相方が突然「三国祭に行きたい」などと言い始めた。
うーむ、祭りか、、、、
北陸の地にきて20年以上たつが、
これまで行った「祭」といえば、
富山の「山王祭」に一度行ったきり、だった。
八尾の風の盆、高岡の御車山祭、
いつか行ってみたいとは思っていたが、
結局一度も行ったことがないまま富山を離れてしまった。
何度か行くチャンスはあったのだけれど、
結局行かなかったのは「人混みが苦手」ということに尽きる。
風の盆も、富山駅で高山線に乗車するための「列」を見ただけで、
行く意欲を失っていた。
だが、
人混みが苦手、なんていう理由で、
その土地の文化に触れないなんていうのも、
何だかもったいないようなことをしてきた気もしなくはない。
そんなもので珍しく相方の誘いにのって、
三国祭を見に行くことにした。
窓口でフリーきっぷを購入してホームへ上がる。
工事中のえちぜん鉄道の高架線には
線路が敷かれている様子も見えた。
完成が待ち遠しくて仕方ない(笑)
福井駅を出発した時点でほとんどの席が埋まった。
僕はたびたび利用している「えち鉄」だが、
相方は2回目。
ボックスシートに座った相方が車内を眺め
「何か昔のJRの電車みたいやなあ」と言う。
考えてみれば北陸でも関西でも、
昔ながらのボックスシートの車両って、
いつしかほとんど姿を消してるンだなあ、
と今更ながらに思う。
さて、三国祭りをどうやって見てまわるか。
三国神社駅で下車した方がいいのか、
三国駅まで行った方がいいのか、
スマホを眺めながらあれこれ思案していると、
相席になったご婦人がさっと「三国祭」のパンフレットを出してくれた。
こういうのもボックスシートならではの光景よな(笑)
この日は「山車」が街を巡行する
三国祭のメインといってもいい日、だった。
パンフレットによると、
8時から12時にかけて山車が各蔵を出発し三国神社に集合、
12時から13時にかけて三国神社で神事、
13時から街を巡行、という流れらしい。
乗っている電車が三国駅に着くのは10時56分だから、
山車の巡行には「早すぎた」ということになる。
そんなもので三国駅まで行って露店なんかを眺めつつ、
三国神社まで歩くことにした。
電車は三国神社駅に到着。
車内にいた半数近くが下車。
三国神社駅はいつもはひっそりとした無人駅だが、
この日ばかりは駅員も何人が配置され、
狭いホームが人で溢れかえっていた。
電車は三国駅に到着。
ホームに降りた瞬間に何か違和感がある。
その違和感の正体は、
立派な駅ビルが完全に撤去され、
更地になっていたことだった。
こじんまりした仮駅舎では「三国まんじゅう」の配布が行われていた。
手にするとほんのり温かい。
そのまま口へ放り込む。
いつもは静かな三国の街も、
この日はさすがに人が多い。
旧森田銀行のあたりも観光客でごったがえしている、
なんて思いつつ歩を進めたら、
そんなのはまだ序の口だった。
三国神社にたどり着いた頃には、
前に進むのが困難なほど人で溢れかえっていた。
そして神社の前には既に山車が並んでいた。
さて、三国祭がどのような祭りかというと、
三国神社のサイトには以下のように記されていた。
北陸三大祭のひとつとして称せられ、毎年5月19日~21日にかけておこなわれ、10数万の参拝者で街中がにぎわう。神輿2基神宝棒持の行列、武者行列に名物の武者人形山車6基が港町の情緒をかきたてる。
狭い町並みの両脇にぎっしり立並ぶ700軒の露店商、人々の波で街中が祭一色になる。20日の正午に三國神社前に奉納された山車6基、午後1時に山車神輿の行列が神社前から街中に繰り出す。 これにたづさわる奉仕者700人、三国っ子は燃えに燃える。
立並ぶ露店商の屋根をハネ上げ、ハネ上げ笛と三味線、太鼓の囃子で山車が進む。きしむ車輪の音。面かじ取りかじの聲の中、250年の歴史を刻んできた山車・神輿と武者行列の巡行である。この日は、全町内が休日で夜9時ごろまで巡行は続く。
