土曜日の朝、
私は勝山総合病院のバス停で空を見上げていた。
雨がしとしとと降っている。
傘はある。
晴れていれば大仏や平泉寺を訪ねようと思っていたが、
何処へ行く気力もわかない。
2時間以上の待ち時間がある。
そして、2時間待っていれば
坂東島行きのバスはこの病院にもやってくる。
しかし、
恐ろしいほどに人っ子ひとり見かけない。
誰の姿も見かけない病院というのは、
あまり気分のいいものではない。
ひとまずバスの始発である勝山駅を目指し、
雨の中を歩き始めた。
クマ出没、そんな看板を見つけ、
思わず足早になる。
図書館やショピングセンターに立ち寄りながら
勝山駅にたどり着く。
とりあえずクマには遭遇しなかったが、
そこいら中に恐竜はいた。
よくよく見るとずいぶんとレトロな建物で、
中にはカフェが併設されていた。
調べてみるとえちぜん鉄道の直営で、
2014年6月にオープンしたばかりであるらしい。
さらに嬉しいことに「賑わっている」
電車の出発が近づくと静かになり、
電車がやってくるとまたお客さんがやってくる。
丁寧に入れられたコーヒーが
冷えきった身体を温めてくれた。
バスの時間までもう少し時間があったので、
駅の待合室でしばらく待たせてもらう。
女性の駅員さんが出てきて、
「福井行きの電車の準備できました、
どうぞ車内でお待ちください」
そうやって待合室の客に声をかけている。
先日からえちぜん鉄道を利用する機会が多いが、
この鉄道会社、総じて感じが良い。
いまどき何処の鉄道会社も合理化、機械化が進み、
愛想もへったくれもないがここは違う。
例えばこの会社には「券売機」が存在しない。
有人駅では昔ながらに駅員さんからきっぷを買う。
日中の電車にはアテンダントが乗務しており、
車内放送や案内、きっぷの販売も行っている。
無論、元をたどれば京福電鉄の衝突事故にたどり着く。
一時は廃線の危機もあったが、
地元の熱意で設立された会社だ。
みんなが、
鉄道を守ろうとしていた。
働いている皆さんから、
そんな熱意が感じられる。
「ありがとうございます」
そんな一言にもココロがこもっている。
カフェの店員さんや、
駅員さんの姿を見ているだけで、
あっという間に待ち時間が過ぎた。
11時20分、
駅前のバスロータリーに坂東島ゆきのバスが入ってきた。