北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

県境の向こうのホルモン定食 〜ドライブイン富士〜

いい年こいて何であるが、

「県境」が好きだ。

車で走っていても県境を超える手前、

超えた瞬間に妙にテンションが上がる。

 

昔からそうだった。

 

自分が生まれ育った赤穂という町は

兵庫県の西の端であり、国道を西に向かえば

ほどなく岡山県に達する。

 

そこは市と町の(当時は日生町)との境というだけでなく、

兵庫県岡山県の境でもあり、

近畿地方と中国地方の境でもあった。

 

我が家では見れないテレビ東京系列の番組が見れる、

神姫バスではないバスが走っている、

なんていう点も含めて県境の向こうに

憧れみたいなものがあったのかもしれない。

 

僕は中学、高校と毎晩ランニングをしていたけれど、

県境まで行って帰ってくるのが一番楽しかった。

 

 

 

そして、

ふだんは県境を超えて「今日も岡山県に来たぜ」と

満足してすぐ引き返していたのだが、

月に一度だけ

たぶん小遣いもらった日に密かな楽しみがあった。

 

この県境を超えてすぐのところに、

小さなラーメン屋があるのだ。

 

僕らは勝手に「峠のラーメン屋」と呼んでいたが、

どさん子大将」なるチェーン店である。

月に1回だけこの「峠のラーメン屋」に寄って

ラーメンと餃子を食べる、

というのが僕のささやかな楽しみだった。

 

今でこそ赤穂市内にラーメン屋は多々あれど、

当時はラーメン屋そのものがほとんどなかった、

ということもあるが、

まあ、何せしみじみ美味いのである。

 

同級生にもかなりファンが多くて

友人と行く時はみんなで自転車をこいでいった。

 

赤穂の市街地からだと一山超えて

さらにもう一山上ったところになるもので、

自転車だと大変だったのだが、

まあ、そんな苦労があったからこそ、

旨さも倍増していた、というのもあるかもしれない。

 

ただ、不便な場所にあるにもかかわらず、

いつもそこそこ賑わっていた。

 

目の前には国道250号線が走っているのだけれど、

別に2号線という大動脈もあるもので、

もともと車の往き来が多い訳でもない。

にもかかわらず賑わっている、ということは、

単純に「旨い」からなんだろうと思う。

 

そんなもので、

県境に近いような場所で長きに渡り営業しているような店には

ほぼ「外れがない」と思うようになった。

福井だと以前に石川との県境にある「丸太食堂」さんに伺ったが、

やはり自分の中ではかなりのヒットだった。

 

そして、この県境を超えた先にも、

以前から妙に気になっている店があるのだった。

今回はそこに伺ってみようと思う。

 

 

 

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金沢行きの普通電車に乗り込んだら、

どうも違和感がある。

その違和感の正体は何かと思ったら、

まさにこの日から福井地区の北陸線でも

何本かワンマン運転が始まったようだ。

 

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この日は係員の方も乗り込んでいて、

丸岡駅で下車の方は前の方へお願いします」

と声をかけている。

 

時代の流れ、かもしれないけれど、

一応そこそこお客さんも乗ってる「幹線」なんだけどなあ(涙)

 

さらにショックな出来事が。

 

この日ウチの相方は朝から1泊の予定で大阪に出かけており、

僕は朝イチで福井駅まで車で送迎して、

家の用事を済ませて歩いて福井駅へ向かった。

理由は簡単、飲む気まんまんだったからだ。

 

ところが今日中に帰るから迎えに来い、

そんな恐怖のメールが入ったのである。

昼間から飲むから行けないなんて言えないしなあ、、、

 

僕、なんのために電車で出かけてるンだろ(涙)

 

牛ノ谷駅で運転士にきっぷを渡して下車。

ホームにも係員が立っており、

「本日よりワンマン運転が始まりました。よろしくお願いします」

ティッシュと時刻表をくれた。

 

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靴紐を結び直していざ出発。

グーグルマップで調べてみたら、

牛ノ谷駅から大聖寺駅まで徒歩の場合、

7.1キロ、1時間28分と出た。

 

