北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

新幹線開業から7日目・金沢駅の朝

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私が初めて金沢を訪れたのは中学2年の時である。

当時の私は水泳部に所属していたのだが、

その顧問と2人で兵庫の片田舎から青春18きっぷでやってきた。

 

この顧問というのが実に不思議な人で、

「ちょっと島でも行くか」といきなりカヌーを出してきたり、

「おい、初詣に行くぞ」と言ったと思えば

50キロも先にある神社まで平気で歩かせたりする

言い方を変えれば「変人」であった。

 

まわりの同級生も部員もみんな嫌っていたが、

私は妙に波長があった。

だから唐突に「金沢に行くぞ」と言われても

特に驚かなかった。

 

当時はまだ「昭和」であり、

金沢駅もまだ高架ですらなかった。

とりあえずバスに乗って兼六園に行き、

どこかで「治部煮」を食べたことだけは憶えている。

 

あの時の行き先が何故金沢であったのか、

未だに分からない。

そう、あの時も3月の末だった。

 

 

 

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それから四半世紀。

平成27年3月20日、金曜日の朝。

私は相方と共に金沢駅にいる。

 

在来線ホームから階段を下ると、

この階に新幹線乗り継ぎ改札が設けられていた。

 

当然といえば当然なのに、

私の頭の中では新幹線と在来線の乗り継ぎは、

いったん1階までおりてぐるっと回ると

勝手に思い込んでいたもので

これなら乗り継ぎも苦ではないレベルだなと思う。

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とりあえず乗り継ぎまでは時間があるので

一旦途中下車してみる。

 

乗車券が福井〜福井なので

改札口の若い係員が一瞬「おっ」としたような顔を

しつつ途中下車印を押してくれた。

ま、きっと私の自意識過剰であろう。

 

3月14日に人で溢れかえっていた

コンコースもいたって静かな金曜の朝である。

 

金沢駅を利用する方々も、

月曜の朝には「おお、新幹線が出来たのか」と思ったりして、

スマホで新幹線改札口を撮影したりしたかもしれないが、

火曜の朝にはもう日常の光景になっていたであろう。

 

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そんな訳で新幹線改札口にカメラを向けているのも

旅人くらいであったりする。

とりあえず一旦外へ出る。

 

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もはや「金沢の象徴」みたいな扱いとなっている

鼓門ともてなしドームやらを見上げてみる。

北陸新幹線開業に伴ってできた建物のように思われるが、

実は10年近く前からそこにある。

  

土産物屋に入る。

もう何でもかんでも新幹線、新幹線、新幹線だ。

 

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ここで相方が「バック忘れた!」などと言う。

「何処に」

「電車の中!」

おいおい、何をやっているのやら。

 

窓口に行くとちゃんと届けられており

一安心であった。

まともに10分程度で乗り継いでいれば

もはや新幹線に乗っていてもおかしくない。

 

わたわたしている内に新幹線の出発時間が近づいていた。

 

改めて忘れ物がないかを確認し、

新幹線の改札をくぐる。

今回の新幹線の開業で、

ようやく石川県に自動改札機が登場した。

 

11番線ホームに、

北陸新幹線はくたか556号はすでに入線していた。

入線するところから眺めたかったが仕方ない。

 

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東京ゆき、の表示が新鮮だ。

「白山」「はくたか」「北陸」「能登」、

昔、直通列車があった時は東北各地同様「上野ゆき」だった。

 

恐らくこれは今回開業したいずれの駅でも言えるだろう。

今度は富山駅で東京ゆきの表示を眺めてみたい。

号泣してしまうかもしれない。

 

それにしても、だ。

 

本当に私が愛してやまない北陸の地に、

私が生まれる前から構想があった新幹線が、

ついにやってきたのだ。

 

私と相方は手元のきっぷを確認し、

最後部の12号車へ向かった。

 

300キロで走ることを前提としていないもので、

JR東日本の車両にありがちな

「ぬめっと」したデザインではない。

見れば見るほど美しい車両だ。

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かつて500系新幹線が登場した時は

男前な車両だなと思い、

800系新幹線が登場した時は

和服を来た美少女だと思ったが、

E7系W7系)は美女だと思う。

それもゾクリとするような、

誰もがうらやむ、絶世の美女だ。

 

一度でいいから

500系と並んだ姿を見たかったと思う。

私が生きてるうちは叶わないだろうが、

死んだ頃には何処かの博物館で並んでいるかもしれない。

 

長野開業時のE2系が愛想もへったくれもない車両であることを考えれば、

ここまで待ってよかったではないかと純粋に思う。

 

ずっと眺めていたいがそうも行かない。

私と相方は襟元を正し、新幹線に乗り込んだ。

  

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