日曜日の福井は快晴だった。
その前日、土曜日に相方は立山の雪の大谷に行ったのだが、
以下のような「ETC割引」を利用したらしい。
北陸新幹線の開業に高速道路も便乗するのか!
と笑ってしまうようなプランであるが、
新幹線でやって来て、
レンタカーで観光する方には使い勝手が良さそうだ。
事前申込みは必要だが、
6月いっぱいまでやってるみたいなんで
是非是非北陸へお越しいただければ幸いです。
何だかんだで北陸内の移動にクルマは欠かせません。。。
で、相方はこの割引で福井から富山インターを
軽自動車で「日帰り」往復したのだが、
それだけならたいした「トク」になっていないなどと言う。
なるほど、福井〜富山インターは、
休日かつ軽自動車なら2020円。
で、相方が使った「北陸エリア」コースは
軽自動車で4000円であるから
往復でも40円しかトクしていない計算になる。
それが相方にしてみれば「気に食わない」らしい。
2日間有効なんだから日曜日もどっか連れて行け、となった。
その気持は分からなくもないが、
ガソリン代はかかる訳で(笑)
さらに快晴とあれば何処に行っても混んでいるだろう。
心惹かれたのは若狭方面であったが、
この割引では武生までしか行けない。
で、本当に何も決めないまま
福井インターから北陸道を北に向かった。
私は人生そのものも無計画な人間であるが、
ここまで無計画に出かけたのは初めての経験である。
一般道ならともかく高速を走っているのに
行き先が決まっていないなんて方は全国探してもほぼ皆無と思われる。
さて、何処へ行くか。
割引の北限は富山県の黒部インターで、
うーん、白川郷か。
どうも今行くのはもったいない。
「白山スーパー林道」が今年から「白山・白川郷ホワイトロード」となり、
通行料金が大幅に値下げされるのだ。
(普通車は3240円が1600円に、軽自動車は2610円が1400円に)
開通は6月上旬であろうし、白川郷に行くならそれに合わせて行きたい。
では今狙い目なのは何処か。
「黒薙でも行くか」
私は言った。
宇奈月温泉の「源泉」でもある。
「宇奈月からトロッコ乗ってさ、ちょいと歩けばいい露天風呂がある」
黒部峡谷鉄道はまだ全線開通しておらず(5月21日まで猫又折り返し)
それほど混雑していないと思われた。
すると相方は「宇奈月って富山だよね」と前置きし、
「今日、携帯の機種変更したいンだよね」
と、助手席でツムツムやりながら言う。
「クリーニングも取りに行かなきゃ」
「・・・」
私はどうすればいいのだろう?(笑)
空は何処までも青い。
私はちょっと散策でもしたい気分になっていた。
散策が楽しめて、温泉もあるところ。
かつ近場で。
脳みそをフル回転させて、
私は丸岡で北陸道を降りた。
そこから山手に進路をとる。
この時期、絶対に新緑がきれいな筈。
国道364号線を経由すれば福井からのアクセスも良好だ。
そして私はこの山中温泉をたびたび訪れているのだが
どうにもこうにも相性が悪いのか、
いずれも「土砂降り」または「猛吹雪」になる。
単なる「雨」や「雪」ではない。
私が山中温泉に近づくと、
決まって大荒れになるのだ。
そんなもので私は山中温泉で過去8泊しているが、
一度も当地にある鶴仙渓を歩いたことがない。
今日は「チャンス」だと思った。
これで天気が急変して雨でも降れば、
私は二度と山中温泉には近づかない。
そんな悲壮な決意もあった。
「丸岡・山中トンネル」を抜け石川県に入っても、
まだ空は青いままだった。
自転車で行き来する方が多い。
私は「道の駅山中温泉ゆけむり健康村」に車を停めた。
ここには以前から気になっていた鉄道車両がある。
昭和46年の北陸鉄道加南線の廃止まで、
平成13年まで現役で活躍。
ながらく千頭駅の片隅に留置されていた。
ヘタすれば未だ千頭駅の片隅に放置されていたか、
荼毘にふされていたかもしれないところを、
平成17年に加賀市と合併する山中町が「地元の記念に保存したい」と
そんな話が出てわずか2ヶ月で
生まれ育った「加賀」に里帰りしてきたのだ。
何ともシアワセな鉄道車両ではないかとこちらもシアワセな気分になる。
その後鶴仙渓を散策。
新緑が身に染み入る。
地元有志の方によるお茶のサービスもあった。
以前は鄙びた印象だった温泉街も、
すっかり美しくなっている。
顔を消すのが面倒なので
あえて人が写っていない写真を選びましたが、
凄まじい人々で賑わってました(笑)
さて、山中温泉には温泉街を回遊する「お散歩号」なるバスが走っている。
山中温泉のサイトによると、
素晴らしい自然の中、乗り降り自由。 名所旧跡や文化工芸ギャラリーなどの散策の足がわりにとっても便利です。 温泉街を1周40分で1日10周! フリー乗車券500円(2日間有効) 小学生250円、小学生未満無料
とある。
ま、ここまではよろしいのだが、
この文面には続きがある。
山中温泉の旅館利用以外の方は800円
山中温泉に宿泊するなら2日間500円で利用できるバスが、
宿泊しなければ800円にもなるのだ。
宿泊しないとなればほぼ「1日」だけの利用であろうから、
何とも割高といえないか。
散策に疲れたから「ちょっと乗りたい」と思っても
800円なら躊躇する。
500円でも躊躇する。
ちょいのりなら路線バスもあるが、
温泉街を抜ける便は少ない。
さらに山中温泉に限らず、
加賀市全体で見るとキャンバスという、
割りと使い勝手のいい周遊バスがあるのだが、
こちらも1日券または2日券のみの設定で、
ちょこっと1区間だけ乗るなんていう利用には不向きだ。
(小松空港線は別運賃の設定あり)
さらにキャンバスの料金に注目したい。
1日券は1000円だが、
2日券は1200円。。。。
「加賀温泉に宿泊しないと損したような気にさせられる」
料金と言えないか?
