北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

あいの風とは何ぞや 〜新湊大橋・あいの風プロムナードを渡る〜

DSC06328-3.jpg

 富山を訪れてどうしても行きたかった場所のひとつに

「あいの風プロムナード」がある。

 

山新港には平成24年に「新湊大橋」という

日本海側最大の美しい斜張橋が開通したのだが、

平成25年に自転車歩行者道の供用が開始された。

その名称が「あいの風プロムナード」とのこと。

 

鉄道会社名といいこの施設名といい、

富山は「あいの風」なんて言葉が好きだなあ、と思う。

 

 

 

富山の言葉かと思ったが、

石川県の和倉温泉には

「あえの風」なんていう旅館もある。

果たしてどんな意味があるのか調べてみた。

 

 「あいの風」とは、春から夏にかけて吹く北東のさわやかな風で、古く万葉集の時代から豊作、豊漁等「幸せを運ぶ風」として県民に親しまれています。  

この「あいの風」のように県内を東西に横断し、県民に豊かさ、幸せを運び届けることができる鉄道、また、利用者との「出会い」を大切にし、県民に「愛」される鉄道を目指したいという姿勢を表すものです。

(あいの風とやま鉄道株式会社HP・社名の由来より)

 

あいの風、という言葉が北陸地方にある。いささかロマンチックに響くけれど、実際には、初夏から盛夏にかけて吹く東風、を意味しているらしい。ところによっては、あえの風と呼んだり、あゆの風といったりする。日本海に面した地域では広く使われているそうだ。

奈良時代越中、つまり今の富山県国司として赴任した大伴家持が、この言葉を取りこんだ歌を万葉集に残している。「あゆの風 いたく吹くらし」。ひらがなやカタカナがなかった時代なので、まず漢字で「東風」と表し、万葉がなで注釈をつけた。この歌でもうかがえるように、海を荒らす風だ。優雅な風ではない。

▼同じように東風と書いても「こち」と読む場合には、ずいぶんと意味あいが違ってくる。平安時代菅原道真がよんだ有名な歌が、良い例だろう。「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花」。春の到来を告げる風、を意味している。歳時記では「あいの風」は夏の季語。これに対し「こち」の方は、春の季語となっている。

▼このところ日本列島のお天気が変だ。お盆を過ぎたのに前線が居座り、梅雨に戻ったような印象を受ける。地球温暖化のせい、と断言できるわけではないが、そうでない、とも言い切れない。「あいの風」や「こち」といった味わい深い言葉がまとう季節感も、いずれ失われるのではないか。杞憂(きゆう)であってほしい、と思う。

日本経済新聞社説・2014年8月19日付)

 

日経社説の「海を荒らす風だ。優雅な風ではない」の一文に思わず吹き出す。

  

さて、新湊大橋を公共交通機関で訪れるにはどうすればいいか。

 7.10.56.png ヤフー地図より

新湊大橋はかつての新湊市、現在の射水市にある。

もっとも簡単なのは高岡から万葉線に乗り、

終点の越ノ潟へ行く方法。

 

越ノ潟から渡し船で対岸の堀岡に渡り、

「あいの風プロムナード」で戻ってくる、

それが当初考えたルートだった。

 

「北陸おでかけパス」を所持していると、

万葉線の一日乗車券が割引になるのも魅力的だ。

(800円→500円)

 

ただ、万葉線が往復になってしまうのが

個人的には気に入らなかった(笑)

 

続けて考えたのが富山地鉄のバスで

新港東口へ向かう方法。

 

そしてもうひとつ。

この日は土曜日だったもので、

射水市コミュニティバス

ライトレールの岩瀬浜駅まで乗り入れてくる。

 

このバスに乗って新湊大橋を目指すことにした。

syuuyuuroute.jpg

DSC06315.jpg 

岩瀬浜の駅前に新湊からのバスがやって来た。

下りてきたのは2人。

乗ったのは私1人。

 

このバスのおかげでライトレールと万葉線という

富山の鉄道2路線を回遊出来るにも関わらず、

PR不足なのかあまりにも寂しい限りだ。

 

なお、このバスそのものは

北陸新幹線開業に合わせて運行を開始した訳でもなく、

新湊大橋の開通に合わせて運行を開始した訳でもない。

もう何年も前から週末限定で運行されてきた。

 

雑誌「とれいん」のブログで以下のような記事がある。

2010年3月に書かれた

この記事を読んでも「乗客は1人だった」とある。

 

 今も運行されているのは

「奇跡」であるのかもしれない。

  

車内には料金箱はおろか降車ボタンすらない。

運転手が聞いてくる訳でもない。

ついでに言えば表に行き先表示すらない(笑)

