日曜の昼過ぎ、
クルマを彦根駅前の駐車場に入れて、
僕と相棒の男2人は街を歩き始めた。
彦根という街について、
特に知識はない。
城があることは知っている。
あとは僕が小学生の頃は新快速の終点だったとか、
やはり新快速に乗っていると彦根ではずいぶん乗降があるとか、
そんな程度だ。
最近は「ひこにゃん」で有名みたいだけど、
徘徊中年にはいまいち分からぬ世界である。
彦根市には人口が11万3000人ほどいるようであるが、
駅前は人通りも少なく、
とくに活気を感じる訳でもない。
ところがそんな印象は突き当りの彦根城の周辺でガラリと変わった。
観光客であふれかえっている。
さらにお堀沿いに進んだ先には、
「夢京橋キャッスルロード」なる
美しい町並みが広がっており、
ここもまた多くの観光客で賑わいを見せていた。
昨年訪ねた長浜も「観光地」という印象が皆無であったもので、
あまりの人の多さにとまどったが、
ここ「彦根」も立派な観光地なのだ、
ということをようやく知る。
滋賀県の平成25年度の資料を見てみれば、
彦根城には年間74万人以上の観光客が訪れているとのこと。
福井だと勝山の恐竜博物館が似たような数字だろうか。
ちょっと古い記事だけど、
J-CASTニュースでこんな記事も見つけた。
滋賀県彦根市にある彦根城の2007年度入場者が、前年度比61%も伸びて84万9056人に達したことが、同市観光振興課の調べでわかった。これは、NHK大河ドラマ「花の生涯」が放送された翌年の64年度に達成した約121万人に次ぐ多さ。同課は、イメージキャラクター「ひこにゃん」人気の効果が大きいと分析している。彦根城の入場者数は近年、40~50万人台で推移していた。 滋賀県の調べでは、07年の彦根市内の観光入り込み客数は、前年比51%増の405万6300人となり、過去10年間で最多となった。宿泊客数は21万1900人で、前年を下回った。
ひこにゃん恐るべし(笑)
夢京極キャッスルロードを過ぎると、
観光客の姿は皆無になり、
静かな住宅街が続く。
芹川なる美しい川を渡った先に、
蔦で覆われた怪しげな建物が姿を見せ、
その前に20人近い行列が出来ていた。
こちらが今回目指したお店「スイス」さん。
今回、彦根を訪ねた最大の理由はこちらのお店である。
先日、たまたまテレビでその存在を知り、
時刻表とにらめっこしていた。
そんな矢先、相棒から「明日、風呂でも行かね?」と、
連絡があった。
「明日はハンバーグを食べに出掛けるのだ」
僕は言った。
「静岡でも行くのか。それなら俺も行くぞ」
相棒は言った。
そういや相棒は
「静岡の『さわやか』って店のハンバーグが気になる」
と以前から言っていた。
「さわやか」には僕は何度か行ったことがあるけれど、
流石に福井から日帰りで行くには遠すぎる。
一番近い店でも浜名湖あたりまで行かねばならない。
「滋賀の彦根ってところに行くのだ」
僕は言った。
相棒は言った。
「ならちょうどいい、俺、アウトレットも行きたいし、乗せてけ」
と続ける。
おそらくアウトレットは竜王を指すのだろうけど、
そんなこんなでクルマで出掛けることになり、
福井を出たのは朝の6時前。
下道をちんたら走って滋賀県に入り、
滞在時間1時間ほどでようやく彦根にやってきた。
「スイス」さんには広い駐車場もある。
相棒は「腹減った、直接クルマで行こう」と言っていたのだが、
それなら街の徘徊が楽しめぬ、
おぬしも日頃から運動不足であろうと説得して、
わざわざ駅から歩いてきた次第であったりする。
久々に朝からハンドルを握りっぱなしで、
朝から食べたのはコンビニのホットドッグのみ。
空腹感は頂点に達していたが、
列の最後尾に並ぶ。
店内からは何とも「肉々しい」香りが漂ってくる。
「こりゃたまらんな」相棒は笑った。
並んでいる人数の割に、
30分ほどで店内に。
振り返ればやはり20人近い行列ができていた。
オムライスとハンバーグステーキを注文。
フロアには3人の店員さんがいて忙しく動きまわっており、
カウンターの中には奥様らしき女性と、
コンロの前にいる旦那さんらしき男性の姿が見えた。
どうやら調理は旦那さん1人でやっているようだ。
かなり待つことを覚悟したけれど、
ほどなくしてオムライスがやってきた。
僕らはテーブル席だったけど、
カウンターから旦那さんの動きを見てみたかったと思う。
卵でくるんだ、というよりは、
ケチャップライスの上に卵が載ってる、
そんな感じのオムライス。
一口食べた相棒が「うまっ」と言った。
僕も思わず「うまっ」と言った。
卵の焼き加減が何とも絶妙なのだ。
ところどころ「半熟状態」のままで、
これがうまい具合にケチャップライスに絡む。
続けてやってきたのが「ハンバーグステーキ」。
アツアツの鉄板の上に、目玉焼きと玉ねぎ、
そして何とも肉々しいハンバーグが
じゅうじゅう音をたてながら鎮座している。
そして、ハンバーグには普通なら添えられている
「ソース」がない。
まわりをみわたしてみたけど、そんなものはない。
ナイフとフォークもない。
で、そのままお箸で頂いたのだが、
「何じゃこりゃ」
の世界。
下味はしっかりついており、
なるほどソースなど不要。
噛めば噛むほど肉の旨味が口一杯に広がる。
見た目も「肉肉しい」のだけど、
本当に粗挽きの「肉」を食べている、そんな気がする。
しかし粗めに刻まれた玉ねぎの存在感もあり、
「これはハンバーグなのだ」と思う。
大げさでも何でもなく、
40年以上生きてきて、
これほどまでにシンプル、かつ美味いハンバーグを
初めて食したような気がする。
「もう2つくらい食べれそうだ」
相棒は笑った。
まさに同感。
最後は鉄板に残ったこげをこそぎ落として完食。
驚くのはさらにお値段で、
ハンバーグが500円、オムライスは400円。
2人で1800円。
こりゃ流行るわ(笑)
ごちそうさまでした。
駅へ戻りがてら、
せっかくなので彦根城にも寄ってみた。
ところがこのお城、
予想外に山の上にあり、
天守にたどり着く頃には男2人すっかりへばる(涙)
しかしながら眺めは良い。
いたるところに「世界遺産への登録を目指す」
そんな表記を見かけたけど、
すっかり「名ばかり」で量産されまくった世界遺産なんかより、
「国宝・彦根城」の方がよっぽどしっくりくるではないか、
それが正直な印象。
しっかり汗もかいたので、
長浜にある国民宿舎でひとっぷろ浴びて、
高速で福井に向かう。
ちょうど日暮れ時、
立ち寄った杉津のパーキングエリアから眺める敦賀湾が美しい。
夕日を眺めつつ、
「また彦根にハンバーグを食べに行きてーな」
相棒は言った。
「彦根といえばハンバーグだった」
僕は言った。
「晩飯どうするよ」
僕は言った。
「福井といえば秋吉だろ。運転したるからビールでも飲めばいい」
持つべきは友である(涙)
ふだんは1人でウロウロしてるけど、
たまには男2人でこんな旅もまた良し。
鯖江の秋吉に寄ってから僕らは福井に帰った。