僕は富山の「のみや」は割といろいろ行っているが
富山の「めしや」はほとんど知らない、
そんなことに気付いた今日この頃。
以前、富山で暮らしていた時の昼飯は
誰かといればほぼラーメン屋、
1人の時はカレー屋か糸庄のもつ煮込みうどんか餃子会館か図書館の食堂が大半だった。
そんなもので、富山で昼飯、
それも定食を、なんてことを考えると途端に「???」マークが脳内に点滅する。
唐揚げ定食が旨い店、カツ丼が旨い店、
福井だといくつも出てくるが富山はほとんど知らない。
知らない、ということは楽しみが増えるということでもある。
あれこれ地元のブロガーさんの記事を検索するのもまた楽し。
そうするといくつも気になる店が出てきた。
そんなもので今回は射水市の小杉に行ってみようと思う。
小杉といえば、、、
今は射水市であるがかつては小杉町であり、サッカーの柳沢敦さんの出身地であり、太閤山ランドという大きな公園があり、最近はコストコができたり、小杉駅がJRだった頃は一部のサンダーバードや北越も停車していたなあ、というのが余所者である僕の印象。
地理的には富山と高岡の中間点で、あいの風とやま鉄道で行けばすぐに着くし、
地鉄のバスも富山からだと30分に1本程度の割合で走っている。
ただ、隣町故に近すぎて何だか物足りない。
何か楽しいルートで小杉に行くことはできないか。
あれこれ思案した上、ライトレール経由で行くことにした。
平日朝9時の富山駅北口。
この停留場にポートラムが2編成並ぶのは初めて見る光景で、
何だか一人興奮してしまう(笑)
約15分で蓮町に到着。
ここで四方行きのフィーダーバスに乗り継ぐ。
フィーダーバスは蓮町で乗り継ぐ「四方・草島ルート」と、
岩瀬浜で乗り継ぐ「岩瀬・大広田・浜黒崎ルート」の2系統あり、
富山ライトレールが運行している。
運賃は現金だと200円であるが、
「パスカ」や「えこまいか」といったICカードを利用して、
ライトレールと1時間以内に乗り継げば割引が効いて100円となる。
ポートラム自体も現金払いだと200円だがICカードだと180円なので、
富山駅から280円で四方まで到達できることになる。
http://www.t-lr.co.jp/tariff/bus.html
今回初めて利用して「便利なもんだなあ」と思う反面、
車内の電光表示板が塞がれてしまっているのはいかがなものか。
公共交通機関の利用者にとって、一番必要な情報は
「次の(駅、バス停は)何処か」といったことではなかろうか。
利用者の大半が地元客で特に問題はないのかもしれないが
音声案内だけだと何とも聞き取りづらく、
改善した方がよいのではないかと思う。
フィーダーバスは四方に到着。
富山で海釣りをする方々がよく口にするのが「四方」という地名で
「よかた」と読む。
富山湾に面した漁村だ。
それにしても地鉄の表示板、何とかならぬものか、、、、
ここから射水市の足洗まで歩く。
グーグルマップで計算してみると約2.5キロ、30分と出た。
海をちらっと眺めてから、
しかしながら案内板の類は一切なく、
射水市に入ったかどうかも分からない、、、、
並走しているはずの国道がどんどん離れていっていることに気付き、
慌てて進路を修正して国道へ出る。
バスの乗り継ぎに失敗したら今日の計画はすべてふっとぶ、、、
どうにかこうにか足洗老人福祉センターに到着。
「足洗温泉」とあるので誰でも入浴できるのかと思ったが
あくまで射水市内に居住する60歳以上の方、
ならびに付き添いの方に限定しているようだ。
ここから射水市コミュニティバス「16 小杉駅・大江経由足洗線」のバスに乗車。
最近までほとんど意識していなかったのだけど、
射水市はとんでもなくコミュニティバスが充実しているのだった。
それも1乗車わずか200円、一日券など300円である。
(以前にも紹介した「17 海王丸パーク・ライトレール連絡線」を除く)
さらに北陸各地にコミュニティバス数あれど、
ヨソモノには使いづらい本数であったり、
運行日か限られていたりするが、
射水市の場合は十分すぎるくらいに「使える」バスになっている。
ルート図・時刻表 | 射水市コミュニティバス・デマンドタクシー
面白いな、と思ったのは、
足洗老人福祉センターで一緒に乗車した年配の婦人が、
回数券で「一日券」を購入していたことだ。
回数券は100円券が12枚つづりで1000円。
見方を変えれば1000円で4日間乗り放題、とも言える。
バスは30分ちょいで小杉駅南口に到着。
ここは射水市コミュニティバスのターミナルとなっているようで、
何台かのバスが出発を待っていた。
小杉駅南口から不二屋食堂を目指す。
歩いて約5分といったところか。
この時点でまだ11時20分前後だったのだが、
広い店内には既に何人もの先客がいた。
店内は想像以上に広々としており、
大半が座敷席となっていた。
1人なのでカウンターでも良かったのだが、
わずかばかりに設けられたカウンター席は常連さんの指定席と化しているようで、
すでに埋まっており、
店主らしき方や奥さんとの会話を楽しまれていた。
そんなもので座敷に案内されて着席。
カツ丼にするかから揚げ定食にするかでしばし悩んだが、
結局から揚げ定食を注文した。
「揚げ物なので少しお時間いただきます」
と愛想のいい店員さんが言った。
次から次へとお客さんが入ってくる。
多くは「働き盛り」の世代の男性客、といった感じ。
