北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

北陸新幹線はくたか556号・特急はくたか5号

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その朝、私は相方と共に金沢駅にいた。

これから開通してまもない北陸新幹線で東京へ向かう。

 

アテンダントさんに迎えられ、

北陸新幹線はくたか556号のグランクラスに足を踏み入れる。

とてもではないが日本の鉄道車両にいるとは思えない。

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一車両の定員はわずか18人。

私達の前の列にいた3人組がひたすら

「キャー、凄い!」などと言い続けているもので、

私達のコーフンが目立たず助かる。

 

車内放送が「グランクラス・グリーン券をお持ちでない方の11号車・12号車の見学はお断りします」と告げている。

その場にいるだけで嬉しい。

 

 

 

8時20分、

北陸新幹線はくたか556号」は出発していた。

座席ひとつに興奮して、

まさに気づいたら動いていたのだ。

そんな訳で金沢市内の光景もまったく憶えていない。

 

さて、 

新幹線開業前の「はくたか」も8時20分に金沢を出発していた。

福井を7時30分に出発した「はくたか5号」越後湯沢行きだ。

私は1年前の時刻表を開いた。

E7系が「あさま」としてデビューした時のものだ。

 

「もう富山入ってる」

相方がいった。

8時28分、右手におやべクロスタワーが見える。

 

「特急はくたか5号」なら、

まだ津幡にも到達していないであろう。

 

8時33分、新高岡に到着。

金沢からまだ13分しかたっていない。

嬉しいことに金沢方面のホームにも

大勢の客の姿が見える。

 

大きくとられた窓ガラスからはイオン高岡が見える。

言い方を変えればイオン高岡しか見えないが、

このあたりはこの十年で一気に商業施設や住宅が増えたところだ。

 

私が20年前に高岡で暮らしていた時は

このイオンもなく、あたり一面田んぼであり、

城端線気動車ディーゼル音を響かして走っていた。

 

空は北陸特有の灰色の雲に覆われているが、

新高岡駅のホームは明るい。

北陸本線の高架駅は福井も小松も薄暗いし、

金沢など気が滅入るほど真っ暗であるから、とにかく明るく感じる。

 

8時34分、本当に気づけば出発している。

 

なお「はくたか5号」の高岡着は8時43分であった。

わりと頑張っていたとは言えないか。

 

8時39分には富山到着を告げるアナウンスが流れる。

は?と思う間もなく呉羽山が見えてきた。

2年前まで自分が暮らしていたマンションが見える。

神通川をゆっくり渡る。

一段高い位置から見える富山の街が新鮮だ。

 

8時43分、富山に到着。

金沢からの所要時間は途中新高岡に停車しても23分、

はくたか5号」はまさに高岡に着く時間だ。

 

しかし、

はくたか5号」も富山には8時55分には着いていた。

はくたか」同士を比べれば所要時間の差は僅か12分。

 

北陸線の金沢〜富山の営業距離は59.4キロに対し、

新幹線は58.6キロ。

いかに北陸本線の線形が恵まれていたか、何となく分かる。

 

「かがやき」はもっと早い、と突っ込まれそうだが、

朝晩しか走っていない。

 

8時44分に「はくたか556号」は富山駅を出発。

 

永く暮らした富山の街が、

シンカンセンから見るだけで大都会に見える(笑)

 

改めて聞く「東京行き」のアナウンスも新鮮だ。

私は昔、東京で暮らしていた友人に

「富山って上野発の夜行列車で行く所だろ」と言われたことがある。

事実であったが何だか悔しかった記憶がある。

 

あの友人を捕まえてこの新幹線に乗せてみたいが、

今や何処で何をしているのかも知らない。

 

立山連峰は厚い雲に覆われている。

天気さえよければ剣岳薬師岳も見えたであろうに、

まったくもって残念だ。

また乗りに来なさい、そう言われているような気もする。

 

8時45分には稲荷公園の脇を通過し、

8時47分には常願寺川を渡っている。

8時56分にはもう新黒部に着いている。

この駅もやはり窓が大きくとられて明るい。

 

