相棒から連絡があり、
「日曜日、野球でも見に行かないか」
などと言う。
「丹南野球場ってとこでやるンだって。福井と富山」
BCリーグ、か。
最近は初夏を思わす陽気が続いている。
日曜日の天気も、うむ、いい。
ビール片手に野球観戦、なかなか良さげだ。
「行くべ」と返事してその日は終わった。
それからしばし、富山と福井ならどっちを応援すればいいンだろ、
そんなことを考える日が続いていた。
無論、今なら福井を応援しなければならぬ、
と言いたいところだが、
僕が球場に足を運ぶと、
応援していた球団は100%負ける、
そんなジンクスから未だ抜け出さずにいる。
昨年、福井ー福島戦を観戦に行った時は、
途中で雨天コールドゲームとなった。
木曜日、
僕の富山時代の同僚が、
ブログで富山ー福井戦を観戦しに三国まで行った、
そんな記事をあげた。
その時は富山が勝ったそうな。
と、なれば日曜は富山を応援すれば福井が勝つな、
はて、丹南野球場ってどこなんだろ、
そんな思いで福井ミラクルエレファンツのサイトを覗いてみた。
すると、驚くべきことに気付いた。
5月28日(日)に、福井ミラクルエレファンツは確かに試合はあるものの、
対戦相手は石川ミリオンスターズで、
会場は金沢市民野球場、とある。
その一週間前の5月21日(日)、福井は富山と丹南総合野球場で対戦をしていた。
相棒は一週間、まるまる勘違いをしていたのだ。
危ない危ない、
もう少しで試合もやっていない球場に足を運ぶところだった(笑)
そんなことがあっての日曜日。
もともと野球を見に行くつもりだったもので、
お互いまるまる一日あいていた。
勝山行きの電車に乗り込む。
「ならどうするか」
そんな話になった時、相棒が言ったのが
「いつもぶらぶらしてんだろ、どっか福井で面白いところ連れてってよ」
ということだった。
これは非常に弱る一言、だった。
おおよそ一般の方々は、
まず目的があって、どう行くか、そんな思考回路であると思うが、
そんな流れなもので、目的地というのは二の次だ。
自分一人ならそれで十分満足して過ごせるのだけど、
だからといって第三者が楽しいかといえば、
決してそんなことはないだろう。
とはいえ、日頃から福井県内をウロウロしてるのも事実な訳で、
せっかくだし満足してもらいたい、そんな思いもある。
そこで思い出したのが、
昨年、この相棒が奈良の大仏を見たいと言っていたことだった。
実際、福井から紀伊半島を一周して奈良に行く、
そんなことをやったのだが電車に乗るのは苦ではないようだ。
「おぬしは越前大仏を見たことがあるのか」
僕は問うた。
相棒は「一回も見たことがない」と言った。
決まり、だ。
勝山駅でママチャリを借りた。
僕は日頃から自転車に乗っているが、
相棒いわく「学生時代以来」とのこと(笑)
オッサン2人ママチャリにまたがり九頭竜川を渡る。
勝山は過去の経験から、
平泉寺や恐竜博物館を目指さない限り、
市街地をウロウロするなら自転車が最適であるように思う。
えちぜん鉄道の利用者なら50円で借りることができるのも魅力だ。
まずは僕も一度も行ったことがない
勝山城博物館を目指した。
バイパスを車で走れば
「勝山にも立派な城があるんだなあ」なんて思うが、
城ではなく、城に似せた博物館、というのがポイント。
越前大仏と同じく、勝山出身の実業家、多田清さんが建てたもの。
駐車場の一画に自転車を置き、
勝山城博物館を目指す。
近づけば近づくほど、
本当にこんなものを一個人が資金を出して造ったのか、と、
その存在感に飲み込まれそうになる。
本来の入館料は500円だが、
えち鉄サポーターズクラブやJAF割など各種割引もある。
この日は永平寺大野道路開通記念キャンペーンと称した冊子が
入り口前に置いてあり、
「当館の割引券もついてます」とご丁寧に記してあった。
そんなものでこの日の入館料は1人400円。
入館券を購入したら、
「スリッパに履き替えてください」とのこと。
土足禁止の博物館なんて初めてだ(笑)
エレベーターで6階へ。
6階は展望台となっており、眺めはいい。
ここからは階段を下って各階の展示物を鑑賞しながら下っていく、
そんな流れになっているようだ。
そして、相棒曰く「誰もおらん」
勝山城博物館、
高さ57.80メートルを誇る日本一高い天守閣、
にもかかわらず、
僕ら以外の客は1人きり、だった。
越前大仏はもはやB級スポットとして、
多くのブロガーさんたちが取り上げているものの、
勝山城博物館について記したブログを探すのは
かなり困難と言っていいレベルだ。
駐車場には「ソフトクリーム」の有名店があり、
そこそこ人が来てるにもかかわらず、
博物館に実際に足を運ぶ人はほぼ皆無。
しかしながら越前大仏では知り得ない
多田清さんの生き様について触れることができるのは
勝山城博物館の方なのよな。
僕は正直言って、一番見ごたえがあったのが、
この建物の建設時の様子や
多田さんについて知ることができる1階の展示だった。
僕はこの多田清さんなる人物に対し、
尊敬の念を抱いているのだが、
図書館などに行ってもネット上でもいかんせん資料が少ない。
そういった意味ではこの博物館の存在はありがたかった。
多田さんが存命ならば、
この博物館や大仏をどう勝山のために活かしたのだろう、
とは思う。
