昨年の夏、僕は「北陸トライアングルルートきっぷ」なるものを使い、
しかしながらその願いはかなわなかった。
大雨で城端線は運休、七尾線も途中で運転打ち切りとなったのだ。
和倉の宿を予約していたもので七尾までは何とか行ったのだけど、
翌日ものと鉄道は運休となりバスで高岡に帰ったら城端線は相変わらず運休で、
結局何ら目的を達することができなかった、
というのが以前に書いた話。
それから半年以上、いつかはリベンジしてやると、
虎視眈々と狙ってはいたものの、
なかなか実行に移す機会を得ることができずにいた。
そしてついにチャンスは訪れた!のだけど、
前の晩久々に飲みに行ったこともあってか、
しっかり寝坊しちゃうし、
おまけにとんでもないほどの二日酔いに見舞われてのスタートとなる(涙)
よたよたと富山駅に着くと
駅前の桜が満開になっていた。
先日、何かのテレビで富山駅前には金沢や福井のようにインパクトがあるものがない、
と言ってたけれど、
本来はインパクトのあるものなんていらないのよな(笑)
高架下に路面電車が乗り入れて濡れることなく乗り継ぎできて、
無機質になりがちな駅前には桜が咲いている。
こんな駅、そうそう他所にはないと思うけど、どうなんだろうか。
IRいしかわ鉄道の車両で津幡を目指す。
たまたま「快速」表示の写真になったけど、
1時間に1本くらい、富山ー金沢に快速くらいあってもいいのになあ、
とは思う。
津幡で七尾線の電車に乗り継ぐ。
前回も書いたことだけど、
JR西日本は古い車両を大事にするのは結構なことであるが
とにかく一度、走行中の車内でマイクテストをやった方がいい。
前回は雨音がひどかったから聞こえづらかった、という部分もあったけど、
晴れていても何ひとつ聞こえないというのはいかがなものか。
おまけに恐ろしいほど「早口」なもので、
駅の前後でどこからともなく呪文が聞こえてくる、といった感じになっている。
一層強まった。
無論、のと鉄道の方が車両も新しいというのはあれど、
運転士がきちんと客に対し必要な情報を伝えようと、
丁寧な案内を心掛けてるとがひしひしと伝わってくる。
で、のと鉄道であるが、2両編成という堂々たる姿であるにもかかわらず、
気の毒なほど空いていた。
この日は何だかんだ言っても行楽シーズンの日曜日。
10人いるかいないか、といったところか。
何とも寂しい思いで七尾を出発。
ところが、次の和倉温泉にはホームにあふれんばかりのお客さんの姿があり、
車内は一気に賑わいをみせた。
お客さんの胸元には「クラブツーリズム」のワッペン。
話を聞いていると、能登鹿島駅の桜を見に行くようだ。
皆さん、田舎の列車に興味津々といった様子、かつ楽しげだ。
あえて観光列車ではなく、普通列車をツアーに組み込む
クラブツーリズムの担当者のセンスが素晴らしいと思う。
のと鉄道の列車は七尾湾を右手に眺めつつ、
淡々と走り続ける。
あまりにも澄んだ海にただただ見入ってしまう。
能登鹿島駅に到着。
「能登さくら駅」として知られる桜の名所であるが、
相当なお客さんで賑わっていた。
大半の方が車で来られているのは明白で、
せめてこの1割でものと鉄道を利用してくれればなあ、とは思う。
車内はすっかり静かになって、列車は終点の穴水に着いた。
穴水駅の先端部には懐かしい「のと恋路号」が
保存されていた、というよりは放置されていた。
この先に行ったのは穴水〜蛸島間の廃止直前であったもので、
平成17年の3月といったところか。
もう14年もたったのか、としみじみ思う。
穴水と言えば大相撲の遠藤関の出身地。
確認がてら相撲協会のプロフィールを見たら
「184.0センチ、154.0キロ」とあった。
体重だけ見れば僕の3倍といったところだろうか。
駅前に出た最初の印象はとにかく「静か」ということか。
都市部であれ地方であれ、
何だかんだでそこいら中から「音」が聴こえてくるような気がするが、
穴水の街は何せ音が聴こえてこない。
これは街を歩いていても、その印象は変わらなかった。
単に二日酔いがひどくて聴こえなかった「だけ」かもしらぬが(笑)
さて昼飯である。
今日は朝飯も食わずに飛び出してきたもので、
二日酔いにもかかわらず腹は減っている。
今回目指すのは、石川県在住の方のブログでその存在を知ったお店だ。
駅からまっすぐ歩いてくれば5分くらいだろうか。
「レストランおかざき」とある。
店内は明らかに地元民といった方々が数組。
メニューを眺め、「大サービス品」とあった「ハンバーグ、魚フライのAセット」を
愛想のいい店員さんに注文。
ほどなく配されたAランチは見た目から600円とは思えぬ内容だった。
魚のフライはむろん揚げたての熱々、
ハンバーグは何とも「肉肉しい」もので、
白飯との相性も非常にいい。
ちなみに、僕の奥の席に座ってた方は、
ずいぶん「お冷や」をお代わりする方だなあ、と思っていたら、
飲んでいたのは「焼酎の水割り」だったようだ。
地元の方が昼間から飲んでいる店というのは
僕にとって名店の証みたいなもの。
ごちそうさまでした。
穴水駅へ戻る。
ホームには車両が既に止まっている。
しかしながら、めちゃくちゃ違和感がある。
静か、なのだ。
この車両、エンジンを切っていた。
バスだとアイドリングストップなんて珍しくも何ともないが、
日中のホームに停車しているディーゼルカーのエンジンを切ってるなんて、
永らく鉄道ファンをやってきてるけど、初めて見る光景であるような気がする。
後に運転士が現れて、ブルルンと車体が震えてエンジン音が響き渡った。
やはり新鮮な光景であるような気がする。
一方、ここまで来て僕の二日酔いはピークに達していた。
昼飯を食べたばかりだというのに、
どんどんどんどん頭痛がひどくなっていく。
やむを得ず、僕は売店に向かって、ワンカップを一本買い求めた。
「竹葉」なる、能登の酒。
ホームのベンチに座って、キューッと飲み干したら、
ようやく少し楽になり、
僕は七尾行きの列車に乗った。