富山の記事が何本が続きましたが、
このたび、福井から富山に転居することになりました。
ゲンキーがないことに衝撃を受け
(昔は東富山のアピタの近所にあったはずだんだけど、、、)
しょっちゅう行っていたオレボキッチンがないことに寂しさを感じ、
福鉄やえち鉄に乗る機会が減ることが何より辛かったりしますが、
ちょくちょく福井の徘徊も考えておりますので、
今後ともお付き合いいただければ幸いです。
ゴールデンウィークは特に遠出の予定もなく、
適当にうろつくつもりで「北陸おでかけパス」を購入していた。
福井からなら城端線や氷見線を徘徊するのもいいかなと思っていたが、
富山起点となると何だかもったいない(笑)
さて、何処へ行くかと時刻表の地図を眺めつつしばし考える。
北陸おでかけパスに記載された端っこの駅は、
小浜線の青郷、北陸線の長浜、越美北線の九頭竜湖、のと鉄道の和倉温泉、氷見線の氷見、城端線の城端、高山線の猪谷、大糸線の中土、えちごトキめき鉄道の直江津。
そこで気づいたのが、大糸線の中土は北陸おでかけパスで行ける長野県であるということか。
今まであんまり考えたことがなかったのだが、
一つ手前にある北小谷と中土駅はJR西日本に所属する長野県の駅ということになる。
今回はこの2駅を訪ねてみることにした。
富山発6時52分、あいの風とやま鉄道の普通電車でまずは泊へ。
糸魚川に到着したのは8時20分だった。
先に駅構内に展示してあるキハ52にあいさつしていこう。
8時30分、キハ52が展示されている「ジオパル」がオープン。
すると、以前は閉まっていたキハ52の前のシャッターが開いた。
へえ、外からも見えるンだ、と眺めていたら、
何人かのお兄さん方が、キハ52の前方に伸びる線路から、
ゴム状のものを抜いていく。
さらに、キハ52に通じる階段、その他を移動し始める。
何が始まるのかと思って、1人のお兄さんに尋ねてみたら、
「9時になったら外に出します」
なんてことを言う。
え!?これ、動かすの!!!
うーむ、見たい。
しかし動かすのは9時だと言う。
大糸線は8時53分発で、これを逃すと10時30分となる。
ま、戻ってきてから外に出ている様子だけでも眺めてみるか、
そう割り切ることにして大糸線のホームへ向かった。
1両編成の大糸線、南小谷行きは立ち客もいるほどの盛況ぶりだった。
一見して、中高年のトレッカーや外国人観光客の姿が多い。
列車は糸魚川の市街地を抜け、姫川沿いの谷間へと入っていく。
勾配がきついのか、エンジン音が苦しげに車内に響く。
9時49分、中土駅に到着。
下車するのは僕だけかと思っていたら、もう1人下車。
ホームには何人かの若者がいて、
車両にカメラを向けている。
中土駅があるのは長野県の小谷村で、
開業したのは昭和10年の11月とのこと。
その後昭和32年に大糸線が全線開通するまでは、大糸南線の終点であったらしい。
そう知ると、確かに構内は広い。
若者たちが去っていくと、
周囲には誰一人いなくなった。
時折、車が通っていくが、あとは物音一つ聞こえない。
Wikipediaによると、1日あたりの乗車人図はわずか3人とのこと。
次の目的地は北小谷であるが、
10時18分に着くと次は12時14分となってしまう。
北小谷には道の駅があり、温泉やレストランも併設されているから、
2時間弱なら過ぎせそうな気もしたが、
まだほとんど動いてもいないのに温泉というのも早すぎるよな、
そんな気がした。
そこで例によって先にダイヤを書き出してみたのだけど、
そんなもので一旦根知駅の一つ手前の小滝駅まで下り、
北小谷まで戻ってくることにした。
