JR東海道本線の普通電車は岐阜駅に着いた。
岐阜県は特に飛騨地方を中心に、
若かりし頃から「風呂でも行くべ」てな感じで富山や福井から
たびたび足を運んでいたし、
1シーズンだけだったけど山小屋にもいたので、
わりと縁があるといえばあるのだけど、
その県庁所在地である岐阜市に関していえば、
ほとんど足を踏み入れたことがなかった。
そんな程度であり、ほぼ未知なる領域といえた。
ただ、調べてみると市内には銭湯も残っており、
心惹かれるような食堂に、
古くからの商店街と、僕が好きな「要素」が多々残っている町であるようだった。
今回は駅前を中心に徘徊してみようと思う。
駅前の歩道橋を渡って何となくJRの駅舎側を見てみると、
電車らしきものの姿が見えた。
むむむ、あれは何だと思って引き返すと、
傍らの案内板には以下のように記されていた。
丸窓電車モ513の由来
旧名鉄モ513は、1926年(大正15年)に「モ510形」として5両製造されたうちの1台です。戸袋の窓が楕円形であることから、「丸窓電車」の愛称で多くの市民や鉄道ファン等に親しまれてきました。
2005年(平成17年)までの約80年間、惜しまれつつ廃線となる日まで市民の足として活躍しました。2019年(令和元年)に、北口駅前広場完成10年を節目に、岐阜市内線の乗入れ予定地であった芝生広場に移設しました。
調べてみると、2年前の11月16日に市内の公園から移設されたそうな。
また、この移設も「深夜にひっそり」ではなく、
日中に多くの市民に見守られながら「パレード」してきたとのこと。
外装はピカピカであるし、
幸せな余生を過ごしている車両だなあ、と思う。
駅前の大通りを北に進むと立派な神社があった。
「金(こがね)神社」とある。
さきほどの丸窓電車は以前、この神社に隣接する公園に展示されていたそうな。
さて、昼飯にするべと住宅街へとはいっていく。
目処をつけていた店には屋号を記したものは何らなく、
ショーケースも存在しない。
無地ののれんが掛かっており、
営業時間は11時から15時との張り紙がある。
この時点で11時02分。
開け放たれた扉の奥からはテレビの音声が漏れ聞こえてくるが、
「本日は終了しました」の札が掛けられたままだ。
とりあえず中に入って「やってますか」と声を掛けたら、
奥の方から「どうぞー」と親父さんの声が聞こえてきた。
目当ての品である「カツめし」を注文。
しばらくすると奥さんが
お新香に小鉢2皿、味噌汁を僕の前に並べ、
続けて「カツめし」がどんと配された。
何とも「男ゴコロ」をくすぐるようなビジュアルだなあ、と思う。
カツと野菜の上にかかっているのは「ソース」ではなく「みそだれ」。
白飯と一緒に口に運べば「これぞメシだ」と、
何とも満ち足りた気分となる。
お値段は550円なり。
隣の兄ちゃんが食べてたラーメンも美味そうだったし、
ぜひ再訪したい。
ごちそうさまでした。
名前はよく耳にする「柳ケ瀬商店街」を目指すと、
アーケード手前の一画に昔懐かしい「ポルノ映画館」があった。
それも現役のようだ。
ネタ作りのために入ってみるか、やめとこう、
と3分間くらい真剣に悩んだのは内緒の話(笑)。
でもさすがにどんな曲か知らないな、と思って
Spotifyで検索してみたら
「ああ 柳ケ瀬の夜に 泣いている〜♪♪」
聞き覚えのある曲が流れてきた。
僕が足を踏み入れたエリアはどちらかといえば「夜の町」で、
わりと静かであったが、高島屋があるあたりまでくると、
開いているお店も多くなり行き交う人も増えてきた。
そして、あれこれ気になる店も多々ある。
さらに商店街の一画には名画座もあった。
調べてみると12月に大島渚監督の「青春残酷物語」が上映されるらしい。
これで12月の岐阜再訪確定だな。
柳ケ瀬商店街を抜けた先にあるのが「のはら湯」さん。
今回はこちらでひとっ風呂浴びていこうと思う。
岐阜県の公衆浴場組合のサイトによると、
岐阜県内には16軒の銭湯があり、
うち岐阜市内にあるのは6軒とのこと。
入浴料金は460円。
脱衣場に入るとおっちゃんが1人浴室から出てきたところだった。
中に入ると先頭らしからぬ巨大な岩風呂がでんとあった。
この岩風呂は天然温泉で毎日タンク車で運んできているという。
ちょうどお昼どきということもあってか、
先客は1人だけで身体を洗っているおっちゃんの背中が見える。
僕も身体を洗ってから岩風呂へ。
うひゃ、極楽、極楽。
泡風呂もあったので岩風呂との間を行ったりきたりしつつ
湯を堪能。
徐々に額に汗が浮かんでくる。
僕はそれなりに「長湯」しているつもり、であった。
ところが、である。
先客のおっちゃんは、まだ身体を洗っているのだった。
うーむ、富山の銭湯でもつくづく感じてたことだったけど、
僕の身体の洗い方が単に雑なんだろうか、
それともある程度年配の方はみんな丁寧に時間をかけて身体を洗うものなのか。
このおっちゃんが身体を洗い終えるまで見届けてやろうと思ったが、
これ以上入っていると僕の方がのぼせそうだったので先に上がることにした。
脱衣場に出る前に身体を拭いていると
おっちゃんはようやくゆっくり立ち上がり、泡風呂に身を沈めた。
往路はJRで来たので復路は名鉄で。
こういった選択肢があるのは楽しいところ。
僕は各駅停車の電車に乗って、ぶらぶらと帰路についた。