福井鉄道に乗って武生方面に向かう時、
車内が空いていれば進行方向左手の席に座ることが多い。
田園風景越しに見える文珠山、
水落駅から先の鯖江市の町並みなど、
飽きることなく車窓に目をやっている。
そんなものでたまに進行方向右側の席に座ると、
妙に新鮮な気分になったりする。
そして、たまに気になるようなお店を発見したりもする。
先日もそうだった。
電車が西鯖江駅を出て、
サンドーム西駅に着く手前あたりに、
妙に気になる「黄色い建物」があるのだった。
その黄色い建物の脇に、
福鉄の線路に向けて「そば、うどん」なる文字も見える。
古民家を改造した、とか、
昭和の香り漂うビルの1階とか、
近年だと妙に小洒落たお店とか
何となくそんなイメージを抱いてしまうのだけど、
黄色い建物というだけで何ともいえぬ「違和感」があった。
周辺は至って普通の住宅街。
ただでさえ目立つ黄色い建物と、
その建物に似つかわしくない
「そば、うどん」の文字に興味をそそられていた。
「一度伺ってみたい」
そんな想いは日に日に増していた。
午前10時前の福井駅前。
ハピリン前の広場ではビアフェスタなるイベントの準備の真っ最中。
11時からで良かったわ、
10時からなら一杯飲んで出かけていたかもしれない(笑)
市役所前駅までぶらぶら歩く。
乗車するのは10時08分発越前武生行きのフェニックス田原町ライン。
フェニックス田原町ラインは日中3本の車両で運用しており、
2本は福井鉄道の車両でフクラム4兄弟や、
従来の路面電車型の車両がやってきたりするけれど、
えちぜん鉄道が担当する3往復は必然的に「キーボ」となる。
フクラムが3車体連接なのに対し、
キーボは2車体連接なもので、
当然輸送力にも差があって、
わりとキーボは混んでいる、そんな印象があり、
基本的に福井鉄道に乗る時はフクラムを意識して乗っているけれど、
今回は「黄色い蕎麦屋」に行くのに
「黄色い電車」で行くのもいいのかな、そんなことを考えた次第(笑)
ただ、この日のキーボは気の毒なほど空いていた。
それでも、キーボが福井の街を走り出して1年以上たつけど、
1日3往復だけというレアな存在であるからか、
各駅やすれ違う電車から
子どもたちが嬉しそうにキーボを見ている様子が
この日も多々見受けられた。
子どもたちが電車を見て喜ぶ様子っていいもんだな、
とオジサンは一人思う。
さて、今回の目的地はサンドーム西駅であるけれど、
フェニックス田原町ラインの急行は停車しない。
そんなもので一旦北府駅まで行って、
愛すべき610形電車がいるのか確認して、
引き返すことにした。
キーボは北府駅に到着した。
側線に610形電車の姿が見えて、何となくホッとする。
この610形電車、名古屋から福井にやってきたのは平成11年であるけれど、
製造されたのは、僕が生まれた年。
いわば同級生とも言える存在な訳で、
スクラップにされてしまうなんてあまりにも悲しすぎる。
あーあ、ロト6さえ当たればなあ、、、、(汗)
普通列車で福井方面へと戻る。
ただ、この電車でサンドーム西へ直接向かえば、
11時すぎに到着してしまうもので、
運動不足解消がてら家久駅から歩いてみることにした。
できるだけ線路に沿うように歩き、
越前武生駅で折り返した鷲塚針原行きキーボを見送り、
サンドーム西駅に着いたのは11時25分。
目指す黄色い建物は思った以上に「すぐそこ」にあった。
お店の前に着いたのは11時27分。
「食房・藤栄」とあり、
「準備中」の看板が掲げられている。
どうやら11時30分から営業開始のようだ。
しばし待って11時30分になった。
しかし、お店から誰か出てきてのれんを掛けるとか、
そういった動きが一切ない。
不安になった僕は、店の前に行ってみた。
すると、ホワイトボードに
「誠市のため、店はお休みです」なんて書いてある。
「・・・」
誠市、が何なのか、さっぱり検討がつかない。
よりによってサンドーム西駅を、
武生方面、福井方面ともに電車が出たばかり、の時間だった。
何だか急に腹が減ってくる。
さて弱った、この周辺でほかの店でも探すか。
