北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

北陸土砂降りトライアングル紀行

トライアングルを辞書で引くとこう書いてある。

 

トライアングル triangle

① 三角形。

② 打楽器の一。鋼鉄棒を三角形に曲げて糸でつるし,金属棒で打って鳴らす。澄んだ高音を出す。

 

北陸トライアングルルートきっぷの存在を知ったのは

数年前に福井駅でチラシを見た時で、

相方が

「北陸トライアングルなんて言ってるのに福井は無視って失礼なきっぷだよね」

と言った。

 

何となく相方の一言がずっと頭の中に引っかかっており、

福井にいた時にはまったくこのきっぷに惹かれるものがなかったのだけど、

富山を起点に見てみると、ずいぶん魅力的なきっぷに思えてくる。

 

トライアングル=三角形のそれぞれの点は金沢、高岡、穴水。

高岡ー金沢間のあいの風とやま鉄道にIRいしかわ鉄道

和倉温泉ー高岡の加越能バス「わくライナー」に

JR七尾線城端線氷見線、それにのと鉄道までが乗り降り自由、

さらに当日販売も可能で2日間有効というのも魅力的。

 

連休を使って1日目はのと鉄道、2日目は氷見線城端線

富山ー高岡を別途支払えば1泊しなくとも楽しめるな、

なんてことは富山に来てからずっと考えていたことだった。

 

そんな矢先、相方が東京に遊びに行ってくると言い出して、

なら自分もどこか出かけるか、そんな気分になり、

宿探しのサイトを見てたら格安で和倉温泉に泊まれることが分かり、

ようやく「北陸トライアングルルートきっぷ」を手にした、

というのが今回の話のきっかけであったりする。

 

ただ、発売当初は2500円だったと記憶しているが、

いつしか2800円になっていた(涙)

 

 

 

前日まで考えていたのは、

1日目に城端線をうろうろして昼食、氷見まで行って番屋街まで歩き、

わくライナーに乗って和倉温泉で1泊、

2日目にのと鉄道で穴水を往復して、

七尾からわくライナーに乗って高岡に帰る、

結局はトライアングルになっていないルートだった。

 

ところが、富山駅に行くと

城端線が大雨で運転取りやめの可能性がある」

なんていう案内が流れている。

「・・・」

 

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 金沢行きの電車に乗ってJRの運行情報を確認してみると、

城端線だけでなく、氷見線七尾線も運休になる可能性があるそうだ。

山側を眺めてみればところどころ青空も見える。

果たしてそんなひどい雨になるのだろうか。

 

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しかしながらJRが運行取りやめの可能性があると言っている以上、

ある程度の覚悟は必要かもしれない。

加越能の「わくライナー」だって

能越道が雨で通行止めになり、

国道160号も通行止めなんてことになれば、

今宵の和倉温泉をキャンセルするしかなくなってしまう。

 

となれば今日のうちにのと鉄道を往復して、

明日、氷見線城端線を巡ることにしよう、

そう考えた僕は時刻表を広げて計画を練り直すことにした。

 

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7時37分、津幡に到着。

この時点で曇り空。

金沢方面のホームは通勤、通学の人たちでずいぶん混雑していたが、

富山、七尾方面のホームは閑散としていた。

 

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7時54分、七尾行きの電車が入線。

6両という堂々とした編成であるが、思った以上に乗客の姿がある。

7時56分、出発。

 

七尾線の車両は国鉄時代からの古いもので、

まだ新しい521系から乗り継ぐと、

走行音やらエアコンの作動音?やらまあとにかく賑やかだ。

さらに車掌も何か案内しているのだけど、

何を言っているのかさっぱり分からない(笑)

さらに弱冷車であるのに恐ろしく寒い。

 

宇野気駅でまとまった下車があり、

車内はガラガラといっていい状況になる。

このあたりで雨が降ったりやんだりし始めた。

 

