北陸徘徊人(元)

富山、福井、石川を中心にゆるーい旅を満喫中

新幹線を使わずに福井から高崎に行く 〜その2・岳南電車〜

念願の静岡鉄道乗車を果たし、

清水港でシラス定食で腹を満たした僕はJR清水駅にいた。

続いて乗車したのは12時04分発の熱海行き。

最初から座れる希望など抱いていなかったが、

案の定、ロングシートの車内はそこそこの混み具合だった。

 

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さらにこの区間東海道線駿河湾沿いの風光明媚なところを走るのだが、

窓に何かフィルムでも貼っているのか、

すべてが霞んで見えてしまう(涙)

12時31分、吉原に到着。

 

 

 

東海道線のホームを静岡寄りに戻ると、

線路の向こうに駅舎というよりは一昔前の山小屋みたいな建物が現れた。

岳南電車 吉原駅」と、恐らく看板ではなく、

ペンキで壁に直に書いているように見える。

 

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岳南電車については、

カバンに入れていた宮脇俊三さんの「時刻表おくのほそ道」では以下のように紹介されている。

岳南鉄道は吉原ー岳南江尾間の9.2キロ、ひとくちで言えば、製紙工場群と東海道本線とを結ぶ貨物主体の私鉄で、昭和28年の開通である。終点の岳南江尾駅は新幹線の高架橋のすぐ下にあり、新幹線の下り列車の左窓に頬を押し付ければチラと見ることができるが、それは私のような人間だけのことで、ほとんど誰も知らない地味な鉄道である。

宮脇俊三著「時刻表おくのほそ道」より

 

宮脇さんが行かれたのは本の内容から察するに昭和56年の12月だと思われるが、

岳南鉄道から分社化されて岳南鉄道になっているとか、

貨物の営業も辞めちゃったとか、

そんな違いはあれど、

当時宮脇さんが眺めた駅舎と大差ないのではなかろうか、

そんなことを感じるほど年季の入った駅舎であったりする。

 

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窓口で岳南江尾駅までのきっぷを買おうとしたら、

若い窓口氏は「フリーきっぷもありますが」と言った。

岳南電車の片道運賃は360円であるが、

フリーきっぷは700円だから往復するだけでモトはとれる。

だが、今回は往復する予定はなかったもので、

片道乗車券を買ったら何とも懐かしい硬券が発券された。

 

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電車が現れるまでしばらくホームで待つ。

岳南電車は全駅から富士山が望めるらしく、

ホームにもビュースポットが記してあったが、

この日に関してはまったく姿を見せてはくれなかった。

 

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しばらくホームで待っていると、

西の方から工場の中を遠慮がちに走ってくる、

何ともかわいい1両編成の電車が現れた。

 

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12時58分、電車は吉原駅を出発した。

この時点で車内には10人前後の乗客がいたが、

恐らく地元客は2人ないし3人かと思われた。

後は誰かと言えば同好の士である。

このあたりだと東京あたりからも来やすいのかもしれない。

 

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電車はジヤトコ前、吉原本町、本吉原と進んでいく。

どの駅でも乗る方も降りる方もいるなあ、そんな印象。

ただ、乗ってこられる方は明らかに同好の士と思われた。

わりと短い区間で下車していく。

 

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途中の駅で3人ほど下車されたが、

電車の後方で眺めていると、

3人そろって電車にカメラを向けた。

やはり同好の士のようである。

 

電車は工場地帯の中を淡々と進んでいく。

もともと貨物輸送が主だったのは行き違い施設が立派なのをみれば分かるし、

途中には電気機関車の姿も見えた。

 

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貨物輸送の撤退で経営は厳しいのだろうけど、

何とかお客さんに来てもらおうといろいろやっているのは何とも好ましい点で、

地の利を生かした夜景電車や名月電車、満月電車など、

いろいろ気になる企画もやっていたりする。

 

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今回は通り道のついでの乗車だったけど、

是非次回は岳南電車を目的にして、

ゆっくりぶらぶらまわってみたいものだと思う。

 

岳南江尾には13時18分に到着。

この時点でも車内には7,8人いたか。

 

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到着前に、運転士はこんな放送を流した。

「間もなく、終点の岳南江尾に到着します。この電車は折り返し13時26分発の吉原行きとなります。ご利用のお客様は、お時間までにお戻りください」

この駅まで来るのはすべて「同好の士」なのかもしれない(笑)

 

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先の「時刻表おくのほそ道」にもこんな記述がある。

岳南江尾は、この辺でやめときましょか、といったような中途半端な終着駅で、駅のほかには何もなかった。行くところも、することもないし、電車のほうも、終着駅だから一応挨拶に来たが、こんな駅に用はありませんのですぐ失礼します、とばかり、たったの一分停車で折り返す。14時42分着の43分発なのである。一分間とは運転士と車掌とが入れ替わるための時間で、これほど冷遇されている終着駅はほかにないだろう。

私は岳南江尾が気の毒になったが、早くも冬の日が傾いて、寒々とした駅と本当の寒さが重なりはじめている。私たちは車掌にせき立てながら、ふたたび電車に乗り込んだ。

 

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この日も、駅舎の外まで行ったのは僕以外には1人だけで、

彼は駅舎の撮影をすると再び駅構内へと戻っていった。

 

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ここからはJR東海道線東田子の浦駅を目指して歩くことにした。

グーグルマップに入力してみると、2.8キロ、35分とのこと。

電車に乗りっぱなしだとどうしても運動不足になりがちなので、

歩くにはちょうどいい距離のように思えた。

 

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ただ、僕は「住宅街なり工場が立ち並ぶ中を歩くのだろう」

そんな光景を予想していたのだけど、

実際に歩いてみると、そこにはただひらすら広大な田園風景が広がっていた。

 

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目指す方角に恐らく海岸と住宅街を隔てる林のようなものが見えるが、

これが歩けども歩けどもさっぱり近づかない。

振り返ったところで富士山も見えず、何だかテンションが下がってくる。

 

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 約30分弱で東田子の浦駅に到着。

ちょうどやってきた13時57分発の三島行きに乗る。

次の14時10分発に乗れば熱海まで行けるのだが、

沼津か三島で一服とトイレタイムが欲しかった。

 

そして、結論から言えばこの列車も、

三島で乗り継いだ熱海行きも混んでたもので、

浜松以東のJRはほぼ立ちっぱなしだったことになる。

 

18きっぷを愛用されている方の記事を読むと、

静岡県は「難所」であるそうだが、何となくその理由が分かったような気がする。

JR東日本エリアの熱海に到着したのは14時43分。

 

熱海までくれば一気に高崎まで行けてしまうというのが、

恐ろしくもあり、ありがたくもある点で、

ためらうことなくグリーン券を購入。

 

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ホリデー料金、かつ事前料金で790円なんていう料金もありがたい。

これで高崎までの3時間43分を快適に過ごせるのだ。

JR東日本エリアが唯一羨ましいと思える点であったりする(笑)

 

そんなこんなで14時50分に熱海を出発した上野東京ラインの電車が高崎駅に着いたのは18時33分。

仮に寄り道せずに来ても16時03分着なもので、

道中を楽しんだ割には苦せずこれたような気もする。

 

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さ、ここまで一滴の酒も飲まず、我慢してきた。

体調はいつになく万全といえた。

今宵は気合いれて飲もう(笑)