北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

福井〜敦賀 路線バス乗り継ぎの旅3 しおかぜライン

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私は南越前町の河野という集落にいた。

バスを見送ってから靴紐を締め直す。

この先は約9キロを歩く。

 

別名「しおかぜライン」

かつては河野海岸有料道路という

その名の通り有料道路であった。

確か通行料金は890円であったと記憶している。

 

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並走する国道8号線がアップダウン、カーブ、トンネルが続く悪路なのに対し、

こちらはまさに快走路である。

しかし私は有料道路時代は一度も使ったことがない。

使うようになったのは平成20年の無料化後以降だ。

いくら何でも9キロで890円は高すぎた。

 

旧・河野村には何ら責任はないが、

どうにもこうにも「河野」と聞くと

この通行料金を思い出す。

 

国道8号線まで9キロの標識がある。

これぞまさに「日本海」ともいえる灰色の空、

高い波、

火曜サスペンス劇場そのものの光景が広がっている。

 

私は歩き続ける。

 

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右手奥には敦賀半島が見える。

延々と

「ザッバーン、ザッバーン」

打ち寄せる波の音が聴こえる。

 

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歩けども歩けども景色は変わらない。

交通量は少ない。

みんなすっ飛ばす。

そして予想もしなかった歩行者の存在に慌ててハンドルを切る。

 

路面の状態はいいとは言えない。

そこいら中に水たまりがある。

車が通ればバッシャーンと水が跳ねる。

海側の波もバッシャーンと打ち寄せる。

 

逃げ場はなく、

戻ったところでどうしようもない。

先に進むしかない。

波は延々と打ち寄せる。

 

ドッバーン、パッシャーン、、、、

 

哀しみ本線日本海〜♪

私は思わず口ずさむ。

歌でも歌わなければやってられない。

何をしているんだろう、私は、と思う。

 

そしてこのご時世、

路線バス乗り継ぎの旅とは修行であるといってもいいと思われた。

 

 

 

私は20代の若かりし頃、四国八十八ヶ所を歩いたことがある。

 

四国八十八ケ所はじめてのお遍路 (NHK趣味悠々) (イメージ)

 

最も苦しかったのが修行の道場ともされる高知県だ。

1番から23番の徳島県は山あり谷あり町ありで様々な変化がある。

さらにスタートでもあり気持ちも高ぶっている。

 

ところが23番の薬王寺を過ぎて高知県にある24番の最御崎寺が、

延々と海沿いの国道を歩くことになる。

この間約75キロ。

歩けども歩けども景色は変わらない。

 

1番から23番までは「変化」があった。

しかし23番から24番までは「変化」がない。

修行というよりは苦行であった。

何のために遍路をやっているのかと自問自答した。

 

さらに私はどうしようもない遍路であった。

頭は金髪で、

水筒にはお茶ではなくウィスキーを入れていたし、

灰皿を見つけてはタバコばかり吸っていた。

 

遍路には暖かい目を向けてくれる四国の方々にも

よく「怒られた」

遍路の格好で居酒屋に出没していたから仕方ないであろう。

 

そんなどうしようもない遍路でも、

1日50キロ近く平気で歩いていたのだから、

「若い」ということがふと懐かしくなる。

40を過ぎてなおさら身にしみる。

 

今となっては数キロ歩いただけで

身体中がギシギシいってくるのを感じる。

 

さらに敦賀市に入ってからは雨が降り始めた。

土砂降りではないが気が滅入る。

恐ろしくて現在地を確認する気にもならない。

 

私は歩き続ける。

 

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