これなら滞在時間は1時間弱となり、昼食をとるにもちょうどいい。
糸魚川行きの列車は行きと違って気の毒なほど空いていた。
平岩から10人近く乗ってきたが、
それでも空いている。
10時40分、小滝駅で下車。
他にだれも降りるまいと思っていたら、
一組の家族連れが下車した。
小滝駅のすぐ脇を、糸魚川と長野県の大町を結ぶ国道148号線が通っており、
かなりの交通量があるにも関わらず、
一段下がった位置にある駅は随分静かだ。
聞こえてくるのは姫川を流れる水音のみ。
10時53分、谷間にディーゼル音が響いてきて南小谷行きの列車が姿を見せた。
この列車は2両編成で、そこそこお客さんの姿はあったが、
車内には余裕がある。
11時19分、北小谷で下車。
昼食をとるために、対岸にある「道の駅小谷」を目指す。
姫川を渡る橋の上を、さらに国道148号線の立派な橋が交差している。
僕が免許を取った頃は、今歩いている橋が国道だった。
この小谷村と新潟県の平岩の間も、
大仏を眺めながら走るグネグネの峠道で、
免許を取り立ての頃は怖かったなあ、なんてことを思い出す。
道の駅小谷は、連休中ということもあって恐ろしく混雑していた。
この後の僕の予定は、根知駅まで下り、平岩まで戻って温泉に入るつもりだった。
行ったりきたりであるが、それが一番有意義に大糸線を満喫できそうな気がしていた。
ここで食事を取らなければ、すべての予定が崩れてしまう。
レストランはすでに満席となっていたが、
1人ということもあってかわりと早めに案内された。
「日替わり かまど飯定食」1100円を注文。
味噌汁は豚汁と山菜汁が選べるとのことで山菜汁をチョイス。
漬物は食べ放題とのこと。
ほどなくして渡されたブザーがなり、
「日替わり かまど飯定食」にありつく。
純白、かつ、つやつやのご飯がしみじみ美味い。
長野は流石に漬物の本場だけあって、これだけでご飯が何杯でも食せそうな気がする(笑)
味噌汁はこごみがたっぷり、
信州産のサーモンも美味かったし、満足である。
ただ、後から調べてみると、サイトにも食べログにも「ご飯は食べ放題」とあったけど、
そんな案内はなかった。
連休だから、かな?
ごちそうさまでした。
北小谷駅に戻ると、赤ん坊を連れた家族連れが待合室で弁当を食べていた。
若い奥さんが「臭いますね、すみません」と頭を下げる。
「いえいえ」と言ってホームに出る。
しばし待っていると、南小谷方面から列車が現れた。
さて、ここで僕は先述したように、根知で下車して平岩まで戻る予定であったのだが、
最終的に15時46分に糸魚川に戻るつもりでいるが、
そもそも何時まで外に出ているのか分からない。
そんなもので一旦糸魚川駅まで戻ることにした。
2両編成の車内はそこそこ混んでいた。
僕はロングシートの空きを見つけて座ったのだけど、
隣にいた白人カップル(恐らくロシア人)のいちゃいちゃが凄まじくてねえ(汗)
糸魚川駅に到着したのは12時57分。
折り返しは13時13分であるので、慌ててキハ52の様子を見に行く。
キハ52は外に出ており、
つかのまの日向ぼっこを楽しんでいるようにも見えた。
観光協会のスタッフの方に訊ねると、
16時までは外に出ているらしい。
と、いうことは温泉に行って帰ってくれば、
ちょうど格納するシーンを見れるかもしれない。
13時13分発の南小谷行きに乗車。
驚いたのは来る時に乗っていたお客さんが少なくとも2人、
この列車に乗っていたことだ。
単に糸魚川を往復したのか、はて、どうしたことか。
平岩で下車しようと思い、
財布から「北陸おでかけパス」を取り出そうと思ったら、
何故か見当たらない。
「え?」てな具合である。