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羽咋到着は8時39分。

金沢行きの到着を待って8時45分に出発。

七尾線の線路はここまで能登半島の西側を進んできたが、

この先は能登半島を斜めに横断する形になる。

急に空が暗くなりはじめ、凄まじい雨が降り始めた。

 

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車掌が何か言っている。

しかし何を言っているのかさっぱり分からない。

JR西日本は古い車両を大切にしているが、

一度はマイクのテストを走行中にやってみればいかがなものか。

乗客に聞こえなければそれは案内でも何でもなく、

単なる車掌の独り言にすぎない。

 

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能登部駅に到着。

しかしなかなか動かない。

僕は時刻表を眺めた。

すると8時48分に七尾を出る特急があることが分かった。

この駅ですれ違いでもするのかな、なんて思ったが、

数分止まった後に特急とすれ違うこともなく動きはじめた。

 

良川という駅に着いた。

やはり車掌が何か言っているが、

雨音も凄まじく、停車中にも関わらず、さっぱり分からない。

同じ車両に乗り合わせた人、みんなが首をかしげていて、

何人かと顔があった。

「車掌さんに聞いてきます」

僕は言った。

 

僕は前から2両目の車両に乗っていたが、

3両目、4両目、5両目にも何人かずつお客さんはいて、

みんなして首をかしげている。

 

6両目、最後尾の車両で年配の車掌が乗客に何か言っている。

「何があったんですか」と聞いてみたら、

「この雨でこれ以上進めません。しばらく駅の待合室に移動してください」

とのこと。

「・・・」

 

2両目に戻り、

「まもなく車掌さんが来ますけど、これ以上進めないそうです」

と言った。

「今、七尾、かなり雨がひどいみたいです」

七尾に出勤するという女性が半分あきらめたような表情を浮かべた。

9時12分、全員下車して待合室へ。

 

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雨がやむ様子はない。

僕はスマホで雨雲の動きを眺めてみた。

確かに能登半島の真上に雨雲はいるが、

午後には抜けていきそうな気がしなくもない。

しかし何より七尾に行けるのか、金沢に帰ることができるのかすら分からない。

 

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良川駅には委託の職員の方が1人おられ、

電話応対や待合室の人数を数えたりと忙しい。

しばらくすると、職員の方が

「七尾行かれる方はタクシー来ますんでちょっと待っててください。あと、この電車、金沢に戻ります。金沢に帰られる方は電車に乗ってお待ちください」

と言った。

 

「今、七尾に行って帰れるのかな」と誰かがいい、

「いやあ、もう厳しいかも」と職員さんがいい、

「七尾の雨、どんどんひどくなってるみたいです」と誰かがいい、

「じゃ、帰った方が賢いね」と誰かがいい、

かなりの方が再び電車に乗り込んだ。

 

すると職員さんが

「ありゃ、タクシー何台も来るのにずいぶん減っちゃったな」と笑い、

その場残っていたみんなして「ほんとうですね」と笑った。

 

 

 

僕は和倉温泉、すなわち七尾に宿泊する予定であったので、

七尾まで行けるのなら金沢に帰る必要はない。

早めに宿に入り、チェックインの時間まで待とう、

そう考えていた。

 

9時30分すぎ、タクシーが何台か連なって駅前にやってきた。

ずいぶん段取りがいいものだと関心する。

 

僕が乗ったタクシーの運転手さんは七尾から来られたそうで、

「途中の川があふれそうになっていた。もうあふれてるかも」

と恐ろしいことを言う。

すると本当に川はあふれ、道路は冠水していた。

 

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七尾の市街地に入ると、雨は小降りになった。

運転手さんは「さっきよりだいぶましになった。このままやんでくれるといいけど」

と言う。

七尾駅に着いたのは9時55分で、

この時点で雨は一瞬だけだがやんでいた。

 

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さて、七尾線が止まっているのは分かるが、

のと鉄道の運行状況が分からない。

サイトを開いてみても何も掲載されていない。

のと鉄道フェイスブックに運行状況を書いてるそうな)