確かかつて福井の先輩ブロガーさんがこの駅の近辺で、
「カツ丼」を食し、なかなか美味かった、
そんな記事を上げていなかったか、
記憶を頼りにスマホをいじってみたが、
最近やたらとご機嫌斜め気味の我がスマホは、
何ら反応を示してくれない
次の機種変更は絶対に「ガラケー」にしよう、と思う
とりあえず、サンドームまで出てみようと思った。
サンドームは国道8号線のバイパス沿いにある。
バイパス沿いなら、それなりにお店も立ち並んでいる。
しかしながら8号線に出てみると、
何とも絶望的な気分に陥った。
車を運転していて、
時速60キロ前後のスピードで走れば、
次から次へと店が現れる8号線も、
時速せいぜい5キロの徒歩とあれば、
さっぱり飲食店が現れない。
全国チェーンのお店はいくつか現れるが、
別に鯖江で食さなくとも福井でお世話になってる店ばかり、だった。
「・・・」
さらに足を進めると、たびたびお邪魔している「秋吉・鯖江店」の手前に、
大きな蕎麦屋さんが現れた。
「ながと」とある。
広い駐車場はそこそこ埋まっており、
店内もまた予想以上に広い。
「1人なんですけど」と告げれば、
「相席でお願いします」とのこと。
メニューを眺めると、セットを中心に充実している。
丼を注文すれば「ミニおろしそば」がついてくるようであったが、
「そば」をメインにして、ミニ丼、てな気分だったもので、
「みそ豚丼とおそばのセット」ってのを注文してみた。
で、この「みそ豚丼」ってのが、
豚肉と茄子の味噌炒めがご飯に載ってるんだけど、
これが何とも「うめーなー」としか表現しようがないほど、
絶妙な一品なのだった。
おろしそばも深めの器に麺がぎっしり。
一般的なお店の1.5倍ほどの量があるのではなかろうか。
すっかり満足して「ながと」さんを後にした。
JR鯖江駅からめがね会館までの約900メートルの間は、
「メガネストリート」として整備されたばかり、らしく、
何ともシュールで垢抜けた空間になっていた。
JR鯖江駅へ。
鯖江を訪れる際はほぼ福鉄利用なもので、
JR鯖江駅周辺を歩くのもずいぶん久しぶり、だった。
すると、
いつもはひっそりしている誠照寺の境内が
何だか妙に賑やかしい。
のぼりには「誠市」の文字が見える。
「誠市」って、さっき「藤栄」さんで見たぞ!
境内に足を踏み入れると、
妙に懐かしい歌謡曲がBGMとして流れ、
想像以上に多くのお店が並んでいる。
その中に、「藤栄」さんも出店していた。
うーむ、どうするか、
さっき「ながと」さんでボリュームたっぷりのセットを頂いたばかりで、
腹は満たされている。
しばし悩んだが、今回鯖江に来た目的は、
黄色いそば屋でそばを食すこと、だったのだ。
のれんをくぐって「おろしそば」を注文した。
冷たいお茶を出してくれたおばちゃんが、
「そこ暑くないか、奥の方が涼しいよ」なんて言ってくれる。
奥で店主らしき方がそばを茹でている様子が見える。
おばちゃんが
「さっきから流れてる曲、うちらの世代の曲ばかりやなあ」
と笑っている。
ほどなくして「おろしそば」がやってきた。
食すと割りと噛みごたえのある、
それでいて何とも喉越しのいいそばだ。
するするーっと胃の中に入っていく。
僕は決して大食漢という訳ではないけど、
ぺろりと食せてしまったから、
単に「旨い」のだと思われる。
「おろしそば」って案外食べ歩きに向いているのかな、
そんな気もした。
福井鉄道の沿線には駅から徒歩圏内にたくさんそば屋さんもあるし、
今度挑戦してみようかな。
たぶん3〜4皿くらいなら食せそうな気もするし、
藤栄さんも是非お店の方にも伺ってみたい。
ごちそうさまでした。
たぷたぷの腹のまま福井へ帰ると、
ハピリンのビアフェスタは大盛況だった。
福井市内の飲食店で、
昼酒を飲んでる方なんてほぼ見かけることがないもので、
真っ昼間にこれだけの酔っぱらいを目にすることなど、
ある意味福井らしからぬ光景、と言えた。
無論、僕も一杯やりたい気分、ではあったが、
この後帰って買い物にも行かねばならない。
僕は泣く泣く帰路についた。