何処か涼しげなところはなかろうか、
そんな思いはあるものの、
家を一歩出るだけでもおっくうになるような暑さが続いている。
そんな矢先、テレビで何だか涼しげな映像を見かけた。
昨年の台風で被害を受けた入善の沢スギが復活、
そんな内容だったか。
映像では森の中に続く散策路を地元の子どもたちが清掃していた。
沢スギかあ、聞いたことはあれど行ったことはない。
この時点では入善の山手の方にあると思っていたので、
今度宇奈月に風呂でも入りにいくついでに寄ってみるか、
てな気分でいた。
ところが地図を確認してみると海のすぐ脇である。
場所的にはあいの風とやま鉄道の西入善駅と入善駅のちょうど中間地点あたりを
まっすぐ海に向かったあたり、といったところか。
歩いていけない距離でもなさそうだ。
そんなもので早速向かってみることにした。
9時39分発泊ゆき、2両編成の電車は拍子抜けしそうなくらい空いていた。
いつもそこそこ利用者がいるンだから
日中も頑張って4両編成にすればいいのに、
なんてことはかねがね思っていたが、
この現状を見ると仕方ないのかな、なんてことも思う。
約40分の乗車で西入善に到着。
山側に駅舎がある。
僕が行きたいのは海側。
しかし、入善側を眺めても踏切らしいものはない。
富山側に振り向いてみれば、
すぐ近くに踏切が見える。
仕方ない、遠回りになってもいいから少し富山側へ戻るか。
海が近いからか、風の通りがいいのか、
富山市内より心なしか涼しく感じる。
しかし、歩きながら、別の理由があることが分かった。
常に、何処かしこから水の流れる音が聴こえてくる。
長らく雨なんて降っていないのにもかかわらず、
用水にはこんこんと水が流れ続けている。
そういえば入善って湧水の町なんて話も聞いたことがあるような、
ないような(笑)
海に出て進路を東へ。
水の音が聞こえなくなったからか、
単に日のあたりがよくなったのか、
急激に暑く感じてくる。
40分ほど歩くと沢スギらしき林に出た。
しかしながら入り口が分からない。
ぐるりと林を一周すると駐車場と自然館が現れた。
さて、沢スギとは何ぞや。
入善町のサイトには以下のように紹介されている。
入善町吉原の海岸近くにスギの多い林があります。これが昭和48年8月4日国の天然記念物に指定された「杉沢の沢スギ」です。昭和44年頃には約45haあったといわれる沢スギの林も、圃場整備事業によりそのほとんどが水田へと姿を変えてしまいました。現在はわずか2.67haのみが保存され、全国でも珍しい平地の湧水地に生育する自然林として保護されています。林内の湧水は昭和60年3月28日に環境庁から「黒部川扇状地湧水群」として全国名水百選の一つに選定されました。
林内は湧水や地下水の影響で冬でも暖かく、タブノキ、ユズリハ、カラタチバナなど暖かい地方の植物もたくさん生育しています。また、黒部川の氾濫により山から流されてきたと思われる、アケボノシュスラン、ノリウツギなど山地性の植物も見ることができます。またシダ類の種類も多く、暖地性の植物と山地性の植物が同時に見られる貴重な場所です。 杉沢の沢スギ|入善町
正式な名称は「杉沢の沢スギ」だそうな
早口言葉で5回言うのは厳しいな、なんてことを思う
自然館の中から林の中へ。
とても周囲に田園風景が広がっているとは思えない、
うっそうとした林の中を木道が伸びている。
木々は日差しを遮り、心なしか、
いや、かなり涼しく感じる。
そして、途中から中に入れたことも判明(涙)
涼しさを倍増させるのはやはり水の音だ。
林の中にはそこいら中に水が流れている。
触れてみると恐ろしく冷たい。
