富山から愛知にきてはや3カ月。
ちょくちょく富山のニュースを意識してみているのだけど、
一番衝撃的だったのが婦中の宿泊施設、「いこいの村磯波風」が閉館したことか。
車でしか行けなかったのでこのブログで取り上げることはなかったけど、
日帰りの入浴料が500円と格安で、
ランチも500円からとやはり格安で、
春先には浴室の窓ガラスの先に見事な桜が咲いていて、
湯に入りつつ桜を愛でる、なんていうオツなこともできたものだった。
他にも高岡の健康ランド、アラピアさんも8月末に閉館したそうな。
ちょくちょくスタッフさんのツイッターを拝見していたもので、
近々お邪魔しようと思っていた矢先に愛知に行くことになり、
何だか心残りな部分があったりする。
大真面目に「いつか行こう」じゃなしに、
「行けるなら今」行かないと、いつまでも後悔することになっちゃうんだろうな、
なんてことをしみじみ思う。
愛知県の緊急事態宣言も無事解除されたので、
ひさびさに徘徊にでも出かけることにした。
犬山線の犬山や岩倉から鶴舞線、さらに名鉄豊田線を経由して豊田市まで行く電車もある。
若かりし頃、豊田市に滞在していた頃もあり、
「上小田井」なんていう行き先に惹かれて電車に乗り、
こちらで下車して城北線〜勝川〜高蔵寺〜愛環と経由して帰った「はず」なので、
駅前に出れば何か思い出すかと考えたが、
何ひとつ記憶に結びつくものはなかった。
城北線の高架橋をくぐり、
目指す中華料理屋は、、、、
よかった、のれんが掛かっていた。
「日替定食」と書かれたホワイトボードに
「チャーシュー麺、サワラ塩焼、マカロニサラダ、ライス、漬物、650円」とあったので、親父さんに注文。
しばし待って配された「日替定食」はなかなかの豪華版、
かつ、「めちゃくちゃ美味い」。
壁のメニューを眺めると中華そば450円、焼肉定食650円、高菜炒飯セット650円など
いずれも安く、いろいろ試してみたくなる。
先客はちょっとやんちゃな雰囲気もある作業着姿の若い男2人であったが、
会計をすますと2人して「ごちそうさまでした」と丁寧な口調で言い、
満足げな表情を浮かべて出ていった。
僕自身もすっかり満足である。
ごちそうさまでした。またお邪魔します。
店を出て休憩がてら公園のブランコに揺られつつ、
スマホでこの先の道順を確認していたら、
「おやっ」となる名称を見つけた。
近くなので行ってみた。
僕は20代の頃、山小屋にいながらもずっと
「ボクシングマガジン」を定期購読していて、
実際に試合は見たことがないのに、
妙に心ひかれるボクサーが2人いた。
1人が岐阜県古川町(当時)出身で畑中ジム所属の杉田竜平選手、
もう1人が三重県出身の石井広三選手。
両選手とも残念ながら世界のベルトを巻くことはなかったのだが
後に動画で両選手の闘いぶりを見ることができるようになって、
「純粋に面白いと思えるボクシングをする選手だなあ」と、
改めて感じた次第。
で、その石井広三選手が所属していたのが目の前にある
「天熊丸木ジム」となる。
石井選手は引退後、地元でボクシングジムを開設したのだが、
2012年、事故のため若くして死去してしまった。
一方で石井選手が開設したジムでボクシングを始めたのが
後にWBO世界フライ級王者となる中谷潤人選手だ。
ボクシング自体はあくまで個人対個人のスポーツなのだろうけど、
その人間模様などを眺めると
映画や小説以上にドラマチックな世界が繰り広げられているよなあ、
としみじみ思う。
天熊丸木ジムの先で、再び「おっ」となった。
富山に本社がある「日の出屋製菓」さんの名古屋営業所のようだ。
何だか「やきとりの名門秋吉」を北陸以外の地で見かけた時と似たような
喜びというか、嬉しさがあった。
ここまでウロウロしていたのが名古屋市西区で、
新川を渡って北名古屋市へ。
こちらに以前から訪ねてみたかった施設がある。
目的地に到着。
この日は10月なのに暑かったのですっかり汗だくに。
ずいぶん派手な建物であるがれっきとした公共施設で
「昭和日常博物館」という。
詳細は下記リンクより。
エレベーターで3階に上がり、
下りた瞬間に「おお」と思わず声が出た。
そこにはまさに「昭和」が広がっていた。
平日ということで館内は空いていたが、
その分、じっくりと見学することができた。
僕と同世代であろう女性2人組も「懐かしい」を連発している。
愛知に来てからずっと訪ねてみたかった施設であり、
満足度は高かった。
(ちなみに入館料は無料)
さ、久々によく歩いたし風呂入って帰るべ。
名鉄の線路を超えて駅の反対側へ。
北名古屋市は2006年に師勝町と西春町が合併して誕生したが、
いままで歩いていたエリアがかつての師勝町で、
この先がかつての西春町のようだ。
またボクシングの話になるが、
中京圏のジム所属で初の世界チャンピオンになったのが
畑中清詞さんで、
こちらの旧西春町出身とのこと。
彼が現役引退後、開設したジムの教え子が、
先に挙げた杉田竜平さんで、
このあたりは平山譲さんの著作「魂の箱」に詳しく記されている。
「魂の箱」の舞台となった上飯田周辺もぜひ訪ねてみたい。
目的の銭湯、「末広温泉」さんに到着。
考えてみれば愛知に来てから
純粋な意味での銭湯は初訪問であったりする。
浴室内は中央に浴槽があるいわゆる「関西式」。
で、3方の壁に向かって洗い場があるのだけど、
何故か先客の4人は身を寄せ合うようにして一方に固まっている。
他の湯の出が悪いのだろうかとか、
その面だけ特殊なシャワーでもついているのだろうか、
とかいろいろ考えたがいずれもあてはまりそうにない。
さっと身体を洗って湯につかりつつ、耳をすましていると、
どうやらこの4人は、それなりの年であるが、
友人同士でなかろうか、そんなふうに察した。
爺さんたちが頭を泡だらけにしつつ、
お互いの顔を見てケラケラ笑い、
何だか少年のような表情を浮かべている。
実際の関係は分からぬが、
年を重ねても一緒に銭湯に通える友人がいるって何とも素敵な話だよなあ、
なんてことを思いつつ、
しっかり温まってから浴室を出た。
末広温泉さんを出ると、
暑さも和らぎ、心地よい夕暮れ時の風が吹いていた。
僕はいい気分のまま西春駅から赤い電車に乗り込んで帰路についた。