前回も書いたが福井市の銭湯がピンチである。
昨年度だけで4店閉店して、
福井市内に関しては残す所わずか9店
時代の流れといえばそこまでだが
一応ヨソモノの僕にだって協力できることがある。
銭湯に行くことだ。
それ以外にはない。
僕が愛する昔ながらの食堂も、
実際に行って食事をする。
鉄道にしろ、バスにしてもそうだ。
僕にできることは「乗る」ことだけだ。
「行き」もせず「乗り」もせず、
失くなることを悲しんでも仕方ない。
ただ、銭湯に関してはいろいろネックがあって、
僕の場合、出歩くのがほぼ日中に限られる、
ということか。
それも昼飯を食べるために出かけるパターンが多いため、
多くの銭湯が15時ないし16時から営業となれば、
そもそも営業していない、なんてことになる。
逆に僕が愛する個人経営の食堂なんてのは、
閉店時間が早かったりする。
食べログで確認すると、
19時までなんて店がざらにある。
考える以上にチャンスは少ない。
その数少ないチャンスは、有意義に使いたい。
そんなもので前回に引き続き、
福井の食堂と銭湯を徘徊してみよう。
夕方、の福井駅。
たまたまそこに来たバスが田原町経由の丸岡城行きだったもので飛び乗る。
裁判所前までの運賃は100円。
ただし、次の西松本まで乗ると200円になる。
今回目指したのは養浩館庭園にもほど近い「宝永湯」さん。
ただ、「このあたりだろう」と適当にウロウロしてたら、
とんでもなく大回りをしてしまい、
すぐそこに見える県庁の建物を眺めながら、
別にバスに乗るより駅から歩いてきても大差なかったなと思う(笑)
福井駅東口にあった松乃湯さんが閉店された今、
福井駅からもっとも近い銭湯、ともいえる。
福井県庁を突き抜けてくれば徒歩15分ほどだろう。
これまでも営業時間前に前を通ったことは何度もあったが、
のれんがかかっているのは初見である。
何とも昭和を感じさせる建物に、
色鮮やかなのれんが嬉しい。
中は昔ながらの番台式。
浴室から出てきたおっちゃんが、
ボーッとパンツ一枚の姿で涼んでいる。
浴室内には先客1人。
細長い浴槽が一つと小さな水風呂が一つ。
建物は相当古い感じだけど、
床周りのタイルなどはまだ新しさを感じる。
カランが多くの銭湯にある、
熱湯と水が別々になっているわけではなく、
一口なんてのも案外珍しいのかもしれない。
湯温はまたちょうどいい。
僕がちょうどいい位だから、
ほとんどの方には「ぬるい」のかもしれない。
けど、暑い夏こそ湯船だよな、
もう喉はカラカラ、
僕の脳裏にはビールの3文字以外に存在しない。
裁判所前に戻り、
フェニックス通りを南下する。
それにしてもこの裁判所、
ほんと立派な建物である。
富山県庁と並んで、個人的には「北陸遺産」と称したい。
先日、「たきのゆ」さんにおじゃました時、
結局帰りのバスに乗りそびれ、
ぶらぶら歩いて帰ったのだけど、
その時に福井の繁華街である「片町」に、
なんだか妙に気になるお店を見つけていた。
果たしてやっているだろうか。
この周辺、わりとウロウロしてるつもりであったが、
今までこんな店があったなんて気付かなかった、
というのが正直なところ。
福井鉄道の市役所前駅からもほど近く、
まさに「片町」の入口みたいなところに「上海亭」さんはある。
店内には先客のご婦人が1人、
と思ったら店の方だったようで、
「いらっしゃい」と立ち上がる。
「半ちゃんセット」なる、
何となく想像できそうなメニューがあったので注文。
もちろんビールも注文。
アサヒかサッポロか選べたもんで、
サッポロを注文。
大瓶なのがしみじみ嬉しい。
「トントントントントン」と、
小気味良い包丁の音が聞こえてくる。
僕はビールをぐびりとやりつつ、
テレビを見ながら「半ちゃんセット」の到着を待つ。
フライパンを煽る音が聞こえてくる。
身なりのいい紳士が現れて、
「半ちゃんセットお願い」と言う。
「はーい」と奥さんの声が聞こえる。
ほどなくして、半ちゃんセットがやってきた。
中華そばと半分?のチャーハンの組み合わせ。
中華そばは、スープの色は濃い目。
福井の多くの店で見られる「あっさり」したものではなく、
「醤油」が効いている。
とはいえ、富山ブラックみたく強烈なものではない。
醤油の旨味が効いた中華そば。
奇をてらったラーメンより、
すーっと胃の中に入っていく。
ビールをぐびりとやってチャーハンを食す。
こちらはごま油が効いたあっさり目。
醤油の効いた中華そばとの相性が実にいい。
ご近所の蕎麦屋さんの女将さんは、
このお店のチャーハンについて、
こんな記述をしている。
「共働きの両親に代わって、いつも晩ごはんを食べさせてもらったおふくろの味、的なお店」
「弟と2人で500円握りしめ、奥の席でチャーハンを食べていた」
永らく続いてるお店には、
色んな物語がある。
こんな福井随一の繁華街の片隅にあるにもかかわらず、
営業時間が午前10時から午後8時まで、
なんていうのも変わってる。
要するにこの片町という繁華街に飲みに来るお客さん「に」ではなく、
あくまで地元というか周辺のお客さんに愛されてきたお店、
ということだろう。
先の女将さんの記述が、
10年前の出来事なのか、
20年前の出来事なのか、
通りすがりの酔っぱらいにはわからない。
けど、幼い姉弟がそこで食事をしていても、
何ら違和感のなさそうな、
居心地の良さが、
上海亭さんにはあるような気がする。
中華そばとチャーハンのセット、
さらに大瓶一本飲んでも1500円でお釣りがきた。
一応、普段の僕は
夜は酒とつまみがあればいいもんで、
ほとんど炭水化物を口にすることがない。
40過ぎのおっさんにしては食べ過ぎかな、とも思う。
ま、たまにだからいいか(笑)
で、結局家まで歩いて帰った僕はすっかり汗ばんで、
帰宅するなりシャワーを浴びたことは言うまでもない。