北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

渋温泉、別所温泉、新幹線

今回のおじさん4人の旅で宿泊したのは長野県の渋温泉

なる場所で、

パンフレットには以下のように紹介されている。

 

渋温泉は開湯千三百年の古い歴史があります。

江戸と信州善光寺とを結ぶ脇街道で、草津道の要路にある渋温泉は重視され、湯宿もともに愛され続けてきました。この後、長い歳月の中で地元住民は、九つの外湯も大切に育てあげ、今日を迎えました。

今では渋温泉に、お泊りのお客様方を「一泊住民」として大切にお迎えし、湯鍵をお貸しして巡浴をお楽しみ頂いております。

 

 

 

9つ全ての外湯は入らなかったが、

夜に3つ、朝に3つ、

さらに宿にも湯があったのでまさに温泉を堪能である。

 

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外湯巡りをしつつスマホで景色を撮影していた連れが

「街が生きてるなあ」としみじみ言った。

その一言に、みんなして頷く。

 

決して賑やかしい、っていう訳でもないのよな。

でも、生きている。

福井を愛してやまない彼は

「こんなんじゃ、新幹線できたら、あわら、やばいなあ」とも言った。

 

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石畳の温泉街にカランコロンと響く下駄の音、

行き交う人の顔は何とも楽しげで、

それぞれの外湯でスタンプを押していく方も多く見かける。

僕らは石畳に面した部屋に泊まったが、

夜遅くまで下駄の音が響いていた。

 

北陸の温泉は宿に入ると温泉も飲食も二次会もお土産も全て完結してしまい、

あえて外に出る必要性を全く感じないが、

その弊害として温泉街全体にまとまりがない。

 

ところが渋温泉の、少なくとも今回僕らが泊まった宿には、

土産物コーナーはおろか自動販売機すらなかった。

ビールでもジュースでも、土産物も、

何か欲しければ外に行くしかない。

他の宿も似たようなものなのかもしれない。

 

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だからかもしれないが、

ラーメン屋も土産物屋も射的屋も、

どこにもお客さんの姿がある。

何せ、生きている。

 

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今後新幹線の延伸で、関東のお客さんの訪問に期待しているであろう

加賀やあわら温泉の関係者は、

関東のお客さんたちがこれまでどんな温泉に行っていたか、

少しくらいは知っておいた上で、対策を練っていた方がいいように思う。

それぞれの宿が、ではなしに、

エリア全体で。

 

何せ、連れが言った

「街が生きている」の一言は完全に同感だった。

僕は北陸の温泉地で、

街が生きているなんて考えたことはこれまで一度もなかった。

でも、渋温泉は間違いなく、生きていた。

 

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僕は元来ケチを絵に書いたような人間なもので(涙)

今回長電の2日間有効のフリーきっぷを手にしているのだから、

とことん長電を楽しみたいと考えてしまうのだが、

連れに関してはまったくそんな感覚はないようで、

「せっかく長野に来たし、上田にも行ってみたい」などと言う。

 

上田が目的というよりは、

サマーウォーズ」とかいうアニメ映画に出てきた上田電鉄の電車に乗りたいそうな。

あとの2人もこの映画は見たらしいが、

僕は見ていないからいまいちピンとこない。

ただ、僕自身も上田電鉄は未乗であるもので、まいっかな、なんて気分にはなる。

 

ただ、ほかのメンバーの会話を聞いていると、

どうも長野市上田市の位置関係を、福井市坂井市くらいに考えているような気がしたし、

いや多分福井市加賀市くらい離れている、などと余計なことを言って、

「なぬ、なら辞めとくか」なんていう話になるのも申し訳ないもので、

余計なことは言わずについていくことにする。

 

何せ今回は「誘われた」側である。

テツ同士の旅、というのは、誰かに従うというルールを徹底しないと、

互いに好き勝手なことを言ってわやわやになる、

というのはこれまでの人生でたびたび経験していることだ。

福井のみんなが行きたいところに行ってくれればそれでいい。

 

