北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

男2人、ようやく奈良の大仏を見に行く

三重県の津駅前のホテルで目覚めた朝は、

前日までの快晴とは一転し、

重く淀んだ灰色の雲が一面に立ち込めていた。

 

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不思議なほど、僕は三重県と天気の相性があまりよくないというか、

2年前に相方と伊勢神宮にお参りに行った時は

台風が直撃したし、

宿の女将さんに「みんなキャンセルになりました」

なんて笑われたこともある。

 

それ以前に訪ねた時も、

何故か雨の印象がある。

本当なら津の町ももう少し歩いてみたいし、

亀山でうどんを食べてから奈良へ行く、

なんていうのにも惹かれていたが、

こんな時は早々に脱出するに限る。

 

 

 

朝飯を食べていると、

「昨日、ずっと身体ひねって景色みてたから腰が痛い」と相棒が言う。

ずっと寝てたかスマホをいじっていたではないか、

と言いかけてやめておく。

 

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津駅を8時26分に出発する亀山行きの普通列車

8時16分に入線してきた。

相棒が「またロングシートなんやな」と悲しげな顔をする。

「次の列車もロングシートのはずだ」と言えば、

今度は憂鬱そうな顔になった。

 

近鉄のホームは多くの通勤、通学客で賑わっていたが、

JR側は何とも閑散としている。

8時21分、名古屋行きの快速みえ4号がそこそこの乗車率で到着。

「あの列車、特急みたいで快適だったな」相棒が言う。

 

8時23分、快速みえ4号が名古屋方面に向けて

豪快なエンジン音とともに出発して行き、

後を追うように我らが亀山行きも出発した。

 

出発してしばらくは伊勢鉄道の線路と単線並列となっており、

運転席後ろに立って眺めていると、

非電化複線にも見えるし、

架線がないぶん空が広い。

 

伊勢鉄道の線路が右手に分かれてゆき、

紀勢線の線路が左にそれていくと一身田という駅に着いた。

行き違いのため、しばらく停車。

 

山越えの区間もハイパワーの気動車

何ら苦にする様子もみせることなく、

ぐいぐいと駆け上がり、

亀山の町へ向けて下っていった。

 

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8時51分、名古屋方面からやってきた関西本線の普通電車と並走するように

列車は亀山駅に到着した。

前日から紀勢本線のほとんどの区間を辿ってきたことになるのだが、

ここまで来ると和歌山市〜和歌山の区間に今回乗車していないことが、

何とも悔しかったりもする。

 

特急ワイドビュー南紀も快速みえも、

四日市〜津の区間をかつての国鉄伊勢線、

現在の伊勢鉄道を経由するもので、

名古屋〜奈良を結んでいた急行「かすが」が廃止された現在、

亀山駅に立ち寄る優等列車は存在しない。

 

ちなみに僕が生まれたのは伊勢線の開通後だから、

この亀山駅が交通の要所として賑わっていたことも知らない。

しかしながら幅広いホームや、

歴史を感じる上屋を眺めていると、

かつては確実に賑わっていたのだろうな、

そんな気分には、なる。

 

関西本線の加茂行きが発着するホームは予想外に多くの方で賑わっていた。

8時57分、加茂駅からやってきたキハ120系の2両編成が、

そこそこの乗客を乗せて到着。

分かってはいたが、この車両もまたロングシート車である。

宣言はしていたが、相棒はかなりげんなりした表情になっていた。

 

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もともと奈良に行こうと言い出したのは相棒の方で、

単に福井と奈良の往復であるなら、

青春18きっぷの安旅であれど、

転換クロスシートの快適な車両で往復できた、とも言える。

誘った相手が僕だったからこんなことになってしまった。

何だか気の毒であるが気にしない(笑)

 

前日の紀伊田辺から転換クロスシートの快適な車両だったのは、

多気〜津のわずか23分間のみ。

9時8分、列車は亀山駅を出発した。

立ち客もいる盛況ぶりである。

 

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関西本線の亀山〜加茂の区間は、

キハ120系のような軽量型の気動車がほぼ1時間毎に走っているだけの

閑散路線ではあるが、

かつては本当の意味で幹線だったンだなあ、と思えるのが、

その駅もホームや交換設備の有効長が驚くほど長いことだ。

 