この駅からもグランクラスへの乗車があり、

大方の席が埋まった。

すかさずアテンダントさんが軽食と飲み物を届けている。

 

はくたか556号」は気づけば新潟県を走っている。

9時6分に青海のセメント工場が見えてきた。

9時7分には姫川を渡っている。

車内放送で「えちごトキメキ鉄道」という言葉が聞こえた。

9時10分、糸魚川に到着。

 

新黒部からまだ13分しかたっていない。

 

仮に新黒部駅のすぐ隣にある北陸道・黒部ICから自家用車で

高速を走ったとすればまだ県境にすら達していないだろう。

 

以前の「はくたか5号」の糸魚川着は9時42分だった。

北陸線の営業距離は138.4キロ。

新幹線の営業距離は131.6キロ。

時間差は32分。

 

正直に言って「圧倒的に」早くなった、

とは言いがたい。

実際に乗っていても、

以前の感覚からは「早く」なったような気がするが、

それほど「速い」とは感じない。

 

最高速度が260キロに抑えられていることもあってか、

余裕があると言うか、妙に淡々とした走りだ。

常に1分1秒のダイヤの乱れも許しません、

と気合入れて走っている東海道新幹線などと比べると、

おしとやかな新幹線であるような気がする。

 

9時23分、上越妙高に到着。

駅名板がJR東日本のデザインに変わった。

但し乗務員の交代は長野で行うとのこと。

 

さて、この駅と直江津を同系列で考えても仕方ないのだが、

はくたか5号」の直江津着は10時05分だった。

その差は42分だ。

やはり、圧倒的に早くなったとは言いがたい。

 

ところがこの先の区間で事態は急変する。

幸いにも直江津から長野へは1年前も

妙高4号」という列車があった。

 

妙高4号」の直江津発は10時13分であり、

これは「たまたま」奇跡的に接続がいいと言って良い。

 

さて、この「妙高4号」というのは

列車名こそついているが、

かつての特急車両を使った普通列車にすぎない。

  

北陸新幹線で異次元の領域を感じるのはこの先だ。

 

トンネルを抜け9時36分に飯山に到着。

野沢温泉も近く、まわりは一面雪景色だ。

ところがこの先のトンネルを抜けると早くも雪はない。

9時42分には長野新幹線車両センターが見えてきて、

9時47分に長野到着。

 

妙高4号」の長野着は11時53分着であったから

いきなり2時間以上引き離したことになる。

 

「はくらか556号」はここで後続の「かがやき506号」に

進路をゆずる。

「8分間停車します」

そんな放送が流れる。

 

せっかくなのでホームにおりる。

 

先発する「かがやき」を待つ乗客が列をなしている。

意外と言えば失礼かもしれないが、反対側のホーム、

飯山方面にも大勢の乗客が待っていたのは嬉しい光景だった。

 

9時50分、「かがやき506号」が入ってきた。

全席指定であることは案内放送を聞いて初めて知った。

最高速度も車両も変わらないのに優等列車に見える(笑)

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「かがやき」なんていうのも懐かしい列車名だ。

ずっと以前は長岡から金沢を結んでいた。

 

考えてみれば、

上越新幹線が開通する前に上野〜金沢を上越線経由で結んでいたのが「はくたか」で、

上越新幹線が開業してしばらくたってから長岡〜金沢を高速で結んだのが「かがやき」で、

北越急行ほくほく線が出来てから越後湯沢〜金沢を結んだのが「はくたか」で、

時期的にも共に走ることがなかった二つの列車が、

こうして縁のなかった長野駅に並んでいるのは

北陸の人間にとってささやかな喜びを感じたりする。

私だけかもしれないが。

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さて「かがやき506号」は金沢を8時42分に出発している。

ということは長野まで1時間8分で来たということか。

富山発など9時03分であるから47分しかかかっていない。

 

これには素直に感動してしまう。

 

 

 

