北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

福井県池田町・部子山ぶらぶら 〜山と酒と相棒と〜

車は福井市内から国道158号線を大野方面へと走り、

美山町から右にそれて足羽川沿いに池田町へと向かっていた。

目指すは大野市との境にある部子山(へこさん)。

 

f:id:fukuitabi:20161026084041j:plain

 

助手席の相棒は前日、

転勤が決まった後輩の部屋探しのため、

能登まで行っていたらしく、

よほど疲れたのか寝たり起きたりを繰り返していた。

 

車内では最近相棒がハマっているやらで

中森明菜」さんの曲が延々と流れていた。

僕は中森明菜さんを聴いていた世代ではあるが、

あまり車の中で聴くには適しているとは思えない(笑)

 

f:id:fukuitabi:20161026084118j:plain

 

いつだったか、今回の相棒が

「来年には富士山に登ってみたいな」なんてことを言い出した。

そういった考えをもつのは決して悪いことではない。

 

ただ「山に行きたい」などと僕に言う方は、

僕がかつて山小屋に勤めていた、

そんな話があるのが大前提で、

言うなら「社交辞令」みたいなものであったりする。

この相棒にしても同様である。

 

ただ、どうしても誤解されてしまうのだが、

僕は登山が好きで山小屋で働いていたわけではなく、

いちいち山に登るのが面倒だけど、

山にいるのが好きだから山小屋にいただけである、

ということだ。

 

さらにその後山に行き続けたのも、

景色のいい場所でビールを飲む、

それが好きだっただけだ。

だから大半は1人で行っていたしろくな装備ももたないし、

何の技術をもっている訳でもない。

 

 

 

富山の職場にいた頃も、

「山行ってみたいンですねー」なんていう後輩は多々いたが、

「なら行くか」と問えばたいがい尻込みするし、

実際一緒に行った輩がその後山に行ってるかといえばほぼ皆無だ。

 

唯一例外が1人だけいて、

立山を縦走して下山後、そのまま登山用具店に直行、

登山靴や雨具、ザック、バーナーなんかを買い求めた男がいた。

 

その後はいい相棒となっていろんな山に出かけた。

かなり珍しいパターンだといっていい。

 

富山のいいところは何だかんだで登山口まで

電車やバスといった交通機関で行ける場所が多いということで、

途中で酒を飲んでも帰ってこれるというのが最大の魅力だった。

 

当時の相棒は僕以上に酒飲みだったから、

山小屋に着けばビールで乾杯、

山頂に着けばまた乾杯、てな具合だった。

 

福井の場合は山に行こうと思えば、

間違いなく車が必要だし、

その結果、すっかり山とは縁遠くなってしまった。

そんな矢先、「やっぱり富士山に行ってみたい」と相棒が言った。

 

案外本気なのかもしれない。

ただ、富士山なんていうのは初心者が登るような山ではない。

まずは身近なところで山の雰囲気を味わう、

それは必要なことであろうとは思う。

 

f:id:fukuitabi:20161026084217j:plain

 

池田町の中心部の手前で左折して、

水海という集落を目指す。

集落でさらに左折して林道へ。

木々の色づき加減をみているだけで、

一気に高度を稼いでいるのが分かる。

 

f:id:fukuitabi:20161026084301j:plain

 

部子山のことを知ったのは福井でそこそこ眺めが良さげで、

かつあまり歩かなくてもいいような山を捜した結果である。

標高1464メートルもあるにも関わらず、

山頂付近まで林道が達しており、

10分ほど歩けば山頂につける、とのこと。

 

10分が物足りなければ、

手前に牧場があるらしく、そこに車を停めれば

30分ほどで山頂につける、らしい。

 

日常生活においてほぼ「歩く」ということがなく、

休みはパチンコ屋に入り浸っているような相棒と行くには、

ちょうどいい山のように思えた。

 

いきなり刈込池や夜叉ヶ池なんか行ったところで、

二度と行きたくないなんて言われるのは悲しいし。

 

林道はぐいぐいと高度をあげ、

かつ狭くなっていく。

 

f:id:fukuitabi:20161026084354j:plain

 