ザックの中をあさるが見当たらない。
額に汗が滲んでくるのが分かる。
糸魚川駅で改札を抜けたからその時点ではあったはずで、、、
そのうち列車は平岩駅を出発した。
「北陸おでかけパス」は何故か時刻表に挟んであった。
平岩を出発したとなると次は北小谷となる。
さきほど僕は北小谷で昼食を食べてきた訳で、
いったい自分は何をやっているのだろうか、そんな気がしなくもない。
道の駅小谷で食事をすると、
併設する温泉の入浴料が半額になるのだが、
恐ろしく混んでいる気がしたもので、
来馬温泉の風吹荘に行ってみることにした。
北小谷駅からの所要時間は10分弱。
ところが玄関を入っても誰もいない。
「すみません」と声を掛けてみたが反応がない。
中に入って、食堂の奥に声を掛ける。
すると旦那さんらしき方が現れて「500円になります。お風呂は階段を下った先になります」と言った。
「風吹荘」に着くまでは、平岩駅で下車できなかったことでかなり落ち込んでいたのだけど、
このお風呂に入っただけでニンマリするのが分かった。
浴室は「鉄」の香りが充満しており、
浴槽からはどばどばと湯が溢れ出ている。
そして溢れ出た湯が触れている部分は赤茶けている。
湯が流れていない部分は灰色であるから、その違いが歴然としている。
まさに「源泉かけ流し」。
湯につかるとぐわーっと身体が暖まってくるのが分かる。
さらにタイミングよく「貸し切り」だった。
ひえー、こりゃええわ、極楽、極楽♪
玄関前のロビーにキリンの自販機があり、
ビールもあったのでもちろんプシュリ。
するとご夫婦が入ってきて「2人お願いします」と言う。
「あ、僕、違うんです、奥におられます」
さらにご夫婦が入ってきて「日帰りなんですが、お願いできますか」と言う。
「あ、宿の方、奥におられます」
僕、山小屋とかに客として泊まっていても、
何故かスタッフに間違えられるのよな(笑)
何でだろ、、、
北小谷駅に戻ると、駅前にRV車が止まっており、
待合室ではいかにも山帰りといった感じの若者が2人、おにぎりを食べていた。
北小谷駅で食事をするのが流行ってるのかな(笑)
北小谷駅を14時57分に出る列車で糸魚川駅に戻ったのは15時46分。
再びキハ52の様子を見に行く。
手袋をはめたスタッフの方々が、格納の準備を行なっていた。
よくよく見てみると、キハ52には発電機に車両をつけたような小さな「機関車」?が連結されており、
なるほど、自走する訳ではなくこれを使って移動するのかと思う。
16時、エンジン音が響き渡り、キハ52が徐々に格納されていく。
その様子を見ていると、何だか目頭が熱くなってくるのが分かった。
格納に要した時間はわずか10分ほどだったか。
ぴかぴかの車両を見つめていると、
「うちの箱入り娘です。月に2回しか外に出ない。それも雨が降ったら出ない」
と、年配の男性に声を掛けられた。
このジオパルのスタッフの方で、
まさにこの車両の運転士を30年以上やっていたと言う。
「基本的には糸魚川と南小谷の往復なんですが、昔は大町まで入っていまして」
そんな話も聞かせてもらう。
「こんな大切にしてもらって、シアワセな車両ですね」
と言ったら、
「ええ、本当に」と素敵な笑顔を浮かべた。
列車内で飲むつもりで、「雪鶴」なる糸魚川の地酒のワンカップをザックに忍ばせていたが、
ホームには思いの外お客さんがいる。
さすがに混雑した車内でワンカップを飲む勇気は僕にはない。
仕方なく、長大なホームの端っこでワンカップのキャップを開ける。
ぐびりと飲んでみれば、何とも飲みくちのいい酒だ。
まるで水のようにすっと入っていく。
僕はすっかりいい気分になって泊行きの列車に乗り込んだ。