富山県と長野県は地図上では隣接しているものの、

いわゆる「北アルプス」に阻まれて

アルペンルートを除くと直接行き来はできない。

そんな訳で、JRにしろ高速道路にしろ、

新潟県を通ることになる。

車で松本や諏訪に行くなら岐阜県に入り、

安房峠を利用したりもする。

 

JRなど以前は本当に直江津での接続が悪かった。

例えば長野から普通列車でちんたら直江津までやって来て、

ここまで普通で来たから富山までも普通で帰りたいところだが、

直江津発の普通列車は4分前に出発しており、

次は1時間後、で、結局特急に乗るハメになる、という

乗客いじめみたいなダイヤだったのだ。

 

そんな訳で、富山〜長野は特急を使っても3時間以上かかる印象が強い。

恐らく私も含め、多くの富山県民は長野は東京より遠い、

そんな印象を抱いているはずだ(笑)

 

それが1時間かからない。

 

信州の方にはもっと気楽に北陸に出てきて欲しいし、

北陸の方にはもっと気楽に信州に出かけて欲しい。

そう願わざるを得なかった。

 

9時52分に「かがやき506号」が先に出発していき、

9時55分、追うように「はくたか556号」も長野駅を出発。

 

これまでの駅が新しいもので、

急に駅も古びて見える。

この先は平成9年の開業だからもう18年もたつのかと思う。

 

景色も見慣れたものに変わる。

 

平成9年と言えば私はまだ20代半ばだ。

意気がって紙を茶色に染めていた。

まだ腹も出ていなかった。

それが今や、、、、

むなしくなるのでやめておこう。

 

時刻表を見ながら思い出したのだが、

この先の区間はいつから「長野新幹線」と呼ばれる

ようになったのだろう。

 

長野新幹線という名称に北陸が激怒して、

あの時JR東日本は大慌てで「長野行き新幹線」

なんていう妙な名をつけていたような気がするのだが(笑)

 

私は「何を北陸の人間は大騒ぎしてるのさ、長野新幹線長野新幹線のままで一生富山にも金沢にも来ないよ」と思っていた。

 

北陸新幹線の長野開業は平成9年10月1日だったが、

その半年前の平成9年3月22日、

北陸と首都圏を結ぶルートは大きく変化したばかりだったのだ。

前述の北越急行ほくほく線が開業しているのだ。

 

そう、長岡経由から越後湯沢経由になったばかりだったのだ。

 

ましてこの路線はもともとローカル線として建設予定だったものが

国鉄の予算不足で工事凍結となり、

それを首都圏と北陸の所要時間を縮めるために

高規格路線として整備したものだ。

 

そんなこともあって、北陸の皆さんは「ほくほく線」でガマンしながれ、

誰に言われている訳でもないが、

少なくとも私はそんな気がしていた。

 

そして、この「ほくほく線」開業で復活したのが昭和57年の上越新幹線の開業で姿を消していた「はくたか」だ。

運行開始当初は「ほくほく線」内の最高速度も140キロであったが、

じきに160キロに引き上げた。

 

在来線の時速160キロは新幹線の270キロより速く感じる(笑)

私はこのスピード感に夢中になった。

 

で、気合いれて走っていたと思えば

いきなりトンネル内の信号所で長い時間対向列車を待っていたりする。

イキな車掌さんなどは「本日は時間がかかるはくたかで申し訳ありません」

なんていう放送をかけていた。

 

さらに基本的には681系という160キロで走る車両なのに、

時折車両故障やらでボンネットの489系が来たりしたこともあった。

これにはちゃんと絵柄入りのヘッドマークもついており、

これはこれで貫禄があった。

最高速度が全く違うものでその時点で定刻運行は望めない。

 

いろんな意味で「ほくほく線」経由の特急「はくたか」は

私にとって魅力的な列車だったし、

これで充分だと思っていた。

まあ、あくまで鉄道好きな人間の見解にすぎないが。

 

そんなもので

北陸新幹線が正式に富山・金沢まで延伸されると聞いた時は、

心底驚いたし「ほくほく線どうするねん!」と真っ先に思った。

 

今度は「ほくほく線」の様子も見に行こうと思う。

 

