腹も満たされたもので敦賀市内へと向かう。
ここまでの景色、
雰囲気だけで私はすっかり満足していた。
また来よう、 いろんな季節に訪れよう、
私はそう考えていた。
やがて葉原トンネルの入り口に着いた。
信号機があったのでしばらく待つ。
この時、何となく嫌な予感がした。
中が真っ暗なのだ。 電気ひとつついていない。
私は隠し球であるヘッドライトを取り出した。
信号がかわるのを待ってトンネル内へ。
遠くに出口は見える。
しかし本当に真っ暗だ。
路面も壁面も見えない。
私は背筋が寒くなるのを感じた。
まっすぐ進めない。
気づけば壁に寄っている。
こんなところで転倒でもすれば大変なことだ。
私は歩くことにした。
車が来ないことを祈りながら。
歩いていても見えないものは見えない。
ヘッドライトは全く役に立たなかった。
完全なる闇だった。
やがてヘッドライトが見えて、
エンジンの轟音がトンネル内に響き渡った。
私は何とか待避所を見つけ、 そこに身を隠した。
トラックや乗用車など4台が通過していった。
そのテールランプを見送って再び歩き出す。
少なくとも自分が運転手の立場なら、
このトンネル内に自転車を押した人間がいるとは
100パーセント考えない。
しかし出口はなかなか近づかない。
葉原トンネルを抜けると、
遠くに山間の集落が見えた。
無事に抜けた、私は心底ホッとしていた。
国道に合流し、ひたすら敦賀を目指す。
市街地に入り、 せっかく来たしと氣比神宮を参拝。
この時点で13時30分。 福井の自宅を出てから6時間が経過していた。
38分発の普通列車に乗った。