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湯田中からの帰路はかつての成田エクスプレス

スノーモンキーで長野に向かう。

朝イチの特急だし、それほど混んでもなかろうと楽観視していたが、

湯田中出発時点でほぼ全ての席が埋まる大盛況で、

小布施でそれなりに下車したが、それ以上に乗ってきて、

立ち客も現れた。

 

行きの「ゆけむり」ではおじさんたちは少年のような表情になっていたが、

スノーモンキーでは僕以外の3人は爆睡していた。

長野に到着。

 

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長野駅で運賃表を眺め、「結構遠いんやなあ」と誰かがいい、

「45分くらいかかるから」と言ったら「はあ?」とも聞こえる。

誰も下調べをしていないのがこのメンツの恐ろしいところである(笑)

 

そして、みんな福井という平和な地に住んでいるし、

もともとの運賃を知らないし、

3セク云々2社またぎという感覚もないから、

長野ー上田が770円という運賃もこんなもんか、という感じであるが

中途半端に以前を知っているとやはり抵抗を感じてしまう。

 

長野ー上田間の営業距離はJRが9.3キロ、しなの鉄道が25.1キロの合計34.4キロ。

JRが200円、しなの鉄道が570円の単純な合算だ。

仮にこれがJR東日本単体の運行なら580円になる。

 

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新幹線の弊害を書くとやたらめったら絡まれるので(笑)これ以上は深く書かないが

多くの会社員は通勤手当は会社から支給されるから関係ないであろうが

自腹で払わなければならない子どもの通学定期なんてえらいこっちゃな額になっている。

↓参考までにしなの鉄道の通学運賃表で篠ノ井をまたぐ区間を見てみるとよく分かるかと思います。

http://www.shinanorailway.co.jp/rail-info/fare/docs/20150314_koukou_shinetsu.pdf

 

3セク化で運賃が割高になることは伝えられているが、

これまで「通し」で買えたところがことごとく「合算運賃」になることは

あまり伝えられていないような気がしなくもない。

 

こういったことはこれから新幹線がやってくる福井や加賀の方々は

きちんと知っておいた上で覚悟しておいた方がいいと思われる。

福井の3セクIRいしかわ鉄道越美北線と福井の3セク小浜線と福井の3セク敦賀以南の北陸線と福井の3セク、多少の割引は設定されるだろうが、みんな基本的に「合算」。

当然のことだが武生や鯖江の方が福井から新幹線を利用するのも、福井の3セク+JRの合算になる。

「合算」を甘く見てはならない。

 

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電車は上田に到着。

鉄道でも車でも何度か通ったことはあるが、

実際に降りたのは初めて。

新幹線に乗っていると、非常に乗降が多い印象はある。

 

駅前の食堂で「馬肉うどん」を食す。

宿でも馬刺しが供されてみんなして「うめえもんだな」と関心したが、

煮込まれた馬肉もまたオツな感じであった。

 

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まずは観光ということで上田城へ向かったが、

恐ろしく暑い、いや、熱い。

僕は長野県に期待していたのが「涼しい」ということであったが、

今年の猛暑は長野も例外ではなさそうだ。

格好なんて気にしていられないから、

僕は濡れタオルを頭に巻いていたのだけど、

直にカラカラに乾いていく。

 

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駅に戻り、いよいよ上田電鉄に乗車となる。

窓口で外湯入浴券付ききっぷ(1290円)を購入。

上田ー別所温泉の片道が590円、往復が1180円で、

この上で外湯に2カ所も入浴できて1290円なんてずいぶん格安なきっぷだなあ、

と思ったが

別所温泉の外湯の入浴料が1カ所150円と格安なのだった(笑)

 

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ホームに出ると、東急から来た2両編成の電車が出発を待っていた。

「丸窓」を期待していた連れは残念そうな表情を浮かべている。

 僕は「丸窓」の車両なんてとっくに引退していると思っていたが、

丸窓を模した車両が走っているそうな。

 

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最後尾の窓から上田電鉄を堪能する。

どの駅もこじんまりとしており、かわいい。

そして、驚いたのは電車がぐいぐいと登っていくことだった。

別所温泉は何とも見晴らしのいい、高台にあった。

 

