富山に住んでた頃は、
そこいら中にラーメン屋があったもので、
何だかんだで週に2〜3回はラーメン屋に行っていた。
ま、独り暮らしだったというのもあるし、
飲みに行けばシメはラーメンというパターンだったし、
何よりまわりが恐ろしくラーメン好きばかりだった、
というのも理由のひとつ。
同僚と昼飯に行く=ラーメンであったような気がするし、
よくよく考えれば同僚と定食屋なんて
ほとんど行った記憶がない(笑)
その反動からか、
福井に来てからラーメン屋に行く機会が激減した。
カラダのことを考えればそれでいいとは思うが、
やはり時折無性にラーメンを欲する時がある。
ただ、今や何処のラーメン屋も個性が強くなりすぎて、
もはや本来のラーメンという食べ物がどんなものであったのか、
時折忘れてしまいそうになる。
北陸各地には何処に行っても「8番らーめん」というチェーン店があるけれど、
地元の方は「あれはラーメンではなく8番らーめんという食い物だ」
なんてことを言われるし、何となく分かるような気がする。
で、やはり富山にいた頃、
さんざんラーメン屋に行ってどこでもおいしく頂いてはいたけれど、
なら2回、3回と通う店があったかと言えば
その数は恐ろしく少なくなる。
結局何度も行ったのは
「富公」さん、「まるたかや」さん、「塩苅食堂」さんといった、
昔からある昔ながらのラーメン屋ばかりだった。
そんな普通の、ホッとするようなラーメンが食べたい。
色々しらべてみると、
気になる店が何軒かあったもんで、
でかけてみることにした。
ついでに最近は鉄分も不足しているもんで、
一駅でも二駅でもいいから電車にも乗りたい。
福井駅前広場の工事は大詰めにさしかかり、
だいぶスッキリしてきた。
福井鉄道の電車も深夜に試運転を行っているそうだ。
延伸に伴い廃止となるのが現在の福井駅前の電停。
3月27日からはヒゲ線の運行本数も減るもので、
それがつくづく残念で仕方ない。
福武線の市役所前から福井駅なんてたいした距離ではないけれど、
西武百貨店なんか行こうと思えば、
大名町のでかい交差点をわたらないといけないもので、
実は案外「行きづらい」。
昨年、この商店街でイベントをやっていた時、
ヒゲ線の仮駅が西武の前に設置されたことがあった。
その時に「意外とこの場所は使い勝手がいいかも」なんて
感じた記憶がある。
今の電停も移設の方がいいと思うけど、
そんなことを考えるのは僕だけなのかな(涙)
↓昨年の仮駅の様子。右が西武百貨店。
福井駅前を出発した電車は市役所前で方向をかえ、
足羽川を渡る。
その先にある公園口電停は「足羽山公園口」に、
木田四ツ辻電停は「商工会議所前」に、
3月27日から電停名が変更されるとのこと。
今回はここで下車。
この駅も以前は「福井新」と称していた駅で、
こう考えると福井鉄道とはわりと駅名を変える会社とも言える(笑)
昔の「武生新」なんて駅名も独特でカッコいいなー、
なんて思っていた記憶はある。
赤十字前駅は福鉄では数少ない有人駅のひとつで、
愛想のいい女性の駅員さんが、
寒空の下表で出迎えてくれた。
福井駅前からの運賃は170円。
駅前に停まっているワゴン車は赤十字病院と駅を結ぶシャトルバス。
しかしながら僕が乗ってきた越前武生行きの電車からも、
その後にきた田原町行きの電車からも乗り継いだ客はいなかった。
踏切を渡り、JRの下をくぐり、
西に向けて住宅街をぶらぶら歩く。
目的の店「まるせい」に着いたのは10時50分。
「食べログ」によると11時からとあったもんで、
近くの神社を参拝。
で、11時にお店に伺ったらまだ店は開いていない。
