ふだんから外食をする時は、
自分と嗜好があいそうなブロガーさんの記事なり、
ユーチューバーさんの動画を大いに参考にさせてもらっているのだけど、
似たようなタイミングで、
とあるブロガーさんとユーチューバーさんが同じ食堂を取り上げていた。
名鉄名古屋本線の堀田駅にある食堂で、
記事なり動画なりを拝見すると、
店の雰囲気といい、豊富なメニューといい、まさに自分が追い求めていた
理想の食堂といえた。
しかしながらこのお二方が似たようなタイミングでこの食堂を取り上げたのは理由がある。
この食堂を含む名店街が耐震工事の関係でまもなく閉鎖されるのだ。
うわ、これは是非行かねばと思い、数日たってから出かけることにしたのだけど、
一応グーグルマップで店舗の情報を確認したら
既に「閉店」と記されていた。
「・・・」
これはこれで残念ではあるが、
堀田駅の近くにはやはり行ってみたかった食堂があるし、
さらに少し歩いた先、常滑線の道徳駅周辺には何軒かの銭湯もあるようだ。
気を取り直しで出かけることにした。
東岡崎行きの普通電車は堀田駅に到着した。
この駅で下車するのは恐らく2度目。
学生時代に山小屋でバイトしていた男が、
この地にある某大手メーカーに就職したもので
祝いを兼ねて飲みに来たのだ。
25年ほど前のことだけど(笑)
ホームから薄暗い階段を降りると、
改札口の前でレトロな喫茶店が営業していた。
「ああ、まだ開いている店もあるんだな」と思い、
きっとここも間もなく閉店になるであろうし、
ここで食事をするのもいいかな、なんてことを考えた。
で、先にトイレに行こうと思い、
振り返ると奥に「名店街」の文字が見えた。
むむ、こっちにもお店があるのか、と思う。
で、階段を上がると、当初から行きたいと考えていた食堂はまだ営業していた。
扉を開くと、目の前におでんの鍋があって、
出汁のいい香りが漂っている。
4人がけのテーブルがいくつか並んでいて、
手前のテーブルではおばちゃんが1人で中華そばを食べつつ、
おにぎりを頬張っている。
隣には店の奥さんらしき方がいて、そのおばちゃんと何やら話している。
奥のテーブルでは作業服姿の男性がわしわしと白飯をかきこんでいる。
壁にずらりとはられたメニューから、
「イワシのフライ定食」を注文。
おばちゃんが中華そばをすすり、
「ここがなくなっちゃえばどうすりゃいいんだろうね」と独り言のようにいっている。
奥さんはちょっと答えに困ったような表情を浮かべている。
作業服姿の男性が入ってきて、
「イワシのフライ定食、ごはん大盛りで」という。
彼はおでんの鍋から串を2本ばかり脇の皿に載せ、奥のテーブルへ。
白飯をかきこんでいた男性が奥さんを呼び、
「焼きそば追加でお願いします」という。
厨房からは揚げ物の音やフライパンをあおる音が絶え間なく響いてくる。
そうこうしているうちに、ごはんと味噌汁、お新香が配された。
続けてメインのイワシフライ。
卓上のソースをたらしてごはんと一緒に食えば
「うめえ」以外の言葉が出ない。
お代は税込み500円なり。
本当に、来ることができてよかった。
堀田駅の名店街は多くの店がシャッターを閉じていたが、
残された看板をみれば、結構な数の飲食店が並んでいたのかな、
と思う。
ちょうど昼時、いくつかの残った店に、
サラリーマンたちが吸い込まれていく。
さっきのおばちゃんの
「ここがなくなっちゃえばどうすりゃいいんだろうね」って言葉が、
蘇ってきて、何がだおセンチな気分になったりした。
堀田駅を出て南の方角に向かっていると、
小屋のバイトが就職した某メーカーの建物からも、
何人もの社員さんたちが出てくるのが見えた。
その男は後に海外に赴任して、以降連絡はとっていない。
もしかすれば既に帰国して、案外この地にいるのかもしれぬし、
まちなかですれ違ったりしているのかもしれない。
山崎川を渡って瑞穂区から南区へ。
銭湯が開くには早い時間なので、時間調整を兼ねて図書館に立ち寄った。
名古屋の資料や中日新聞の縮刷版も充実しており、
あっという間に1時間以上たってしまう。
図書館を出てから進路を西へ。
しばし歩くとアピタが現れた。
らせん状になっているのは駐車場へのアプローチだろうか。
運転してると目が回りそうだなあ。。。。
交通量の多い国道247号線を横断し、
今となっては信じ難いが、
先程立ち寄った図書館にあった資料によると、
このあたりに以前は「観音山」という昭和初期につくられた人工の山があって、
スケート場やプールを擁す一大レジャー施設があったそうな。
時を経て昭和39年に山ごと取り壊されたらしいけど、
単に施設をつくるのではなく、
山をつくったというのが何ともスケールの大きな話だなあ、と思う。
道徳の町には銭湯が3軒と日帰り温泉が1軒あるのだが、
今回は銭湯の東温泉さんにお邪魔した。
先程の食堂で1000円出したもので釣り銭の500円玉が手元にあり、
愛知県の銭湯料金は今のところ440円なもので
60円のお釣りをもらうつもりで出したら、
お釣りが150円ある。
思わず「多いですよ」と言えば、そんなことはなくて、
350円というのがこちらの正規料金であるらしい。
さらに浴室は広く、ボディソープにシャンプーまで備え付けてある。
温泉地の公衆浴場なんかだとここより安いところもあるのだろうけど、
一般的な銭湯でボディソープまであって、350円とは恐るべしであったりする。
さらに男女の浴槽の仕切りは城壁のような白壁に瓦となっており、
半露天のような空間もあるなど
造りもなかなか凝っている。
先客は7、8人といったところか。
みんな常連さんなのであろう、
誰か入ってくるたびにおっちゃんたちが手をあげ、軽く頭を下げている。
今の御時世、どこの銭湯も燃料代の高騰で四苦八苦していると聞くし、
この値段を維持するのも大変なことであろうと察するが、
末永く頑張ってほしいものだ。
いいお湯でした。
東温泉さんを出て地図を改めてみれば、
朝夕しか電車が走らないことで知られる
せっかくだから乗ってみたいなあ、と思う。
しかしながらこの時点で15時すぎ。
夕方の東名古屋港駅の初便は16時50分らしい。
僕はおとなしく常滑線の電車で帰ることにして、
道徳駅へ向かった。