10時06分、上田着。

まわりを見渡しても、

スマホや本を見ている人が多くなった。

 

さらに10分ほどで佐久平着。

 

軽井沢手前で初めて「E2」系とすれ違う。

長野新幹線E2系だと思っていたが、

時刻表を確認すればもはや5往復しか残っていない。

近年の新幹線車両の入れ替えは妙に早く感じる。

 

10時25分、軽井沢に到着。

グランクラスからも2人下車した。

各駅に止まって金沢から2時間。

 

ここのアウトレットも近くなるなーと思ったが、

まもなく富山に日本海側初のアウトレットができる。

 

10時34分、安中榛名駅を通過。

ここまで各駅にとまってきた「はくたか556号」であるが、

初の「通過」だ。

とはいえ通過するのは安中榛名本庄早稲田・熊谷の3駅だけだ。

 

グランクラスに身を委ねていると、

全部止まってもっとゆっくり走ればいいのに、

と勝手なことを考える。

 

はくたか556号」は高崎に10時41分に着いた。

 

この地には20年来の付き合いがある友人が暮らしているもので、

私はちょくちょく高崎までは来ていた。

高崎=越後湯沢乗り換えという図式が頭の中でできているので、

座ったままこの地に達しているのが不思議な気がする。

 

さらに不思議なのは時間的なことだ。

 

はくたか5号」が越後湯沢に到着するのは10時51分。

接続する11時05分発の「とき320号」は高崎に止まらないので、

高崎へは11時12分発の「たにがわ410号」を利用することになり、

高崎着は11時41分着。

 

はくたか5号と比べると1時間の短縮なのだが、

手前の長野では2時間短縮 している訳で、

「早くなった」というインパクトが薄れてしまうのが残念だ。

 

「自由席では一人でも多くのお客様が着席できますよう、皆様のご協力をお願いします」

そんな放送が流れている。

流石は首都圏が近い。

 

大宮には11時05分着。

はくたか5号」を受けた「とき320号」は大宮11時54分発となっているから

11時53分には着いていたとと思われ、

その差は48分となる。

上越妙高直江津の到着時間差は42分だったのに、

その差はたいして開いていない。

 

上野、東京も以下同じ。

 

私は席をたつのが惜しくて、

上野発着の記憶がまったくない。

気づけば東京駅に着いていた。

11時32分。金沢からの所要時間は3時間12分。

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以前の「はくたか5号」+「とき320号」なら

12時20分着だった。

やはり「ほくほく線」経由の「はくたか」は

頑張っていたなーと改めて思う。

 

だが、金沢を8時42分に出る「かがやき506号」を利用していれば、

東京に11時16分に到達してしまう。所要時間は2時間34分。

2時間34分というのは「はくたか5号」の金沢〜越後湯沢間の

所要時間と一致する。

 

越後湯沢〜東京分の時間がすっぽり「浮く」訳で、

「新幹線」の持つ底力を感じてしまう。

また「乗り換えなし」もやはりありがたい。

 

以前はあの雪深い越後湯沢で乗り換えていたのだ。

冬などありえない寒さだった。

 

さらに「はくたか」は雪で遅れることも多かったので、

その遅れを上越新幹線に持ち込まないため、

JR東日本は必死だった。

 

「乗り換え改札できっぷは拝見しません!そのまま進んでください!」

越後湯沢の駅員がいつも叫んでいたような気がする。

 

上越線が除雪のため、本日は長岡経由になります」

なんてことも多々あった。

たまに、ではなく、多々だ(笑)

 

でも、みんな過去の話だ。

 

私は東京駅で出発表示を眺める。

多種多様な行き先に今回ようやく「金沢」が加わった。

 

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首都圏から、北陸は圧倒的に近くなった。

ぜひ全国の皆さんに北陸を訪れて欲しいし、

北陸の人間にも近距離でいいから利用して欲しいものだ。

 

ちなみに富山の友人のフェイスブックを見ても、

20人くらいは「見た」との記述があるが

実際に「乗った」と書き込んでいるのは未だに1人だけだ(笑)