実際に乗ってみると、
ガイドさんの案内もあるし楽しいバスなのだが、
あまりにも「宿泊」させようとしていることが見え見えではないか。
さらに「永平寺お出かけ号」なるバスも存在する。
これは片山津温泉から加賀温泉駅、山代温泉、山中温泉を経由して
利用は加賀温泉郷の宿泊者に限られる。
さらによく見れば「片山津・山代・山中温泉」の宿泊者に限るとある。
粟津温泉は仲間はずれですか?
(小松市だから???)
しかしながらこのバス、
普通にJRの時刻表にも掲載されているのだ。
そしてJRの時刻表には「宿泊者限定」とは触れられていない、
何とも恐ろしいバスである。
「乗るなら泊まれ」だ。
私は以前、福井から金沢まで路線バスを乗り継ぐ旅をしたことがあり、
計画時点でこのルートに着目したのだが、
宿泊者限定と知り愕然とした記憶がある。
で、仕方なく北潟湖のほとりを2時間近く歩いた。
加賀温泉は宿泊すれば「大歓迎」してくれるが、
日帰りの利用者にはとことん冷たい。
少なくとも私にはそう感じるし、
もったいないことをやっていると思う。
キャンバスもお散歩号も一乗車の券があれば便利だろうし、
永平寺のバスだって誰もが使えるようにすればいい。
使えないなら時刻表から削除しておくれ(笑)
そして思う。
こんなバスを企画、担当している方々は
他の観光地で周遊バスを使ったことがないのかもしれない。
自腹で旅行もしたことないのではないか。
でなければこんな不便で妙なバスを
妙と思わずに運行を続けている訳がない。
これは北陸各地の観光地に共通して言えることだが、
個々の店や宿、食堂なんかはわりと頑張っているのだ。
だが、そこに至るアクセスや周遊を旅人の「視点」で見ると、
ほぼ首をかしげざるをえない。
わざわざ「宿泊者限定」にする意味が分からない。
だれでも乗れるようにして、
東古市の駅でも寄ってあげれば勝山から東尋坊にいたるまで
格段にアクセスがよくなるのに、
自分のところのこと「しか」考えていない典型例といえる。
さらに加賀の各温泉、山代にしろ山中にしろ片山津にしろ、
特急列車が停車するJRの加賀温泉駅からは
いずれも「バス」または「タクシー」の利用となるのだが、
路線バスの本数は恐ろしく少ない。
ここで便利なのが先述のキャンバスで、
宿との往復だけで2日間券も有意義に使えそうな気もするが、
宿泊となればたいがいの宿が「無料送迎バス」を加賀温泉駅まで出している。
金沢なり他の観光地と「絡めて」やってくると思われる。
となれば宿泊当日、または翌日に加賀市内を観光するにせよ、
大概の客に2日券は不要となり、1日券で充分という計算が成り立つ。
なら1日券を購入しようとして1000円なら別に何とも思わないが、
2日券が1200円なら何か感じるのが「至ってフツー」の考えではないか?
フツーの旅人なら2日券の1200円が「安い」と思うより、
1日券の1000円が「高い」と思うものではないか。
これで2日券が1800円くらいするなら何とも思わないだろう。
この1200円の2日券が存在するだけで、
1000円の一日券の価値を大幅に下げているとも言えないか。
実際に乗ってみれば一日1000円の価値は充分にあるのに、
イメージが悪くなるのではなかろうか、と余計な心配をしてしまう。
私の感覚がおかしいのだろうか?
