久しぶりに富山駅前に降り立つ。
渋い飲食店が並んでいたシネマ食堂街があった場所には
再開発のビルが建ち、
横断歩道はスクランブル化されたりと、
CICができてから二十数年、ほとんど変化がなかった駅前は
ここ数年で急激に姿を変えつつある。
カメラを片手に駅前をウロウロしつつ、
駅を象徴する何かがないのだな、なんてことを思う。
必要なのかと言われれば「要らない」のかもしれぬけど、
何だか物足りなく感じたりもする。
逆に金沢や福井が強烈すぎるのかもしれない。
この日は天気もよかったので、呉羽山周辺を徘徊することにした。
大学前行きの市内電車に乗り込む。
富山駅に乗り入れるようになってから、市内電車に乗るのは初めてだ。
富山を離れて4年と数ヶ月、
僕の知ってる富山駅とはあまりにも違う(笑)
ただ、大きく変貌したのはあくまで駅周辺だけの話だった。
新富町、県庁前、丸の内と見覚えのある景色が続く。
市内電車は神通川を渡って大学前に到着した。
長らくこの電停には歩道橋が設置されていたのだけど、
いつしか撤去されてスッキリした姿に生まれ変わった。
富山大学のあるエリアは「五福」と呼ばれる地区で、
僕が十年以上住んだ場所でもある。
(僕は富大とは無関係ですが・笑)
3度ばかし引っ越ししたけど、
単身者向けの物件数や家賃を考えると、
結局このエリアを離れることができなかった。
五福8区の交差点を右折。
しばらく歩くと「ハロー」というショッピングセンターが現れる。
五福で最初に部屋を借りたのがこの近所で、
6畳1間、風呂、トイレ共同で家賃が1万8000円だったかな。
以前は近くに銭湯もあって、
ここで缶ビールと半額の惣菜買って帰るのがお決まりのコースだった。
五艘の交差点を左折して民俗民芸村へ。
そのまま呉羽山を目指す。
もう少し早ければ桜もきれいだったろうな、とも思うが、
今年の桜が早すぎたのだろうな、とも思う。
立山開山の祖といわれる「佐伯有頼」の像。
この伝説については以下が詳しい。
この展望台から遊歩道を進むと、
とある人物の像が現れる。
佐伯宗義氏。
富山地方鉄道の創業者であり、
立山黒部アルペンルートを作り上げた方でもある。
僕が山登りを始めたきっかけは
「乗り物」目的でアルペンルートに行ったからで、
その後に富山で暮らすことになったのだから、
この方がいなければ北陸で暮らすこともなかったのかもしれない。
旧8号線に出て呉羽山の西側にある「呉羽」地区へ。
今日の昼飯は最初から決めていた。
呉羽の住宅街にある食堂「丸忠」で「とりから揚げ定食」を食すことだ。
5年ぶりの「丸忠」さん。
朝から楽しみで仕方なかった。
茶屋町の交差点を右斜めに入り、住宅街の中を進む。
「マルトミ鉱泉」という銭湯の向かいに、
目指す「丸忠」さんはある。
この日は別に「飲んでも」いい日だった。
頭の中は既に「から揚げ」と「ビール」一色となっていた。
ところが、「本日休業」の文字。
よりによってこの日はスマホを忘れて出かけていた。
うーむ、どうするか、といった感じである。
頭の中で描いていたのは
「丸忠」さんでから揚げ食べて、
あいの風とやま鉄道で富山駅に戻る、そんなルートだったもので、
ひとまず呉羽駅を目指して歩く。
駅前には何かしら食堂くらいあるかもしれない。
しかしながら、呉羽駅前には食堂らしきものは何ひとつなかった。
駅で時刻表を眺めると、もう間もなく富山行きの電車がやってくる。
しばし考え、いったん富山駅に戻り、
再び市電で大学前まで行って、以前よく行っていた「カレー屋」を目指すことにした。
平日の昼下がりという時間であったが、
あいの風とやま鉄道の4両編成の普通電車にはそこそこお客さんが乗っていた。
JR西日本はドル箱路線を手放したとしか思えない(笑)
富山駅から再び市電に乗車。
いったい同じことばかり何をやっているのだろう、とは思う。
大学前で下車して再び五福8区の交差点を目指す。
右折してすぐのビルの1階に、
「カリカット」さんはある。
本来なら1時間前には昼食にありついていたはずで、
空腹度は極限に達していた。
これは「やさたま」にチキンカツにクリームコロッケ、もトッピングだな。
ところが「カリカット」さんも「本日休業」なのであった。
「・・・」
うーむ、どうするか。
大学前の「かれえてい」は何処かに移転した、そんな話は耳にしていた。
誰かに聞いてみるか、
そんな思いで8区の交差点で9区方面を見ると
「とんとん亭」の看板が見えた。
そうか、「とんとん亭」さんがあるではないか。
とんとん亭で「やきめし」だ!!
五福というところは学生街だし、
安い定食屋なんていくらでもありそうな気がするが、
実はあまりない、というのが十年住んだ印象。
ちょこちょこお店はできるけど、
わりと早いペースで閉店したりする。
今の学生さんは外食もしないのかもしれない。
そんな中、息長くやっている1軒が「とんとん亭」さんだった。
五福では数少ない中華料理店。
ちゃんと「のれん」もかかっており、ホッとする。
ラーメンとやきめし半分のセットを注文。
先に配されたのは「ラーメン」。
「やきめしはすぐお持ちします」と奥さん。
ラーメンのスープは、
「武生の中華そば」にすっかり慣れた自分にはかなり黒く感じる(笑)
いわゆる「富山ブラック」ほどじゃないけれど、
ガツンと醤油の味がくる。
同時に「あー、懐かしいなー」とも思う。
そして「やきめし」が配された。
焼豚と玉子、ネギが入ったシンプルな「やきめし」。
ちょいとご飯は柔らかめ。
決して「パラパラ」のチャーハンではない、「やきめし」。
味付けがまた、絶妙なのよな。。。
いやはや、満足、ごちそうさまでした。
市電に乗って富山駅へ戻る。
すると、このタイミングでセントラムが入線してきた。
慌てて帰る必要はなかったので、つい乗車してしまう。
大手モールで下車して総曲輪の再開発ビルを抜け、
フェリオの紀伊国屋で立ち読みしてから、
新しく出来た富山市の図書館に行ってみた。
その昔、大和百貨店があった場所。
ガラス美術館も併設された、それはそれは見事で美しい図書館に圧倒される。
うーむ、僕が知ってる富山の図書館じゃないな(笑)
同時に、
以前の図書館で食堂をやっていたご夫婦は今、どうされているンだろう、
そんなことを思った。
以前の市立図書館は丸の内の電停前にあり、
それはそれは古めかしい「昭和」の図書館で、
そこの7階には「食堂」という言葉がぴったりな「食堂」があった。
日替わり定食は確か500円だったかな。
たまに刺し身なんかもついていて、
これが厚切りで旨かったのよな。
ラーメンもカレーも、味噌汁も、白いご飯も、みんな旨かった。
学生の子たちも、おにぎりを持参してうどんとかラーメンとか食べていた。
昼はスーツ姿の方も多かった。相席はあたりまえ。
こんなきれいな建物には「食堂」は似合わないよな、
なんてことも思う。
2階にはオシャレな「カフェ」ができていた。
これもまた、時代の流れ、ということか。
何となくさびしい気分になった僕は
西町の電停から市電に乗って、富山駅へと戻った。