目指すお店は恐らくその中間あたりと思われ、

45分から50分ほどで到達できるかな、

一応そんな予想をたてる。

 

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牛ノ谷の集落を抜けて国道8号線へ。

県境にかけての区間は歩道もなく、

脇をがんがん車が走っていく。

 

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歩いた先でも飲めないのか、

そう考えるとテンションがどんどん下がっていく。

 

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そしてなぜだか道端には、

ビールの空き缶があっちゃこっちゃに散乱している。

見ているだけで気が滅入る。

 

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それでも県境にたどり着くと、

少しはテンションが上がった。

吉崎の集落の中にある県境も味わい深いものがあるけど、

峠道の県境の方が「らしい」ような気がする。

 

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県境を超えるとだらだら下り坂。

途中に常拈寺というお寺があったので寄ってみた。

こちらではペットの供養をしているそうで、

多くの動物の写真が飾られていた。

 

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常拈寺からさらに下ると、

目指すお店が現れた。

 

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いつもそこそこ車が止まっている印象があったが、

駐車場はガランとしており、

げ、まさか定休日なんてことはなかろうかと不安になったが、

営業中の看板を見てホッとする。

店名は「ドライブイン富士」とある。

 

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さらに営業時間の張り紙を見て、

平日なら夕方からしかやっていないことを知る。

危ない危ない、

平日の昼間なんか来てたら泣くしかなかった。

 

さらにこちらのお店、

普通の食堂かと思っていたら、

思いっきり「焼肉屋」さんなのだった。

さらに名物は「とり野菜」という鍋のようで、

各テーブルには焼肉用のコンロと鍋用のコンロがセットされていた。

 

ますます飲めないのかと思うと惨めな気持ちになる。

 

「ホルモン定食」があったもので、

愛想のいいおばちゃんに注文。

焼肉用のコンロに火を付けてくれる。

今じゃ無煙ロースターの店が多くなったけど、

焼肉といえばこっちだよなあ、、、

飲みたいなあ、、、、

 

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ほどなくしてホルモンがやってきた。

すさまじい量である。

コンロでじゅうじゅうやれば、

ああ、シアワセ、、、、

ああ、飲みたいなあ、、、、

 

ホルモンって、ご飯じゃないよな、

ビールよな、、、、、

 

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定食だったので、

ご飯と味噌汁、香物に冷奴までついていたのだが、

ホルモンの量にもびびったが、

ご飯の量もまた多い。

 

昔、島田紳助さんの書いた

「ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する」

 って本があったけど、

そのまんま正論だと思う。

 

そしてさらに特筆すべきは味噌汁だった。

じゃがいもやら大根やらがごろごろ入っており、

しみじみ旨い。

酒飲んでたら定食にしなかっただろうから、

ま、これで良しとするか。

 

ちなみに一人でぶらっと入ってきたジャージ姿のおじさんは、

「とり野菜」と瓶ビールを注文して、

グビリとやっている。

そして運ばれてきた「とり野菜」が凄まじい量だった。

うーむ、絶対にリベンジしてやる。

ごちそうさまでした。

 

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来た道を戻る気にもならなかったもので、

大聖寺駅に向かう。

 

このお店の前あたりから歩道もあるので安心といえば安心。

問題があるとすれば福井に帰る電車の時刻で、

日中は1時間に1本しかない。

 

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ここで地図や時刻表を見てしまえば、

時間に追われ、えらい目にあうのは

過去幾多の経験から十分わかっている。

 

なるようになるさ、

そう自分にいい聞かせて歩く。

 

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しかしはっきり言えるのは、

遠くに見える大聖寺の街が全然近づいてくれない、

ということか。

この距離なら飲まなくて正解だったではないかと

そう自分にいい聞かせて歩く。

 

大聖寺実業高等学校の前で左折。

駅前にそびえるアパホテルもすぐ近くに見える。

すなわち駅はもう少し。

 

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踏切の警報音が遠くから聴こえる。

サンダーバードかな、しらさぎかな、

僕は大聖寺駅に向かって歩き続ける。

 

すると北陸線の線路の上を、

福井方面の普通電車が走っていくのが見えた。

「・・・」

 

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