 

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のと鉄道の乗り場に行くと、

JR側から職員の方が現れて、「のと鉄道も止まってます。中島のあたりがひどいことになってるみたいです」と言う。

その瞬間から、雷音と共に凄まじい雨が降り始めた。

 

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七尾駅は特に混乱した様子もなく、

待合室では静かに運行再開を待つ人がじっと座っている。

 

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七尾には朝早くからやっている食堂が何軒かある、

そんな話を以前に七尾出身の方から耳にしており、

せっかくだから行ってみたいけど、

外に出るのも躊躇する雨だった。

 

どうしても金沢に行きたい、という方に、

「高岡行きの『わくライナー』は動いています」と

案内所の方が言っている。

次の高岡行きは11時41分発だ。

 

僕もそれに乗って氷見で引き返してこようかな、

なんてことも一瞬考えたが、

この雨で道路が寸断されたらアウトである。

 

待合室のテレビでは七尾市の被害の様子を伝えている。

僕は併設されたセブンイレブンでコーヒを買い求め、

そのテレビを見上げていた。

 

その次の瞬間だった。

再び凄まじい雷音が響き渡り、

駅舎内は停電して真っ暗になった。

 

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不思議なことに、七尾駅は停電しているが、

周辺の建物は停電しておらず、

信号も作動している。

 

駅前のビルにはスポーツクラブでもあるのだろう、

雨も駅の停電も関係なくエアロビをやっている方々が見える。

雨は強さを増していく。

 

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僕は腹が減ってきたので、駅前を一周してみることにした。

すると駅前の「ノア」という喫茶店に「ランチ」の文字が見える。

まだ11時にもなっていないがやっているのだろうか。

 

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店内に入ると、何とも品の良さそうなマスターが、

「お食事ですか」と言う。

「できますか」と聞けば

「大丈夫です。今日の日替わりランチはすき焼きかてんぷらです」と言う。

思いっきり昭和の喫茶店ですき焼きやてんぷらなんて言葉を耳にするとは思わなかったが、何となくてんぷらをお願いした。

 

しばし待つと天ぷら定食が配された。

想像以上のボリュームで、とても喫茶店の食事とは思えない。

いや、ここは定食屋なのか。。。

 

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天ぷらは揚げたて、

小鉢のかぼちゃの煮物、お漬物に至るまで、

一品一品が本当に美味しい。

この日はこれが「日替わりランチ」になっていたからお値段600円、

それも税込み。

満足でした。ごちそうさまでした。

 

駅に戻っても暗闇のままであるし、

僕は和倉温泉まで北陸鉄道のバスで向かうことにした。

調べてみるとの11時30分発というのがある。

北陸トライアングルきっぷでは使えないが仕方ない。

 

ロータリーでしばし待つが、11時30分を過ぎてもバスは現れない。

客をおろした別路線の運転手さんに聞いてみると、

「雨ひどいんでしばらく運休」なんて言う。

マジかいな、、、、

 

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駅前の建物に入ってみると、

図書館が入っていた。

図書館さえあればいくらでも時間はつぶせそうな気がした。

ひとまず、雨がやむまで読書に励む。

 

13時50分、雨はだいぶ落ち着いてきたようなので、

バスターミナルに行くと、

羽咋駅」の表示を掲げたバスが入ってきた。

しかし動いているのは七尾駅羽咋駅を結ぶ路線だけであるらしい。

 

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うーむ、どうするか。

僕は地図を眺めた。

七尾駅から和倉温泉まで、ざっと6キロといったところか。

1時間半まではかからないだろう。

よし、歩くべ。

 

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そんなもので僕は気合を入れて歩き始めたのだけど、

隣を一台のバスが通過していった。

しかし、北鉄のバスとは色が違う。

そのうち、和倉温泉の方からもバスが現れた。

 

「ん、どういうことだ?」

 

