夫が同期の葬儀から帰ってきた。
玄関先で塩をかけると、
「こーゆーのって夫婦っぽいよな」
などと力なく笑う。
夫の同期、だから29歳。
ガンだったそうだ。
昨年、夫は彼の結婚式に出席している。
まだ1年もたっていないはずだった。
日曜日、珍しく夫が出かけようか、
などと言う。
断る理由など何もない。
夫が運転する車に乗るのも
ずいぶん久しぶりなような気がする。
車は足羽川にそって上流に向かっていた。
夫が同僚から仕入れてきた情報では、
この先に「福井で最も美しい滝」が
あるらしい。
車はやがて「池田町」へ入った。
駐車場に車を止め、
「滝見台」を目指して山道を歩く。
わたしも夫もあきらかに日頃から運動不足で、
すぐに息が切れる。
視界が急に開け、
目の前に龍双ケ滝が現れた。
展望台から下って滝の直下へ。
「わざわざ展望台行くよりこっちの方が眺めがいいな」
夫が笑う。
本当にそのとおりだ。
昼食をとろうと池田町の中心部へ。
山中にも関わらず明るく開けている。
おもちの母屋という店に入り、
昼御膳をいただいた。
さっくり揚がった天ぷらも、
具沢山のおこわも、
ひとつひとつが丁寧に作られており、
しみじみ美味しい。
夫はあっという間に平らげて
テレビを見ていた。
そして、
「アッコにおまかせ、久しぶりに見た」
などと言う。
思わずテレビに目がいってしまう。
福井は民放が2局しかないもので、
TBSや朝日系列はケーブルテレビに入らないと
視聴できないのだ。
TBSを見れたと喜んでる夫婦を、
店員さんが不思議そうな目で見ていた。