夫が後輩と食事を取ってくるというもので、
わたしは久々にDVDを借りることにした。
とにかくわたしと夫は見たい映画があわないもので、
こんな時でもないと好きな映画を借りれない。
そんな訳で借りてきたのが伊丹十三さんの
「タンポポ」っていう映画だ。
1985年の公開だからもう30年近く前の作品だ。
山崎努さんは全然変わらないが、
渡辺謙さんがびっくりするくらいにイケメンで
笑ってしまう。
ビール飲みながら映画を満喫して、
ラーメン屋の話なのに色んな食べ物が出てきたもので、
オムライスでもつくろうか、
パスタでもつくろうか、
ぼんやり考えていたら夫が帰ってきた。
明らかに焼き肉のにおいがする。
さらに「松阪牛って旨いな」などと言う。
ひどい、わたしと行くときは
食べ放題しか連れて行ってくれないのに。
文句を言ったら
市内のラーメン店「岩本屋」に連れて行ってくれた。
岩本屋は福井発祥で
北陸各地に十数店舗。
「口に合わなければ何度も調整する」
とあるが
何度来てもそれを調整を頼んでいる客は
みたことがない。
カウンター席に並んで座る。
わたしは酎ハイとラーメンを、
夫はラーメンとチャーシュー丼を注文。
焼き肉食べたあとで太らないのだからもはや嫌味だ。
テキパキ動く店員さんを眺めながら、
夫がポツリと言う。
「タカシさ、恋人ができたンだってさ」
少し間をおいて、わたしを見る。
「それが、男なんだってさ」
「びっくりしなかった訳じゃないけどさ、
正直、俺、嬉しかったンだよね。
うまく言えないけどさ。つい、訳わかんないまま、
ありがとうなんて言っちゃってさ」
「ま、また家にも連れてくからさ。
かわいがってやってくれよ」
どことなく頼りないと思っていた夫を、
何だか見なおしてしまった一瞬だった。
ラーメンと酎ハイが運ばれてきた。
今日のラーメンはいつになく美味しい気がした。