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駅からさらに登って温泉街へ。

途中に雰囲気の良さげな寺が見えたもので参拝。

たまたま立ち寄った結果論であるが、

ここは北向観音という本堂が北を向いている極めて珍しい寺であるとのこと。

これに対し、長野の善光寺は南を向いているらしい。

 

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北向観音のサイトには以下のような記述がある。

北向観音様は北向に建立され 千手観音様を御本尊として現世利益を願い、また善光寺様は南向きに建立され阿弥陀様を御本尊として未来往生を願います。

現在と未来の片方だけですと片詣りと言われおり、向き合ってる両方をお詣りしたほうが良いと言われるようになりました。

今の時代の幸せを願い極楽世界でも幸せであるようお詣りください。

 

何だか急にご利益がありそうな気がしてきた(笑)

 

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別所温泉に3つある外湯のうち、大師湯と石湯で湯を頂いた。

渋温泉ほど熱くなく、入りやすい、そんな印象。

それにしてもこれだけ短期間に多くの風呂に入る、なんて経験は初であろう。

おじさんたちの肌ツヤも心なしかよくなった、気がしなくもない。

 

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駅で電車を待っていると1人が

「こうやって他に来てみると、福鉄やえち鉄がいかに便利かがよく分かる」

と言った。

 

本当にそのとおり、で、

長電も上田電鉄も常に時刻表とにらめっこしないといけなかったが、

福鉄やえち鉄だと時刻表なんてほぼ不要だ。

いかにあの2社が優れた私鉄であるかということは、

他県の似たような規模の私鉄に乗るとよく分かるし、

他県で電車に乗るまでは分からない、とも言える。

 

再び電車に揺られて上田に戻った。

 

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富山、福井への帰路は流石に新幹線。

上田から富山までの所要時間なんてわずか1時間17分。

北陸新幹線に初乗車だった1人は

「やっぱ新幹線って早いなあ」と笑う。

 

無論、そのとおりなのだけど、

これは長野まで在来線で半日かけて行ったという前提があるから

「早い」という感覚が生まれるのだろうと思う。

最初から新幹線で行っていれば、

それが長野という場所の距離感の基準になる。

 

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ま、僕も新幹線は早いとは感じているが

必要かと言われればやはり「NO」なのよな。

北陸新幹線なんてダイヤは分かりにくいわ、接続は悪いわで

便利と思える要素がそもそもない。

上越妙高を挟んだ2社またぎの料金もふざけるなとしか言いようがない。

 

地方にとって今一番必要なのは

災害に強い在来線と一般道路だと思う。

 

今年の冬に雪で北陸線は止まりまくったが、

新幹線は止まらなかった、新幹線の建設を急げ!

なんて話しもお聞きしたが、

それなら北陸線の雪対策の方がよほど重要だし、

なぜそういった話にならないのか不思議で仕方ない。

新幹線なんて人しか運べないが、

在来線なら人もモノも運ぶことができる。

 

何よりも新幹線は在来線の「線増」というのが本来の考え方であったはずで、

東海道山陽新幹線上越新幹線東北新幹線の盛岡以南、九州新幹線の熊本以北、川内以南はこの考え方に基づいている。

だから在来線の運賃+新幹線特急料金で乗車することができる。

あくまで「幹線」(在来線)あっての「新幹線」なのだ。

 

僕も「新幹線」なら大歓迎である。

長らく「新幹線」が北陸の地に来ることを願っていた。

しかし北陸にやってきたのは「新幹線」とは名ばかりの、

単なる高速鉄道で在来線をズタズタにした。

新幹線を名乗るのもおこがましい。

 

これ以上書くと脱線しそうなのでやめておく。

いや、書いたけど消した(笑)

 

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富山で一人寂しく下車して新幹線を見送り帰宅。

腹が減ってきて台所をあさったがろくな食材がない。

かといって買い物に行く気力もわかない。

 

仕方なく、ネギを刻みつつそうめんをゆで、

一人寂しく缶ビールをぐびりと飲み、

そういや今回はせっかく信州に行ったのに「そば」も食わなかったな、

なんてことを思う。

 

福井に帰ったメンバーは秋吉に行ったそうな。

そんな話を聞いたら、

寂しさが一層増した夏の夜となった。