みんな常連なんだろう、メニューを見ることもなく、
丼やら定食を淡々と注文していく。
耳にした感じではカツ丼を注文している方が多いように察した。
ほどなくして「から揚げ定食」が配された。
大きめの皿にたっぷりのキャベツの千切りと、大きめのから揚げがでんと載っている。
富山のから揚げは下味があっさりしているな、
と最近思うようになっていたが、
不二屋さんのから揚げはしっかりめの下味がついており、
おかずとしてもよし、ビールのあてにも良さげな感じ。
ミニうどんもついていたが、
こちらの出汁もまたいい感じ。
実は注文時に他の席を見てそのボリュームにひるんでしまい、
ごはんを半分でお願いしたのだけど、
それでも腹がはちきれそうだった。
ごちそうさまでした。
今後はカツ丼食べに来ます。
この時点でちょっと急げばあいの風とやま鉄道の電車に乗れそうであったが、
慌てる必要もないや、アルプラザで涼んでいこう、てな気分になり、
ぶらぶら歩いていたのだけど、
何となく見かけた案内看板に気になるものを見付けた。
「小杉大仏」なんて書いてある。
そんなの初耳だ。
あいの風とやま鉄道の線路下をくぐり、
一端地上に出て今度は旧8号線の下をくぐった。
さらに町中を進むと目指す「蓮王寺」が現れた。
何てことはない、どこにでもありそうな町中の寺で、
とても大仏様がいらっしゃるようには見えない。
本堂に「ご自由にお参りください」とあったので、
扉を開いた。
すると目の前に大仏様が現れた。
息を飲んで眺めていると、
お寺の奥さんらしき方が現れて、
「よかったら大仏様のまわり一周してみてください」
と言う。
奥さんがいろいろ説明してくれる。
この大仏様の高さは約5メートルの木造であること
約1000年の歴史があるが、戦国時代に焼き討ちにあい、
住民が頭と手の部分を剥ぎ取って避難したこと、
江戸時代に復元して今の姿になったこと、、、云々。
大仏様のまわりには四国八十八ヶ所のお砂踏み、
さらには七福神も配されており、
大仏様をぐるりとまわるだけで何ともご利益を授かることができそうな、
そんな感じがした。
奥さんにお礼を言って蓮王寺を後にする。
もう1点、この寺を目指す道中で気になる「文字」を見かけていた。
「鏝絵」である。
僕は漠然と
「鰻絵」だと思っていた。
小杉ってウナギの絵が有名なの?何それ、てな感じである。
蓮王寺から駅に向かう途中に資料館があったので入ってみる。
そして中にいた職員さんに
「小杉ってウナギの絵が有名なんですか」と訊いてみた。
すると職員さんは笑って
「こてえですね」と言った。
こ、て、え、
僕が「鰻(うなぎ)」だと思っていた漢字は
魚へんではなく金へんで、
「鏝(こて)」だったのだ。
鏝とは何かと言えば左官屋さんが使う道具で
大辞林にはこうある。
① セメント・漆喰(しつくい)などを塗ったり,平らにならしたりする道具。金篦(かなべら)。
では鏝絵とは何かと言えば、おなじく大辞泉にはこうある。
漆喰(しつくい)を塗った上に,鏝で浮き彫り風に風景・肖像などを描き出した絵。
資料館にはまさに「鏝絵」が並んでいた。
しかしながら絵というよりは彫刻にしか見えない。
職員さんいわく
「彫刻は刀なんかで彫り出していくものですよね、でもこれらは塗り重ねていっているものです。だから絵なんです」
なるほど。
「すぐ近くに鏝絵の第一人者、竹内源造の記念館があります。是非見ていってください」
職員さんはわざわざ表まで出てきて「あの建物です」と教えてくれた。
そんな流れで竹内源造記念館へ。
頂いたパンフレットによると
竹内源造は、明治19年(1886年)富山県射水郡小杉町三ケ(現射水市三ケ)に生まれました。三ケは、江戸時代後期から左官業が盛んな土地柄で、源造の父も左官業を営んでいました。
源造は、父の下研さんに励み左官として腕を磨きながら鏝絵を習得し、芸術の域にまで高めました。
鏝絵とは、消石灰に牡蠣貝を焼いた灰、ふのり、すさを混ぜた漆喰を用いて鏝で描くものです。
源造の鏝絵の特徴は高肉彫りで、時には枠からはみ出す豪快さにあります。
源造は、帝国ホテル(初代帝国ホテル)の貴賓室や大連の朝鮮銀行大連支店(現中国商工商工銀行中山広場支店)など当時の日本を代表する建築物から、地元町役場、旧家の蔵、絵馬などと幅広い作品を残しました。
とある。
入館は無料。
館内に足を踏み入れると、目の前に全長17メートルにも及ぶ
「双竜」の鏝絵が出迎えてくれる。
砺波の蔵から移設してきたものらしい。
館長さんは双竜について丁寧に説明してくれた後、
僕が手にしたカメラを見て、
ちょっと困ったような顔を浮かべ、
「お写真は、、、、」と言ったもので
当然「ご遠慮ください」と続くものだと思い、カバンにしまおうとしたら
「たくさん撮っていってください」とニコリと笑った。
「そして、写真を撮ったらお願いがあります。拡散してください。小杉に、こんな作品があるってことを」
館長さん、微力ながら協力させてもらいます。
長いこと富山に住んでいたにもかかわらず、
小杉という町のことを何も知らなかった、
それが率直な感想。
から揚げ定食を食べに来ただけのはずだったのに、
とんでもなく満たされたような気分だ。
帰路はあいの風とやま鉄道の小杉駅からおとなしく電車に乗った。
行きは2時間かけて小杉に行ったが、
電車はわずか10分で富山駅に着いた。
運賃は270円也。