福井市内から1時間半もかからずに「能楽の里牧場」に到着。

快晴とは言い難いが、

眺めはよさげである。

で、車を降りた瞬間、「さむっ」と思った。

 

気温は恐らく1ケタであろう。

牧場なのに牛の姿がみえないこの場所に、

秋の心地よさからは縁遠く、

むしろ冬を思わせる冷たい風がひゅーひゅーと吹いていた。

 

f:id:fukuitabi:20161026084433j:plain

 

林道の遥か下から見えていた展望台らしきものがあるが、

人影はなく、施錠されていて入ることはできない。

下調べで様々な方のブログに目を通したが、

開いていたなんていう記述は一切なかった。

 

f:id:fukuitabi:20161026084505j:plain

 

ダウンでも着てくればよかったと思うが、

景色そのものは圧巻だった。

道中こそ狭かったが、

労せずこんな景色を堪能できる場所が福井にはあるのだ。

そんな感動の方が大きい。

 

 

 

本来はここから山頂まで歩くつもりでいたが、

相棒に問えば「寒いし車で行こう」となった。

 

f:id:fukuitabi:20161026084622j:plain

 

車を進めて林道の終点に。

駐車場には福井ナンバーの車が2台。

 

とりあえず山頂までは10分とのことで、

歩きはじめる。

3分ほどすれば背後で相棒がぜえぜえ言うのが聞こえてきた。

何が富士山だと思うが余計なことは言わない(笑)

 

f:id:fukuitabi:20161026084651j:plain

 

富士山はかつて5回登ったことがあるが、

いずれも添乗員の仕事で、だった。

 

夏場のシフト表を見たら、

僕の上下の子は東京ディズニーランドや北海道とか、

そんな楽しげな行き先が入っているのに、

僕のところだけは「富士山」「富士山」「富士山」てな具合である。

 

このシフトをつくる担当者も

「山小屋にいたくらいだから山好きでしょ、たくさん入れといてあげたから」

と訳のわからないことを言った。

文句を言えば仕事を干されるのが分かっていたから、

素直に従ってはいたけれど。

 

f:id:fukuitabi:20161026084718j:plain

 

早朝に姫路をバスで出発して、

夕方に富士山の五合目ついて、

八合目くらいまで上がって、山小屋に一泊、

とはいえほとんど休憩程度で深夜に出発して、

ご来光眺めて下山。

河口湖で遅めの昼食と入浴、

そんでもって姫路まで帰れば深夜。

 

これが5連チャンだった。

さらに屈辱的なことに、

僕は5回行って一度も富士山でご来光を拝んだことがなかった。

土砂降りであったり、厚い雲に覆われて、

そんなのばかりである。

 

 1度くらいは富士山でご来光、つうのを眺めてみたい、

そんな思いくらいならある。

 

f:id:fukuitabi:20161026084757j:plain

 

そんなことを考えているうちに部子岳の山頂に到着。

相棒に目をやれば、

別に達成感があるとか、そんな様子は皆無で、

「寒い」と言い、

鼻水すすりながら「風呂行きたいな」と言う。

 

どうやらこの相棒と富士山に登ることなどないだろう、

そんな確信はできた(笑)

 

f:id:fukuitabi:20161026084820j:plain

f:id:fukuitabi:20161026084848j:plain

 

池田の町におりて、

冠荘で体を温め、

一福さんで非常に美味な「塩だし」のおろしそばを食べて

福井市内に向かった。

 

f:id:fukuitabi:20161026090536j:plain

 

富山にいた頃の山の相棒となら、

だいたいこのまま飲みに行くというパターンだった。

山、風呂、酒、これは定番なのだ。

僕にとって。

 

同じ酒場のビールでも、

仕事帰りより山帰りのビールの方が遥かにウマイ。

そのために山に行く。

 

「富士山に備えて登山靴でも見に行くか」

僕は問うた。

すると相棒は

「パチンコ屋でおろしてくれ」と言った。

 

僕はドラッグストアで缶ビールと酎ハイを買って、

家に帰って1人で飲んだ。