定番のソフトクリームを食べつつ、
「誰もおらんのは越前大仏も一緒だわ」
そんな話をしてから越前大仏へ向かう。
この日はグルメイベントが開催されており、
駐車場は車で埋め尽くされていた。
イベントは門前町の空き店舗を活用して行われていた。
何度か越前大仏は訪れているが、
門前町が賑わっている光景なんて初めて見た(笑)
↓以前の様子
さらにこの日は通常拝観料500円の越前大仏が
無料開放されていた。
そんなもので境内も多くの人で賑わっている。
こちらもまた初めて見る光景。
いつも越前大仏に来ると、
ほとんど他に客がいないもので、
広大な敷地をひとり占め、
そして大仏さまを見上げ、
男の生きざまについて思案する、
今回もそんなつもりでいたがアテが外れた。
大仏殿の中では法要も行われていた。
生の読経を聞きながら見上げる大仏さまは、
いつにも増して存在感があるように思えた。
というよりずいぶん雰囲気が代わったように思う。
何でだろ(笑)
以前の大仏様、もっと黒々していたのに。
この日、境内で行われていたのは
グルメ博の「スタンプラリー」だった。
3カ所でスタンプ押したらくじが引ける、
そんなものだったが、
老若男女問わずほとんどの方が用紙を手にしていた。
僕らもやってみたけど、
「スタンプラリー」って楽しいのよな(笑)
僕らはもうひとつ、
永平寺大野道路開通記念キャンペーンのスタンプラリーもやっている。
僕らの前でくじを引いた方に
「カランカランカラン〜」と当たり鐘が鳴らされて、
景品をもらって大喜びしている。
僕らは「うまい棒」もらいました(涙)
「昼飯どうするよ」と相棒に問えば、
「ゆかりで唐揚げ定食を食べたい」と言う。
何でも会社の若手社員がハマっているらしい。
僕も久しぶりに行きたいと思って向かったら定休日だった。
さて、どうするか、
としばし悩んで沢町にある「やく志屋」さんを目指した。
ところがこちらものれんは掛かっていなかった。
「・・・」
「どーするよ」なんて話を店の前でしていたら、
中からお客さんらしき方が現れ、
続けて店主らしき方がのれんを表に掛けた。
単に掛け忘れ、だったのか(笑)
僕はおろしそばと親子丼のセットを注文、
大根おろしが苦手な相棒は天ぷらそばを注文したのだが、
店主さんらしき方は
「それは温かいうどんのつゆで食べるそばということでよろしいでしょうか」
などと不思議な確認をしている。
こちらのお店では温かいそばなどほとんど出ないのかもしれない。
ま、福井のそばって基本的に「冷たい」ものだもんな。
駅そばを除いて温かいそばを食べてる方をあまり見かけない、
そんな気もする。
おろしそばと親子丼のセットは
味噌汁に揚げ出し豆腐もつくなどなかなかの豪華版だった。
親子丼はちょいと濃い目の味付けでわさわさと箸が進む。
おろしそばのつゆはちょっとあっさりめだけど、
最後の一滴まで飲み干せる美味しさ。
ごちそうさまでした。
はたや記念館でスタンプを押して、
勝山駅に戻りママチャリを返却。
永平寺大野道路開通記念スタンプラリーは
3つ以上のスタンプで大野市、勝山市、永平寺町の特産品が抽選で当たる、とのこと。
あと1カ所は永平寺町にオープンした「えい坊館」なる施設に寄ってみることにした。
松岡駅で下車。
こちらで最近話題になっているのが「ドラクエ風の案内板」。
松岡はいろいろ気になるスポットがあるもので、
次回に改めて出直すことにして、
「えい坊館」を目指す。
駅からは5分とかからない。
「えい坊館」は永平寺町魅力発信交流施設、というらしいが、
入った印象は「カフェ」そのもの。
感じのよいスタッフの方にスタンプを押してもらい
そのまま応募。
当たりますように!!!
スタッフの方に「ここには何があるのか」と尋ねてみたら、
「当館の目玉はこちらです」とカーテンの先に案内された。
そこは四方下方が映像で覆われた
摩訶不思議な空間。
「鳥道 - 黙坐」というデジタル・アート作品であるそうだ。
たまにはこんな空間に身を委ねるのもいいもんだな、と思う。
再び電車に揺られて福井に帰った。
相棒は「予想以上に面白かった」などと言う。
だが「ゆかりの唐揚げ定食を食べたかった」とも言う。
「ついでに足もパンパンなんだけど」とも言う。
まあ、間違いなく運動不足なんだろう(笑)
ハピリン前の広場では、
日本酒に関するイベントが開催されていた。
当然心惹かれるものがあったが、
こんな明るい時間から日本酒を口にしてしまえば、
この後風呂入ったり晩飯を食すといった気力を失うのは分かりきったことだった。
さらに、この後は買い物も行かなければならない。
愛用のドラッグストア、ゲンキーはこの日まで10倍ポイントだった。
ポイントの累算から、1000円ほど買い物をすれば、
500円分の買い物券が発行されるのは間違いない。
ここで誘惑に負けて飲む訳にはいかない。
ああ、けど飲みたい。
僕だって四六時中酒を飲みたいなどと考えているわけではなく、
うまそうに酒を飲んでる人を見るとつい飲みたくなる、
それだけの話なのだ。
そんな意味でも週末の福井駅前というのは、
僕にとって鬼門と化しつつある(笑)
と、そんな話をしたら、
下戸の相棒は呆れた表情を浮かべ、
「そういうのをアル中というのではないのか」と言った。
僕は何も反論できず、
おとなしく家に帰ることにした。