ただ、これだけは自信があるのであえて書く。
自分の反省もふまえて言えば、
観光や運輸に関わる仕事をしている方は、
驚くほど他の観光地を「知らない」
と、いうより知りようがない。
人様が休みの時ほど忙しい業種なので、
家族などとも休みがあわない。
だから出かけることもない。
仮に出かけたとしてもほぼ平日である。
何処もすいているから繁忙期がどんなものか知らない。
他が繁忙期なら自分たちも繁忙期だ。
よそを見てこいなんて言われることもある。
でも自分では行かない。
会社が金を出すなら行く。
てなもんで「視察」「研修」「出張」扱いとなり、
ほぼ会社負担の旅行となり「旅人」の視点など養えない。
要するに「旅人」の視点に立ったことのない人達が、
怪しげなカンコーチを作り上げて行くのだ。
現地で働くとよく分かる。
そんなもので加賀市も
こんな妙なバスを妙だと思わず長きに渡り運行している時点で
相当マズイと思われる。
(あ、北鉄さんに言ってる訳じゃないですよ・笑)
道の駅までぶらぶら戻る。
行き交う観光客の言葉を聞いていても、
あきらかな変化を感じる。
関西弁は減り、関東の言葉、あと、中国語。
本当にびっくりするくらい、関西のお客さんが多かった。
社員旅行に消防団、町内会の旅行、友達との温泉旅行、
関西の人間がちょっと一泊、
それも団体で、と考えれば「芦原」か「加賀」になった。
従って宿なんてみんな大規模である。
逆に個人だと行きづらいような感じさえあった。
だが、団体旅行が衰退し、個人旅行にシフトしていくと、
それについて行けずに廃業する宿も多くなった。
だが北陸の方の脳裏には
常に「バブリー」だった頃、
団体客で賑わっていたころの姿が残っちゃいないか。
私は運輸も宿も飲食もやらせてもらったが、
「いやー、昔はすごかったンだよ」
なんていつまでも言ってるクソ上司が何処にもいた。
どんなに対応が悪くても団体のお客さんであふれていたもんで、
今なお態度がめちゃくちゃ横柄なのだ。
団体客が多かった観光地が個人客にシフトするとどうなるか?
団体客にはたいがい「添乗員」がつく。
何かあった時、客がクレームを言う相手は添乗員だ。
決して宿や業者ではない。
これがどういうことかと言えば、
そこに1000人のお客さんがいたとして、
ま、40人に1人の割合で添乗員がいたとすれば、
何かトラブルが発生しても宿や業者は25人の添乗員と話せば事足りる。
添乗員も仕事、宿や業者も仕事だから
わりと「対等」な関係で「やりあう」。
ところがこの団体という枠がなくなると、
ちょっとしたトラブルが起きただけで、
全てのクレームが直接宿や業者に向かう。
とてもじゃないが1000人のクレームなど受けたことがないから、
もうパニックである。
「俺のいうことが聞けねえなら帰れ!」
なーんてお客さんに言ってる定年間際の上司もいた。
吉本新喜劇見てるよりオモロイ世界です(笑)
自分がいた職場は極端な例かもしれないが、
北陸の観光地は一時期どこもかしこも暗黒時代であったと言える。
それに差し込んだ光が「北陸新幹線」だ。
だが、現在北陸各地を訪れる観光客は
慣れ親しんだ関西のお客さんだけではない。
これまでのリピーターではなく、
新規のお客さんが
全国各地から訪れているのだ。
新幹線バブルなんてすぐ終わる。
全国の方に2回、3回と足を運んでもらえるような場所なのか?
来てもらえるような態勢を作っているか?
クレームをきちんと受け止めているか?
接客は適切か?
これまで安くて近いから来てくれていた関西のお客さんは
北陸の宿を取りにくくなっているだろう。
宿がとれなくなれれば足も向かないだろう。
するとみんな他に行ってしまう。
そして新幹線バブルが去ったあと、
関西のお客さんは戻ってきてくれるだろうか?
ましてLCCの台頭で関西から1泊2日で
北陸1泊と同じ予算で行ける場所は
全国各地に広がっているのだ。
新幹線がつながって、首都圏は近づいた。
確実に観光客が増えているのも実感として分かる。
だからこそ、観光客の視線を今一度考えて欲しい。
切にそう願う。
道の駅に隣接する温泉でひとっ風呂浴びた。
入浴料は500円。
菊の湯の風情にも惹かれたが、
こちらだとシャンプーに石けんもあるし、
立ち寄り湯には気楽だ。
露天風呂も気持ちいい。
帰り道、私はわざわざ加賀インターまで向かい、
無理やり北陸道を利用して福井に帰った。
これを「得した」というのかは知らないが、
相方はご満悦そうであった。