北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

男三人旅 〜台北は今日も雨だった・福州元祖胡椒餅と好公道の小籠包〜

南海電鉄なんば駅関空特急ラピートが入線してくると、

普段は鉄道になんぞ一切興味を示さないチョーナンと次男坊が

「おお」なんて言いながらスマホのカメラで写真を撮りだした。

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するとチョーナンが

「何か俺、この電車見たことあるような気がする」

などと言う。

「おめーさんが小さい頃な、鉄ちゃんに仕立てあげようと思って色々連れて行ったねん。失敗したけどな」

僕は言った。

「ふーん」とだけチョーナンは言った。

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チョーナンと次男坊と言っても

僕の息子ではない。

妹の子供だ。

以前は富山で暮らしていた僕のもとに毎年一家揃って来ていたし、

あっちこっち連れていっていたものだが、

チョーナンの中学進学と共に富山に来ることはなくなった。

 

妹の家に顔を出しても以前は二人して「ニイニ!」と

嬉しそうにとびついてきたものだが、

「どーも」に変わった。

そんな二人も春からそれぞれ大学生、高校生になる。

 

 

 

年末、妹の一家を訪ねた際、

せっかく共に進学だし、どっか連れて行ってやりたいと思い、

両方に声をかけてみたのだが、

チョーナンはさっぱり興味を示さない。

「だって動画で見た方が楽しいし、キレイやもん」

なんて言われる有様である。

 

一方、興味を示してくれたのは次男坊だった。

タイの線路市場の動画を食い入る様に見ている。

 

次男坊を数日でもいいから、

海外に連れだしてみたい、

そんな思いで妹にパスポートだけ用意しといてよ、

とお願いしていた。

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ところが3月に入ってチョーナンまで行きたいと言い出した。

別にそれは構わないのだが、

3人になると急に日付の調整が難しくなる。

結局、3人の日程が合うのは3日間だけ、となった。

ま、とりあえず雰囲気を味わってもらうだけでいいか。

そう考えて台湾に行くことにした。

 

ラピート内で缶酎ハイをプシュリ。

早めに関空に着いたので昼飯がてら生ビール。

飛行機内でも無論台湾ビール。

「飲み過ぎだよ」とチョーナンが呆れた声で言う。

やれやれ、相方以上にチョーナンの目は厳しそうだ。

 

トランスアジア航空GE601便は定刻に台湾・桃園国際空港に到着した。

僕の初めての海外は3年前のタイであるが、

その時も桃園乗り継ぎであったので、

人生初の海外という点で思い入れが深い空港である。

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その後、何回か台湾を訪れるたびにこの空港を利用しているが、

共通していえるのは間違いなく天気が悪いということか。

この日もまた、いつ泣き出してもおかしくないような

どんよりした雲が空を覆っていた。

 

さらに、寒い。

妹が「どんな服装で行かせりゃいいの」なんて言っていたから

石垣島の先だし、暖かいよ」

なんて適当なことを言っていたのだが、

半袖にパーカー一枚の僕には恐ろしく寒い。

甥っ子たちのザックには母心か、

ちゃんとコンパクトにまとまるアウターが入っていた。

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空港で両替をして、

爺ちゃんと婆ちゃん(僕の両親)から預かってきた小遣いを、

2人に渡す。

フツーの家族旅行なら、親が子供を連れて行き、

全部面倒を見るのが筋なのだろうけど、

残念ながらフツーの家族ではない。

 

きっぷを買うのも全部やってもらうつもりだし、

飯もその都度自分で払ってもらうなり割り勘でいくつもりだ。

「男三人、連れ同士で台湾へ」

そんな感覚でいて欲しかった。

 

まずは市内へ。

桃園空港から市内へはバスかタクシーでの移動となるから、

まずは各自でバスのきっぷを買ってもらう。

台北車站」って書いてる窓口を探して各自できっぷを購入。

 

「あの子ら何もできひんからな」

爺ちゃんにも、婆ちゃんにも、妹にも口酸っぱく言われていたが、

何だかんだで18歳と15歳である。

後ろから見ているとドキドキするが、

ちゃんときっぷを購入している。

 

係員にせかされるようにしてバスに乗り込み一路台北市内へ。

車窓に広がるのは明らかに異国の地。

高校に入ってからはチョーナンはよく喋るようになったのだが、

対して次男坊はわりと大人しく、

ほとんど感情を表に出さない。

 

そんな次男坊が見慣れぬ景色を食い入る様に眺め、

デジカメを手に次々シャッターを切っていく。

これだけでも一緒に来た価値があった、と、

アルコール依存症気味な叔父は思う。

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台北駅に到着。

今宵の宿は地下鉄で一駅、西門。

自販機できっぷを買ったチョーナンが「安いなー」と言った。

運賃は20台湾ドルだから80円弱。

それに気づいてくれれば充分。

さらに出てきたトークンを見て「何これ」と笑う。

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無事にホテルに到着。

相方と2人ならいつも窓もないような安宿だが、

ちょっとだけ奮発して今回は窓のある部屋に(笑)

トリプルの部屋を探したらあまり選択の余地がなかった、

というのが正直なところだが、

窓から外が見えるというのはやはりいいもんだ、と思う。

以前、「お、今回の部屋は窓があるぞ」と喜んで開けたら

そこには普通に廊下があったこともある。

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さて、飯だ。

「何か食いたいものはないのか」

僕は2人に問うた。

「台湾の名物って何なん」とチョーナンが言う。

この男、台湾に行くというのに一切下調べをしていないのだ(笑)