上記のサイトによると、
三国神社の山車は18基あり、そのうち毎年6基が奉納される、とある。
「神社に近い古い区は当番が早く3年に1度まわってくるが6年8年に1度という区もある」
そんな記述もあるから、
この日見た山車は来年には蔵から出てこない、ということか。
これだけでも来た甲斐がある、
そんな気がする。
巡行まではしばらく時間があったもので、
しばらく周辺をぐるりと廻る。
それにしても、暑い。
長らく山の上で生活してきたもので、
僕にはまったくもって暑さに対する免疫が欠けている。
まだ5月なのに、
こんな調子で7月、8月と乗り越えることができるのかと
毎年不安にもなる。
あまりにも喉が乾いたもので、
相方が露店で何か買ってる間に缶ビールを買った。
戻ってきた相方が「何飲んでんの」と怒りに満ちた声で言ったが、
仕方ない。
熱中症対策である。
トンネルの中まで車両通行止めとなっており、
しばし涼んでから神社の前に戻った。
祭り囃子の音色が何とも心地よい。
神社から神輿が降りてきて、
いよいよ山車が動き出した。
「下がってください!」マイクを手にした女性の声が響く。
山車の上に乗った若者が、
棒を使って行く手を阻む電線をひょいと持ち上げる。
最初の山車が鳥居の前まで進み、
くるりと回転。
見物客から歓声があがる。
2つめの山車が動き、列の後ろに下がっていく。
続いて激しい動きの神輿が現れた。
僕らは駅に向かうことにした。
暑さでバテてしまったのだ(笑)
山車が街を巡行する様子を見たかったけれど、
まだしばらく時間がかかりそうだった。
ところが駅に向かって歩き始めると、
路地の奥から山車が現れた。
僕は1番目の山車が下がっていった時点で、
6番目の山車の後ろにつき、
再び1番目の山車を先頭にして巡行が始まると思い込んでいた。
ところが列の後ろに下がっていった山車は、
別の通りからすでに町中へ繰り出していたのだった。
路地から現れた山車が方角を変える。
ただでさえ狭い通りに露店まで並んでいるもので、
何もかもが「ぎりぎり」だ。
曳き手の方が声を掛け合いながら、
慎重に、慎重に向きを代えていく。
地元の方が夢中になれる祭りがあるっていいもんだなあ、
それが今回三国祭を見学しての率直な感想。
僕の生まれ育った街でも
各地区で秋祭りがあって、
同級生たちは「これから獅子舞の練習や、めんどくさいわー」
「今年も笛吹かなあかんねん」
なんて言いながらも何だかんだで楽しげにやっていた。
でも、僕が住んでた地区だけは、
新興住宅地ということもあって、
そんな祭りがなかった。
だから、祭りがある地区に住む同級生たちがうらやましかった、
そんなことをふと思い出した。
再びえちぜん鉄道の電車に揺られ、
福井に帰った。
露店でちょこちょこつまんだだけで、
恐ろしく腹が減っていた。
「駅前で何か食べて帰ろう」そんな話しになった。
えちぜん鉄道や福井鉄道、京福バスなどの一日券を所持していると、
駅前でちょっとした割引特典を受けることができる。
例えばハピリンならカウンターに提示すると、
100円の金券がもらえる。
いつまでやるかは分からないが、
もっと大々的にアピールしてもいいんじゃないかと思う。
そんなもので最初はハピリンのラーメン屋さんに伺う予定であったが、
1階の「がブリチキン」にランチもある、
そんな話になった。
昨年、相方と「がブリチキン」が目的で、
開業間もないハピリンに来たにもかかわらず、
「売り切れ」で結局食べる機会がないまま1年がたっていた。
で、入店したらランチは15時で終了していた。
ランチがないとなれば、
単品で注文するしかない。
仕方なく、
僕は生ビールと唐揚げの盛り合わせを注文した。
相方はもう何も言わなかった。