富山県公衆浴場組合のサイトを眺めてみると、
魚津市には6軒の(組合に所属する)銭湯があることが分かり、
場所と建物が一致するのだけど、
1軒だけ、「はて、ここは何処だ」と考える銭湯があった。
それが観音湯なる銭湯で、
宇奈月温泉方面に1駅進んだ経田という駅の近くであることが分かった。
自分の記憶が確かなら、経田という駅は、
ホームが一面あるだけの小さな駅であり、
電車から眺める限り経田という町も決して大きくはない、
そんな印象があったもので、
こういった場所に残る銭湯とははたしてどんなものなのか、
かねてから気になる存在であったりした。
この日は金曜日だったので、
あいの風とやま鉄道・富山駅の窓口で
「フライデーPM往復割引きっぷ」を購入。
(往復1140円が700円になる)
窓口の女性は新人さんなのか、
手元に手帳を置いていろいろ勉強している様子が伺え、
何とも微笑ましい。
電車に揺られ20分ちょいで魚津に到着。
駅前に降り立ったビジネスマンとおぼしき方々が、
「すっげーいい景色」といいながらスマホを山側に向けている。
言われてみれば、でもないが、
魚津の駅前通りには電線もないし、
案外山が見やすいんだなあ、とも思う。
地下道を抜けて駅の海側へ。
北西方面に進むと
巨大な建物が見えてくる。
「ありそドーム」というスポーツ施設で、
これまでは遠目にしか見たことがなかったけれど、
近くで見れば何つうでかい建物か、と思う。
中央にある一際高い建物は「展望塔」で、
無料で入れるそうな。
天気がいい日にでもぜひ上ってみたい。
今回お邪魔したのは「ありそドーム」のすぐ近くにあるこちらのお店。
このあたり、町からも外れ、
決して車の往来が多いわけでもないのに、
店内は大賑わいだった。
ちゃきちゃきっとした印象の店員さんに
ラーメンとおにぎりを注文。
この時、テレビで「中曽根康弘元首相死去」のテロップが流れた。
中曽根さんと言えば、やはり国鉄分割民営化の印象が強いと同時に、
昭和49年生まれの僕にとって、
記憶に残っている最初の「首相」であったりする。
合掌。
ほどなくラーメンとおにぎりが配された。
最近になってようやく
「富山のうどん・そば店にあるラーメンは例外なく美味い」ということに気づいたけど、
こちらのお店のラーメンもやはり例外ではなかった。
そして、向かいで食べてたおじさんのカツ丼がまた美味そうだった、というか、
食べっぷりがまた見事というか、至福な表情を浮かべていて
久しぶりに「美味そうに」飯を食べる男性というのを見たような気がしなくもない。
ごちそうさまでした。またお邪魔します。
海沿いの道をぶらぶら歩いて経田を目指す。
寒いだろうと思ってニット帽にダウンを着込んできたが、
この日は思いの外あたたかく、絶好の徘徊日和といったところか。
しばし歩いて経田に到着。
経田はそこいら中から水が溢れ出ている
静かな港町だった。
そしてお目当ての観音湯に到着。
公衆浴場組合のサイトには浴室内の写真が掲載されているだけなのだが、
何つう激渋な建物であろうか、と思う。
同時に、営業している気配を感じない。
この時点で13時50分。
サイトには営業は14時からとなっている。
ちょっと様子を見てみるかと思い、
建物の裏手にまわってみると、
煙突から煙が上がっているのは確認できた。
とりあえず営業はしているようだ、と一安心。
14時をまわって再び建物の前にやってきたら、
やはり営業している気配を感じない。
営業時間を書いたプレートが掲げているが、
何故か営業開始時間の部分は空白。
ここでグーグルくんで確認したら、
営業は15時から、なんてことを書いてある。
うーむ、どっちが正しいのだ。
ここで1時間待ちは辛いなあ、
と思っていたら、玄関の上の電気が点いていることに気づいた。
番台では女将さんがテレビを眺めていた。
「やってますか」と尋ねると、
「はいはいはいはい、ちょっと待ってぇー」と
番台から出てきて浴室の中へ。
保温のためのシートを外し、さらに僕を見て、
「ちょっとスイッチいれてくるさかい」と奥へ行き、
再び姿を見せる。
入浴料を支払い脱衣場へ。
巨大なソファが鎮座する脱衣場は、
銭湯にいるというよりは、親戚の家の居間にいる、
そんな気がしてくる。
建物も激渋であったが、中もやはり激渋で、
「こりゃ大ヒットでなかろうか」と
ついついニヤけてしまう。
浴室内は洗い場が左右の壁ぞいに並んでおり、
突き当り正面に浴槽が2つ、泡風呂と薬湯が並んでいる。
身体をさっと洗って泡風呂に身を沈めればこれがなかなかいい湯加減。
浴室内は天井が思いの外高く、
天窓からもこうこうと光が差し込んできて明るい。
いやはや、富山にもこんな激渋な銭湯が残っていたのか、
と最後までニヤニヤ止まらず
すっかり観音湯を満喫させてもらった。
年末に地鉄のフリーきっぷが発売されたら是非再訪したい。
観音湯から5分ほど歩けば経田駅。
片側一面のホームだけがあると思っていたら、
いかにも地鉄らしい立派な駅舎も存在していた。
中では学校帰りの高校生たちがゲームに興じている。
14時52分発の電鉄富山行きに4分ほど乗って新魚津で下車。
ここで20分以上の待ち時間があって、
魚津を15時23分に出発するあいの風とやま鉄道の電車に乗って、
富山着は15時47分。
ちなみに先程経田で乗った電車が電鉄富山に着くのは15時53分。
このマイペースさが地鉄の魅力といえば魅力であるが、
もう少し競合意識を持ってくれれば、
お互いのサービス向上につながるはずなのになあ、とは思う。
すっかり喉がかわいていたので、
駅ナカで以前やっていたビールが飲めるイベントでもやっていないかと期待したが、
さすがに冬が近いとあってか何もやっておらず、
おとなしくバスに揺られて家に帰った。