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ある意味、数年後の北陸本線の姿かもしれぬ、

そう思ったらちょっと切なくなった。

 

草津線との接続駅である柘植駅でごっそり下車。

 

伊賀上野、島ヶ原と過ぎていよいよ三重県を後にする。

 

最初にあるのが月ヶ瀬口という駅で、

月ヶ瀬=梅林=奈良のイメージがあったのだが、

地図で確認してみれば

この駅は京都府にあるんですな(笑)

さらにこの列車の終点の加茂も、

この時までずっと奈良県だと思ってました(汗)

 

2両編成の気動車は木津川沿いの狭路を淡々と下っていく。

河原では多くの方々がキャンプを楽しんでいる様子が見える。

 

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長きに渡った山越えを終え、

列車は加茂駅に到着した。

ホームの反対側に停車していたのは221系大和路快速

言うまでもなく転換クロスシートの快適な車両である。

 

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「やっと普通の列車に乗れた」

相棒はホッとした顔を浮かべた。

大和路快速は一路奈良へ。

 

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ようやく、というか、

さんざん回り道をしてきたが、

僕と相方の今回の旅の目的地は奈良の大仏さまである(笑)

 

 

 

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JRの奈良駅に降り立つのは

まだ高架化工事もしていなかったと記憶しているから、

下手すりゃ15年、いや20年ぶりくらいかもしれない。

 

高架化したとはいえ、

かつての立派な駅舎を残してくれているのが何とも嬉しい。

 

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奈良の町も僕の中では不思議と雨のイメージがある。

実際、小学校の修学旅行も雨だったし、

その後何度か電車に乗りに来た時も、

いつも雨が降っていた。

 

ま、以前は街歩きという趣味はなく、

電車に乗ってれば幸せだったもので、

天気など関係無かったのも事実だが。

この日は快晴、かつ、暑い。。。。

 

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そして、

奈良公園東大寺って、駅のすぐ近所にあると勝手に思い込んでいたが、

予想外に遠い(笑)

男2人、鹿に絡まれつつ東大寺にたどり着いた時には

すっかり汗だくになっていた。

 

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奈良公園東大寺も多くの観光客で賑わっていたが、

聞こえてくるのは外国の言葉ばかりだ。

いったい、日本人の観光客って何処へ行ってしまったンだろう、

そんなことも思う。

 

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そんなもので、

大仏さまと対面しても、

さっぱり日本にいる気がしない(笑)

日本の有名な観光地なんて何処も似たような状況であるが、

アジアの別の国にいるような気さえしてくる。

 

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若草山春日大社とまわり、

バスに乗って奈良駅に戻った。

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「昼飯どおする?」相棒に問えば、

「大阪に行って串かつを食べる」などと言う。

「わざわざ大阪にまで行くつもりか」

と問えば、

「わざわざ和歌山まで行ったのは誰だ」

そんな顔をしている。

 

この時点で奈良は晴れていたが、

午前中に乗ってきた関西線の非電化区間は、

大雨で運転見合わせ、

そんなお知らせが流れていた。

 

のんきに三重県の観光などをしていれば、

この地に到達できなかったということが。

危ない、危ない。。。

 

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大阪で相棒が行きつけの串カツ屋に立ち寄り、

新快速の敦賀行きに乗った。

福井まではわずか1度の乗り継ぎ。

 

相棒は疲れきったのか、

新快速の中ではずーっと寝息をたてていた。

福井行きに乗り継いでもやっぱり寝てて、

武生に着いたら花火の音で目を覚ました。

 

「ここ、何処だ」

「武生」

「もう武生か」そう言ってあくびして、

「明日からまた現実が始まる」なんて言う。

 

電車は暗闇の中を福井に向けて走り続ける。

「あんがい普通列車の旅って面白いもんだった」

相棒は言った。

 

ずっと寝てたではないか、なんて言わない。

 

ふだん、車にしか乗らないような男が、

僕みたいな鉄ちゃんの旅に付き合ってくれるっていうのは

ありがたいことなんだよな、とも思う。

今回の一周だって、たぶん、一人だと辛かっただろうし。

 

そんな意味でも感謝、多謝であったりする。

 

「次は何処へ行くよ」と問えば

鳥取砂丘とか行ってみたい」なんて言う。

ま、遠いがそれもよかろう。

 

電車は福井駅に着いた。

 

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