11時30分からのようである。
そんなもので近く(でもないが)のコンビニで時間を潰して、
再び店の前に行ったらすでに何人か並んでいた。
店主らしき方がのれんを出し、
店の前に並んでいた方が吸い込まれていく。
この時11時20分。
僕はカウンターの端に座ったが、
この時点ですでに先客は10人ほどいた。
メニューはいたってシンプルで、
中華そば、チャーシュウ麺、
サイドメニューが唐揚げ、餃子、焼き飯。
中華そばとライス、唐揚げのセットメニューを注文。
こちらのお店の特色として、口コミを読むと
「とにかく時間がかかる」とのこと(笑)
特に慌てる必要もないもので、
でんと構えて待つことにする。
それにしても11時30分には席が埋まり、
並んで待つ人が現れたから人気店であるのは間違いないだろう。
場所も住宅街の中で通りに面している訳でもない。
昼間だけの営業で日曜定休だ。
この人気の理由は何か。
うう、早く食べたい。
早めに入店したとはいえ、
僕はちょうど2回戦目の先頭くらいの客であったようだ。
先客のほとんどが支払いを終えて出て行った11時45分すぎ、
唐揚げと中華そばが運ばれてきた。
具はチャーシューとネギ、シナチクのみ。
美しく澄んだ琥珀色のスープにやはり澄んだ脂が浮いている。
太くも細くもないストレートの麺をすすれば、
麺にまとわりついたスープの旨味が口いっぱいに広がる。
チャーシューの見た目は脂身も少なく硬そうだけど、
口に含むと「ホロホロ」と崩れていく、
そんな感じ。
味もしっかり付いているが全然くどくなく、
スルリと麺と共に入っていく。
シナチクもネギも、
そこそこの量が入っているにもかかわらず、
その存在を主張しすぎることなく、
やはりスルリと口の中に入っていく。
何なのだ、この一体感。
麺とスープという主役を具が一切邪魔していない。
全てが計算され尽くしたかのような、
絶妙なまとまりと安心感。
仮にこの中華そばに「海苔」や「ナルト」が入っていれば、
その「まとまり」は全て崩壊してしまいそうな気がする。
食堂で食べる「懐かしい」味の中華そばではない。
「ホッとする」ような味でもない。
まさに「至福」の味。
気づけば無我夢中で麺をすすり続け、
スープを最後の一滴まで飲み干していた。
うう、ヤバイ、
旨すぎて唐揚げにもご飯にも手をつけていないぞ(笑)
唐揚げも実食。
外はカリカリで、下味がしっかりついた濃い目の唐揚げ。
別皿に添えられたマヨネーズがマヨラーには嬉しい。
ご飯の量は少なめだけど、
まあ僕のような年頃の人間にはちょうどいいだろう。
待っている間は、
「これだけ流行ってるンだからバイトでも雇えばいいのに」
なんて考えてしまったりもしたが、
ひたすら真面目にラーメンを作り続ける旦那さんと、
フロアを愛想よく動く奥さん2人だけでやってるからこその
世界がこの店にはあるンだろうな、
てなことを感じた。
もう一人いれば恐ろしく効率はあがるのだろうけど、
このご夫婦は一切そんな効率の良さなんて求めていないのかもしれない。
お客さんもみんな心得てるからでーんと構えてて、
次々とやってくる割に全然せわしなさもない。
勘定のたびに奥さんが深々と頭を下げているのも
何とも印象が良かった。
旦那さんの「ありがとうございました」なんて声も奥から聞こえてくる。
夫婦2人きりで商売をするって素敵なことだなーと
しみじみ思える一杯。
ごちそうさまでした。
ちなみに行くときは福井駅まで歩いて、
電車に乗って、再び歩いてと随分大回りをしたが、
店から我が家まで歩いても20分ほどだった。
まさに灯台下暗し。
素敵な店なんてのはあんがい近所にあるものなのかもしれない。