から見る限りはいつもと変わらないように見える。
しかし、以前とは違って長らく折りたたまれていたパンタグラフが上がっている。
↓年末
僕は息を飲んで駅舎側へと向かった。
すると、2両編成のはずの610形が、1両になっている。
僕は福鉄の本社側から見た時に、
車両の隣にトレーラーの荷台でもあるのかな、と思っていた。
何処かに運ばれていって、廃車になるのだ、
そんなふうに考えていた。
↓本社側から
ところが何てことはない。
トレーラーの荷台だと思っていたのは610形の足回りの部分だったのだ。
隣に重機がいたから、それでガンガンと破壊していったのだろうか。
破壊している途中でなくて良かったと思う。
そんな様子を見たら「やめてくれー」と叫んでしまったかもしれない(笑)
この1年、610形がこの位置に留め置かれてからずっと、
僕はいったい何度武生の地に足を運んだのだろう。
いつかこんな日が来ることは覚悟していたが、
1年間、何ら変わらず放置されているのを見て、
このまま朽ちるまで放置されるのではなかろうか、
なんてことも思っていた。
何でこれほど610形という車両に惹かれてしまったのかな、
あれこれ思うところはあれど、
派手さはなけれど質実剛健、
正面に貫通扉のある、これぞ「電車」といったスタイルが気にいっていたのかなと思う。
たぶん、僕が幼稚園の頃に描いていた電車は、
みんな610形みたいな姿をしていたような気がする。
名古屋の地下から出てきて、
こんな雪国にやってきて、
行く手を車に邪魔されて、
えーい、やっとれんわ、と思ったこともあったであろう。
長きにわたる福井での活躍、お疲れさまでした。
田原町行きの電車が入って来たが、乗る気になれず、
帰路はフクラムにしようといったん越前武生駅に向かった。
アルプラザの本屋で鉄道ジャーナルを立ち読み(すみません)すると
200形を取り上げた記事に
「北府駅に併設されるミュージアムに保存」
みたいなことを書いてあった。
それなら610形も、なんて思ってしまったが、
ヨソモノはヨソモノなのか、とも思い、
何だか悲しい。
越前武生駅に戻り、さあ、フクラムで帰ろうと思っていたら、
次の、本来なら鷲塚針原行きとなる急行は、
工事の関係で田原町行きとなっており、
さらにフクラムではなく、
来る時に乗ってきた770形だった。
隣の乗り場にはオレンジのフクラムが停車しており、
その先にはさくら色のフクラムの姿もあった。
さくら色のフクラムには「赤十字前」との表示が出ている。
と、いうことはこの急行の次に出る赤十字前行きがフクラムなのかな、
と考えて、それならフクラムでちんたら帰ろうと考えて、
一応駅員さんに尋ねてみたら「違います」の一言。
あとから調べてみたら夕方まで昼寝をするようだ。
770形の急行で福井に戻り、市役所前で下車。
かつてのホームは完全に取り壊されていた。
この市役所前駅に関して、後からであるが
福井経済新聞で気になる記事を見つけた。
この記事の中に、しれっと、
「3月のダイヤ改正で「福井城址(じょうし)大名町」に名称変更される予定という同電停」
なる一文があるのだ。
いったいいつの間にそんな話が出ていたのだろう(笑)
と思って調べてみたら、中日新聞に記事があった。
どうも福井国体を見据えての改名であるらしい。
この記事にはこうある。
駅名に「福井城址」を盛り込むことで、観光客らが福井城跡の近くだとイメージできるようにする。 駅付近には、フェニックス通りと中央大通りが交わる交通量の多い大名町交差点もあり、名称に「大名町」と加えることで、県民にも場所をより分かりやすくする。
さらに、こうともある。
行政関係者の一人は「ネーミングは大事。このタイミングで変えることに意味がある」と話す。
役所主導の改名ということかな。
年末に新調したばかりの駅名標もすべて無駄になるということか。
↓年末に撮影
僕にはさっぱり役所のお偉いさんの考え方が理解できない(笑)
ぶらぶら歩いて家に帰る。
結局、風呂に行かずじまいだったなあ、
車で銭湯にでも行くかなあ、
なんて思ったが、降りしきる雪をみているとその気力も萎える。
寒いし焼酎の湯割りでも飲もうと思い、
湯を沸かしたが、焼酎の残りは少ない。
うーむ、これでは夜までもたないではないか、、、
そんな時、部屋のチャイムがなって、簡易書留が届いた。
はて、何かと思うと、
「ご当選おめでとうございます」とあり、
ゲンキ−(福井のドラッグストア)の商品券が1000円分入っていた。
どうやら昨年、僕が飲んでるチューハイに貼ってあるシールを、
相方がせっせと集めていたのだけど、
それが当たったようだ。
僕が飲んでるチューハイで当選したのだから、
この商品券は僕が使っても何ら問題はないであろう。
僕は商品券をそっと財布に忍ばせ、
そのままゲンキーに焼酎を買いにいった。