すると次男坊が「胡椒餅、小籠包」と言う。

なかなかやるな。

よし、行くべ。

 

胡椒餅は以前、松山の夜市で食したが、

それ以上の人気店が龍山寺駅の近くにあるらしい。

地図を眺めれば宿泊しているホテルからなら、

中山駅に行くのも龍山寺駅に行くのも大差ないように思えた。

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そんなものでぶらぶら歩いて龍山寺駅を目指す。

旅の無事を祈り龍山寺を参拝。

さて、胡椒餅のお店は何処だ。。。。

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福州元祖胡椒餅はまさに路地の奥にあった。

意識していなければ、

そこに店があるとは思えぬ場所である。

 日中だと待つのがあたりまえらしいが、

この時は閉店間際だったのかすぐに購入できた。

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龍山寺前の広場のベンチに三人並んで座り、

胡椒餅にかぶりつく。

「あつ!うめー!」

三人そろって似たようなタイミングで思わず声が出た。

「すんげー汁出てくる」

あふれる肉汁に悪戦苦闘しながらも、

2人の顔がヨロコビに満ちている。

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「全然違うもんだなー」

前回松山の夜市で食べた時と比較して素直に思った。

夜市で食した胡椒餅はもう少し皮が厚くて固めで、

餡もガッツリ胡椒が効いている、

そんな印象があった。

相方は「辛い、辛い」と水をがぶ飲みしていた記憶がある。

 

そんなもので10代にはちょいとスパイシーすぎる食べ物かと思っていたが、

福州元祖胡椒餅はそんなことはなく、

何とも優しい味わい、かつジューシー。

万人受けするのはこちらかな、

と思ったのはあくまで僕の感想。

考えてみれば機内食は食べてきたものの、

二人にしてみれば初の台湾グルメということになる。

 

この胡椒餅ひとつでチョーナンと次男坊の台湾グルメに関する興味は

一気に増したようだ。

「まだ食えそうか」と問えば、

二人して「まだまだいける」と言う。

龍山寺からは地下鉄を乗り継いで東門を目指すことにした。

 

この時点で2人には台湾の交通系カード「悠遊カード」を持たせてある。

ただでさえ安い台北市内の地下鉄が割引になるし、

距離によっては悩ましい台北のバスも悩まずにすむ。

何より手元にあれば「また台湾行ってみようかな」なんて思うのではないか。

そんな願いもこめて。

 

東門で地下鉄を降り、

目指したのは永康街にある好公道というお店。

台湾と言えば「小籠包」てな具合で、

名店、人気店数知れずあるし、

どこもおいしくいただいてきたが、

他の台湾グルメと比較すると若干「お高い」イメージがある。

 

だいたい、どこも8〜10個で180台湾ドル前後だから

700円弱といったところか。

それでもやみつきになる旨さがあるのも事実で、

毎回いろんな店を訪ねているのだが、

好公道は8個で90台湾ドルであるから

格安店といっていいと思われる。

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お店は1階が調理場と化しており、

中を通って2階へ上がる形となるので、

若干入りづらい感はあるが、

そのまま階段へ進む。

 

小籠包3つにエビシュウマイ、唐揚げなどを注文。

ビールとお茶で乾杯。

ほどなくして小籠包がやってきた。

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 一口食べた次男坊がやっぱり「熱っ」と言いつつも、

その表情は驚きとヨロコビに満ちたものとなり、

すぐさま次の1個へと手が伸びる。

チョーナン、僕、共に同じ。

 

他の有名店と比較すると、

好公道は若干皮が厚いような気もするが、

たっぷりのスープの旨味は申し分ない。

でかい唐揚げがやってくる。

でかいエビシューマイがやってくる。

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男3人は、ただひたすら食す。

「箸が止まらぬ」とはまさにこんな状況なのだろう。

会話はなけれど、口に含むたびに笑顔が浮かぶ。

僕はビールをぐびりとやって、

「美味そうに飯を食う男に育ってくれて良かった」と思う。

 

普段から僕は一人でウロウロすることも多いし、

飯屋でいろんな方々を観察するのも好きなのだが、

あまり美味そうに飯を食う男をお見受けしたことがない。

 

会話の「ついで」に飯を食べていたり、

スマホを眺めながら飯を食べていたり、

無表情で飯を食べていたり、

だいたいそんな感じである。

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僕と同世代の男連中なんて、

「並んだ割にビミョーだな」とか、

「なーんか味が落ちたよな」とか、

必ずケチを付ける輩がわんさといる。

そのたびに「もったいないなー」と僕は思う。

 

「あー、食った食った」

我がチョーナンと次男坊は満足気だ。

「明日何処行くよ」

僕は二人に尋ねた。

 

チョーナンは「さあ」てな感じで首をかしげている。

実は台湾行きが決まってから

行きたい所を考えておくようにと宿題をだしておいたのだが、

まったくもってやってる気配はない。

 

何だかんだで僕の甥っ子である。

血は争えぬし仕方ない。

すると次男は「千と千尋のとこ行きたい」と言った。

宮﨑駿氏は否定してるが九份か。

うむ、それでいい。

平渓線に足を伸ばして天燈上げをやってもいい。

あとは天気さえもってくれればいいのだけれど。

 

翌朝、僕は6時に目が覚めた。

2人はまだ爆睡中である。

 

僕は窓の外に目をやった。

台北の街は濡れていた。

行き交う車のワイパーが激しく動いている。

「土砂降り」

そんな言葉がぴったりな、雨が降っていた。

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