こりゃいいや、遠路はるばる来た甲斐がある。
入善の町外れに、こんな異次元の空間みたいなところが存在していたなんて。
先週行った宮島峡といい、今回の沢スギといい、
何だかんだで富山には行ったことがないところが多々あるもんだなあ、
それが正直な感想。
何とも心地よい森林浴を堪能させてもらった。
展望台にも上がってみた。
この日は見えなかったが山の案内に鹿島槍ヶ岳や五竜岳なんて書いてある。
え、何で後立山連峰の山が見えるのだろうとしばし考えたら
入善は黒部川の東に位置するから
後立山連峰が見えて当然のことなのだったww
涼しさの反動は半端ない。
林を出た瞬間に汗がだらだら流れ出す。
さらに歩けども歩けども、
入善の町が近づいてくる感じがしない。
水筒に入れた茶が空になる。
何故か便器が落ちている。
沢スギから歩くこと約40分で入善の市街地へ。
お祭りでも行われるのか、
町が何だか華やかに彩られている。
さて、昼飯だ、何かあるかな、
なんて考えた直後に目の前に「食堂」の看板が現れた。
矢印の指す方を見てみると、何とも渋い食堂が見えた。
「かおり食堂」とある。
店内は外観に負けず劣らずの「THE 昭和」であるが、
冷房はしっかり効いておりホッとする。
確実に地元の、それも男性ばかりが、
新聞を読んだり、カレーを食べたりとそれぞれの時間を過ごしている。
喫茶店のようなカウンター席に座り、メニューを眺める。
全体的に安く、
うどん、そばは350円、
中華そばは450円。
愛想のいい奥さんに「カツ丼」700円を注文。
しばらく待っていると、お手洗いから男性が出てきた。
ま、当然用を足していたのだろう、と思っていたら、
続けてさらに男性が出てきた。
奥さんが「いらっしゃい」と言う。
どうやらお手洗いの扉の先に駐車場側の入り口があるようだ。
カツ丼が配された。
何ともずっしりとしたカツ丼だ。
こんな重みを感じた丼ってずいぶん久しぶりな気がする。
玉子はわりとしっかり火が入っている。
奇をてらわない、これぞ昭和のカツ丼って感じ。
一味をちょいと振っていただきます。
旨い、でもそれより先に何だか懐かしいって言葉が先に出てくる。
うちの母が作るような味でもないのよな、
いったい誰に作ってもらったカツ丼が
いや、どこで食べたカツ丼がこんな味だったンだろうか。
箸を進めつつ考えていたがさっぱり思い出せない。
味噌汁も、たくあんも、やはり懐かしい。
あれこれ考えつつも完食。
ご飯もしっかり入っており、腹もすっかり満たされた。
ごちそうさまでした。またお邪魔します。
入善の駅前に達したところで、
富山方面の電車が出発していった。
ま、慌てて帰ったところで暑いだけだ。
恐ろしく冷房が効いた待合室でしばし待ち、金沢行きの電車に乗った。
電車は若い世代で大いに賑わっていた。
どの顔も楽しげで、友人との会話を楽しんでいる。
昔の電車内ってみんなしておしゃべりしてたよなあ、
みんなしてスマホ眺めてるより、
よっぽど健康的な光景だなあ、とおじさんは思う。
富山に到着。
外に出ると、時間的なこともあるのかもしれないが、
やんわり吹く風が熱風にしか感じない。
暑いを通り越して、息苦しさすら覚える。
熱風の中を帰宅した僕はすっかり汗だくになり、
ひとまず水シャワーを浴びてすっきりしてから缶ビールを1本あけ、
さらに冷蔵庫に残っていた最後の1本を飲み干した。
それでも何だか物足りないがないものはない。
仕方なく僕はスーパーに買いに行くことにしたのだが、
往復15分ほどの行程で当然また汗だくになってしまい、
再び帰宅してシャワーを浴びて、
たて続けにもう2本、缶ビールを飲んだ。