バス停をよく見てみると、

北鉄のバスのポールの他にもう一本、ポールが立っており、

能登島バス」と書いてある。

 

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北鉄は運休しているが、

七尾と能登島を結ぶバス路線が存在し、そちらはふつうに動いているのだった。

さらに後から調べてみれば、七尾と和倉温泉間の利用もできるそうだ。

「・・・」

 

1時間15分ほどかけて和倉温泉へ。

「わくライナー」も結局運休になったようだ。

余計なことをしなくて正解だったと安堵する。

 

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宿まではあと少し。

すっかり雨に濡れてずぶずぶである。

運行を再開した北鉄のバスが僕の隣を通過していった。

「・・・」

 

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翌朝も、のと鉄道は運行しておらず

僕は「わくライナー」で高岡に向かったが

城端線氷見線も動いておらず、

当初の予定を何ら達成できぬまま富山に帰った。

 

 

 

おまけ的つぶやき

 

その1

 

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福井県で災害があれば福井新聞のサイトを開けば何らかの情報を得ることができるが、石川県だと北國新聞のサイトもテレビ局のサイトも何ら役にたたないことが分かった。これは富山県北日本新聞やテレビ局にもいえる。福井県から他県に行くと、福井新聞がいかに優れたメディアであるかということがよく分かる。

 

その2

「わくライナー」めちゃくちゃ便利! もう少し本数があれば新高岡駅が十分に「奥能登の玄関口」になりえると思う。合掌造りにしろ黒部ダムにしろ、美味しいところを隣県に取られてばかりいる富山県は、石川県に遠慮せず大々的にアピールしてほしい。

 

その3

高岡駅であいの風とやま鉄道の駅員が「こんないい天気やのに何で(JR)城端線動かんの!」とおばちゃんに絡まれており、何だか気の毒だった。

 

 その4、福井新聞のちょっと古い記事より

北陸新幹線敦賀開業後の並行在来線(現北陸線)の運行のあり方について福井県は6月12日、県境を越えて移動する通勤・通学客の利便性を確保するため、石川県と相互乗り入れを前提に協議を進める方針を明らかにした。厳しい人手不足の中、第三セクター要員の早めの確保に向け、2020年度に予定していた準備会社設立の前倒しも検討する。収支予測調査・経営基本調査結果を反映した「経営・運行の基本方針案」に盛り込んだ。

www.fukuishimbun.co.jp

これまで協議していなかったということにゾッとした(笑)

 

その5

北陸新幹線へのフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)導入を断念した国土交通省に対し、福井県の西川一誠知事は8月29日、2023年春の北陸新幹線敦賀開業後も特急を並行在来線に乗り入れるなど、FGT代替策を実施するよう求めた。

西川知事や山本文雄県議会議長らが国交省に蒲生篤実鉄道局長を訪ね、特急乗り入れや、敦賀駅発着のすべての新幹線と乗り継げる特急の便数確保を訴える要望書を手渡し、報道陣非公開で面談した。

www.fukuishimbun.co.jp

福井までの乗り入れを求めているのか、金沢までを求めているのか記事では分かりませんが、天下のJRさまがやらないでしょうね(笑)

仮に乗り入れを残したところで運賃、料金が敦賀を境に別立てになるわけで、利用客には負担増になることでしょう。逆にJR同士である南越から関西だと新幹線特定料金+乗り継ぎ割引で現在より安くなるなんていう現象も生まれるかもしれません。

新幹線によって便利になる点もありますが、不便になる点だってある訳です。これまで新幹線を推進してきた知事をはじめ、政治家の方々はきちんと県民に説明する必要があるのではないでしょうか。北陸3県出身の政治家さんは「県民に選ばれた」と考えているかもしれませんが、県民の目から見れば「ほかに選択肢がなかった」だけです。いい加減に気づいてください。

そうそう、西川知事、この際「金沢ー大阪は一括開業でいい!」って言ってみればいかがでしょうかww いろいろ面白いことになると思いますヨ。