DSC06316.jpg 

黙ってると橋を渡って海王丸パークまで行かれても困る。

私は運転手に「新港東口まで行きたい」と言った。

「はいはい」と運転手は言った。

 

バスは富山ライトレール沿いの県道を「南下」する。

原崎交差点で右折して国道415号線を西に向かう。

この交差点、左折をするとすぐにライトレールの踏切がある。

 

ライトレールが開業すると、

運行本数が3倍にもなったのでクルマの大渋滞が発生したところだ。

今は信号機などとの連動でだいぶ解消された「らしい」。

 

さらにライトレール直後、

路面区間ではクルマとの接触事故が多発していた。

路面電車に慣れているはずの富山で何で?と思ったが、

その理由は「電車が静か過ぎて気づかない」というものだった(笑)

 

素晴らしい乗り物が出来ても

つくづく「クルマ」には歓迎されないなー、

なんて思った記憶がある。

 

国道415号線に入ったところで、

フィーダーバスに追いついた。

フィーダーバスは富山ライトレールが運行しているもので

蓮町から四方方面、岩瀬浜から水橋方面へアクセスできる。 

DSC06318.jpg

bus_linemap.gif 

 8.04.03.png

 四方の先で今度は地鉄バスの新港東口行きに追いついた。

DSC06319.jpg 

さて、このバス、いたって静かである。

「次は◯◯です」なんていう車内放送がないのだ。

乗客が私ひとりで行き先も告げているから

単に放送を流していないだけなのか。

 

射水市コミュニティバスの時刻表を確認すると、

岩瀬浜から海王丸パーク方面の欄にこんな注意書きがある。

 

「このバスは射水市内のバス停では下車のみ可能です」

 

逆方面にはこうある。

「このバスは乗車されますと、ライトレール岩瀬浜駅まで下車することはできませんのでご注意ください」

乗ったら最後だぜ、なんて言われているような恐ろしい響きだ。

 

あくまで射水市岩瀬浜駅を結ぶことだけが目的で、

市内だけの利用は想定していないのだ。

何だかもったいないなと感じてしまう私は

単に貧乏症なのであろう。

DSC06323.jpg

岩瀬浜からの所要時間約25分で新港東口に到着。

 

ここでも特に案内があったわけでもなく、

単にバスが停車して扉が開いただけだ。

 

私はこの場所を知っているからいいが、

知らない人間なら不安になるだろう。

 

運転手に500円支払ってバスを下りる。

バスは早々に走り去っていった。

 

何ともやる気も存在意義も感じないバスだな、

なんてしみじみ思う。 

www.city.imizu.toyama.jp

DSC06324.jpg 

橋の開通、さらに「あいの風プロムナード」の供用開始で

廃止されたと思い込んでいた

渡し船が現役だったのが予想外だった。

DSC06326.jpg 

DSC06327.jpg 

さて、あいの風プロムナードである。

利用時間は6時から20時で時間外は閉鎖されるとのこと。

定員39人の巨大エレベーターで高さ40メートルまで上がる。

DSC06330.jpg

車道直下に設けられた歩道の長さは480メートル。

自転車も「押して」通行可能。通行は無料。

 DSC06332.jpg 

もっとスリリングなものを期待していたが、

両側はガラスで覆われ、さらにフェンスまである。

そんな訳で視界も悪い。

 

あくまで「安全第一」の歩道なのだ。

当然といえば当然なのだが、

どうにもこうにも物足りない。 

DSC06333.jpg 

ガラス拭きをしていた作業員の方。

メンテナンスも大変そうだ。

DSC06338.jpg  

対岸に渡り、エレベーターを待つ。

するとエレベーターの中から見覚えのある顔が出てきた。

「あれ?」と思う。

先ほど乗ってきたバスの運転手だ。

海王丸パークからやって来たのか?

 

エレベーターで下ると、

目の前の駐車場に先ほど乗ってきたバスが止まっている。

私はてっきり海王丸パークが終点と思い込んでいたが、

新湊大橋西桟橋口なんていうバス停があるのだ。

 

それならここまで乗ってあいの風プロムナードを渡り、

渡し船で戻ってくることも出来たということではないか。

 

「あいの風プロムナード」からの眺望がイマイチであったため、

私は車道から海を眺めたいと思った。

しかしこのバスに乗ると

強制的に岩瀬浜の駅まで連れて行かれてしまう。

 

どうにもこうにも都合が悪いバスである。

 

私はおとなしく万葉線で高岡に向かうことにした。

DSC06342.jpg 

DSC06347.jpg 

DSC06350.jpg 

運賃・時刻などすべて平成27年4月現在のものです。