僕の記憶が確かなら、
つい先日まで外作業の時は半袖のTシャツ1枚だったし、
頭には濡れタオルを巻いていた、「はず」であるが、
急激に恐ろしく寒くなってきたので、
先日、家に帰るなり「こたつ」を引っ張りだした。
相方は「早いんじゃないの」と笑ったが
立山では初冠雪なんて言っているわけで、
別に早くも何ともなく、今年は夏が長すぎたのだろう、と思う。
しかしながら「こたつ」の弱るところは、
出かける気力を失う、ということか。
出かけるだけならまだしも、飯をつくったり、
トイレに行くのも面倒になってしまう。
うう、このままでは駄目人間になってしまう。
飯でも食いに行くべ、と家を出た。
目指すは金沢。
「富山市民病院前」から金沢行の高速バスに乗車。
この日は平日の午前中、さらに中途半端な時間で、
空いているであろうと勝手にたかをくくっていたが、
正席は9割方埋まっていた。
和服姿の年配の女性が多くいたから
何か催し物でもあるのかもしれぬが、
それにしても大盛況、といえる。
そして改めて思うのは地鉄もいいバスを入れるようになったなあ、
ということか。
この路線、運行を開始したのは(おそらく)平成16年(だったはず)で、
当時からちょくちょく利用しているけれど、
以前は地鉄と北鉄のバスの差が激しすぎた。
北鉄側は以前から「普通の高速バス車両」を使っていたが
地鉄側は観光バスからの転用車両で、
車内は何ともレトロかつムーディーな雰囲気であったし、
後部の座席番号なんで紙にボールペンで書いたものを、
セロテープで貼ってあったりしたものだった。
それが今となってはWi-Fi完備の上等な車両が走っているわけで、
時代は変わったなあ、進化したなあ、なんてことを思う。
バスは快調に走って高速を金沢東ICで降り、
東インター大通りを南下して金沢市内に入っていく。
バスは浅野本町で右折して金沢駅へと向かうが、
この場所にある「金沢東警察署前」で下車。
バスを見送った僕はさらに東インター大通りを南下。
先月から今月の頭にかけて、
このあたりを毎日車でうろうろしていたのだけど、
交差点の角に気になる食堂を見つけていたのだ。
確かこのあたり、と思って行ってみれば
「準備中」の看板が立っていた。
しかしながら扉は開いていたし、
少し待てば開くだろう、と安心して、
周辺をひとまわりしたら「営業中」になっていた。
店内は思いのほか広い。
カウンターの奥の厨房には物腰柔らかそうな年配の女性がいて、
笑顔で迎えてくれる。
メニューは麺類にご飯物、定食まで
いかにも「食堂」といった感じで嬉しくなる。
ラーメンとおにぎりを注文。
すると息子さんらしき方も奥から出てきて、
一緒に調理を始めた。
ほどなくしてラーメンが配された。
まずはスープを一口。
どことなく「和」を感じる。ああ、旨い。
そして麺がもちっとしててまた旨い。
金沢近郊はほとんど車で行っちゃうので、
このブログではほとんど取り上げることがないけれど、
金沢の食堂のラーメンというのは、
全体的に値段が安いわりにレベルが高いと感じる。
こちらのお店のラーメンなんてわずか450円である。
そしておにぎりがまた「母ちゃんが握った」みたいな感じで、
旨いのよな(笑)
スープまで一滴残らず頂いて、
勘定すればラーメン450円+おにぎり160円で610円(税込み)なり。
金沢はよくよく「観光地価格」云々というのを耳にすれど、
ちょっとエリアを外せばこんな素敵な食堂もたくさんある。
いやはや、今回も「あたり」の食堂でした。
ごちそうさまでした。
さらに東インター大通りを南下すれば東山と呼ばれるエリアに到達する。
いわゆる「ひがし茶屋街」があるところだけど、
東警察署前のバス停から歩いてもたいした距離ではないんだな、
なんてことに気づく。
東山周辺には路地が複雑に入り組む、
なんとも自分好みの昔ながらの住宅街が広がっている。
そして「ひがし茶屋街」へ。
この日はまだ北陸新幹線が台風の影響で東京からの直通運転がなかったのだけど、
それでも多くの人で賑わっているように感じた。
新幹線が止まっている、かつ平日の昼下がりで賑わっている、
ということは
新幹線が走っている、かつ休日なんてどれだけの人がいるのだろうか。。。
浅野川を渡って橋場町へ、
さらに兼六園へ。
この日は一般的な観光客というよりは、
修学旅行の学生が多くいたような印象がある。
今回、金沢に来たのは無論飯と銭湯という最大の目的もあれど、
もう一箇所、どうしても行きたい場所があったのだ。
たまたま写真で見かけただけだが、
何となく心の奥底に引っかかっていた。
それが本多町にある「鈴木大拙館」。
鈴木大拙さんというのは金沢出身の仏教哲学者らしいが、
自分は不勉強なものでこの方については初耳である。
しかしながら、この方のミュージアムは特に外国人観光客を中心に人気を集めている、
なんて話を聞く。
入館料を支払い、建物の中へ。
薄暗い廊下がまっすぐ奥に伸びている。
突き当りが展示室になっており、
鈴木大拙さんに関する展示空間と学習空間があるが、
あくまで最小限の展示品があるだけだ。
そして学習空間から外に出れば、
「水鏡の庭」が広がっている。
ああ、よく写真で見ていたのはここかあ、なんてことを思う。
「水鏡の庭」の中心に位置するのは「思索空間」。
来観客の中心はやはり修学旅行の学生さんであったが、
大きな声を挙げてはしゃぐわけでも、
ふざけあう訳でもなく、皆が一様に水鏡を眺めている。
学生さん以外の方は欧米の観光客の方が大半のようで、
皆やはり水鏡を眺めつつ、思い思いの時間を過ごしている。
僕もしばし水鏡を眺める。
静かな時間が淡々と過ぎていく。
何て贅沢な時間なんだろうか、と思う。
さあ、風呂でも入って富山に帰ろう。
目指す銭湯「松の湯」さんはビルが建ち並ぶ香林坊の一本裏、
鞍月用水沿いにある昔ながらのマンションの1階部分にあった。
入り口にはコインランドリーが併設されていて、
おばあちゃんが一人、洗濯が終わるのをじっと待っている。
番台のおばちゃんに料金払って浴室へ。
浴室内は思いの外明るい。
窓の外には坪庭らしきものもあり、なかなか雰囲気もある。
先客は爺ちゃん2人。
段差はあるし、バリアフリーとは縁遠い感じがしたが、
これこそ何だか昭和だなあ、なんて気がする。
浅めのバイブラ湯に身を委ねれば、
ああ、シアワセ、極楽よなあ、、、、
「松の湯」さんの最大の利点は香林坊のバス停がすぐそこ、
ということか。
富山行のバスのりばが現れ、まもなくバスもやってくる。
しかしながら、弱ったことに急に喉が乾いてきた。
うーむ、どうしよう、コンビニで缶ビールでも買うかな、
いや近くにサイゼリヤがあったよな、
ビールだけでも飲んでいくか、
辛味チキンにチョリソーも、なんて言ってりゃビールだけですむはずがない。
バスは1時間毎に走っている。
いや、しかしまだ15時すぎだぞ、こんな時間から飲んでいいのか、
何を言ってるか、おぬしは先日高崎で朝の6時から22時まで飲んでいたではないか!
なーんて具合に脳内でしばし葛藤して、
おとなしくコンビニで炭酸水だけ買って富山行きのバスに乗った。